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マーダーミステリーの作り方  作者: もくはずし
目次
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目次 具体的な項目について

 次話より、具体的な制作方法についてかたっていく。

 1,2話を読んでいる方はすでにお気づきであろうが、まず先に、ここで製作するマーダーミステリーについての前提を説明しておこう。




〇 ゲームとして成立するものをつくる。

 何を当たり前な、と思うかもしれない。マーダーミステリーはゲームである、という認識は誰もが持っているはずだが、こと製作者にはこの認識が飛んでいる方が何人もいる。

 きちんとしたゲームとは、勝利できないプレイヤーを故意に作ったり、考えるべきことの中にフィクショナルな要素を説明もなく入れたりしないものを言う。

 

 ゲームバランスがどうなっているかは常に監視しつづけよう。

 5人のキャラクターの中で、目的の達成が不可能な人間はいないだろうか?

 キャラクターAが欲するアイテムを、拾ったキャラクターが譲る動機付けは?

 出てくる情報を精査すると犯人が分かってしまうような、推理とも呼べないおままごとで犯人の言い逃れが封殺されてはいないか?

  

 ゲーム内で出す概念について、きちんと説明できるくらいの理解度になるまで下調べをしよう。

 あなたは身体における銃創を見たことがあるだろうか? 似たような外傷を偽装することは出来うるだろうか? 

 血液におけるルミノール反応が、付着部分を洗い流しても出てしまう理由は? そしてそれは血液以外に反応することはあるのだろうか?


 ミステリーでおなじみだからと言って小説で言っていたことが現実のそれと同じである保証はない。自身の知は常に疑うべきである。インターネットには多数の医療論文が転がっており、図書館や本屋には様々な世界を説明してくれる書籍が並んでいる。制作物には参考文献を載せるつもりで下調べをするのだ。

 私の作品でも下調べをしていないが故に起こったミスがある。その要素に詳しい人がいた場合、議論に歪みが生じる内容である。勉強は何事にも大事である。  


 こうした常識が抜けないように自戒し続けない限り、シナリオ批判という文化がないマーダーミステリー界隈の中で駄サイクルにとらわれ、ゲームにもなっていないようなシナリオを作り続けてふんぞり返るだけの瘋癲になり果てる。




〇 ゲーム中に進行する物語は最小限に。

 1話を読んだ諸君はすでにご存じのことであるが、マーダーミステリーというフォーマットは物語を駆動させる力に欠ける。

 壮大な物語をプレイヤーキャラクターに歩ませることも不可能ではないが、こんな文章を読んでいる人間はマーダーミステリーの作り方について確固たる方法論を持たない人間なのだから、短くまとまったものを作るべきである。

 議論中に物語が進まない、ということであるから、それ以外で進行しているような、背景設定の情報はいくらあっても問題はない。




〇 既定路線のエンディングありきでシナリオを作らない。

 製作者は議論をコントロールできない。GMをやったことのある人間ならわかると思うが、議論が簡易で一本道に見えるシナリオでも、プレイヤーはどんな挙動をするかわかったものではない。

 まず簡易な議論導線のゲームは製作者の意図が透けすぎて萎える要因となるし、そこまでしても既定路線で進行する確率がたいして高くならないのなら、「このエンディングが見せたい」という動機付けでシナリオを制作すべきではないだろう。

 演出したいエンディングから逆算してシナリオを作るのはいいが、あくまでエンディングの中の一つで、そこに誘導するようなシナリオ作りをすべきではない。




〇 もくはずし作のシナリオのネタバレをする。

 シナリオ制作における具体例として、拙作を使用する。すべて下記サイトで無料ダウンロードできるものだ。適宜参照すべし。


https://mokuhazushi.booth.pm/


 遊んでなくても構わない。中身を見てしまうと遊べなくなってしまうが、まだ遊んでいないのなら、金輪際遊ぶことはないだろう。日々魅力的なパッケージが頒布され続けている現状、わざわざ場末の無名シナリオで時間をつぶす必要はない。




以上を踏まえ、今後の制作工程は以下の通りだ。


① あらすじとプレイヤーキャラクターを考える。


② ルールを考える。


③ 議論させるべきことを考える。


④ プレイヤーの設定書ハンドアウトを書く。


⑤ ハンドアウト外の情報提供要素を作る。


⑥ エンディングを書く。


⑦ GMもしくは進行役用資料を作る。


⑧ テストプレイを行う。


 以上が今後かたる項目となる。

 これらは1話完結の場合もあるだろうし、2話3話と続く場合もある。途中で飽きて書くのを辞める可能性もある。

 私はもうマーダーミステリーを遊んでいる人間ですらないのだから、仕方がない。ぶっちゃけ、すでにマーダーミステリーをどっぷり遊んでいる人間に読んでほしいとも、思ってはいない。自身への動機付けが内発的で不安定なところに依存している。いつ発動機が止まってもおかしくはない。


 章立ての順番はおおよそ、私の製作順と同じである。この順番でなければ作れないということもないが、効率がいいはずだ。


 世界観が固まっていなければ物語をつくることはできない。あらすじ、キャラクターはマーダーミステリーにおける根幹である。

 キャラクターについては概要を決める。ここでは清書せず、箇条書きでそのキャラクター性とゲーム内での立ち位置、持つべき情報を思いつく限り箇条書きでメモしていく。


 これらの属性や立ち位置が決まれば、次はルールだ。ルールはそのゲームがどんなゲームかを規定する。これは議論させるべき事柄に縛られるべきではなく、その世界観をどう表現したいかに順ずるべきだ。だから、議論させたいことを先に考えるのではなく、ルールから先に考える。


 その後はゲームの進行順に書いていく。もちろん、あとで前段階のものを修正することもある。この順番は修正が難しいものからになっているが、直せないということはない。

 修正は悩むべきものだ。あなたが思いつきで行いそうになっている修正が、本当に改善だけにとどまるかは常に考えるべきである。なぜなら、最初に書いたものはそれが良いという無意識の発露であり、意図せず様々な効果を生んでいることがあるからだ。理性を駆使してそれを否定するのであれば、その修正によって必ず惹起されるデメリットについて真剣に探し、吟味しなければならない。


 とくにキャラクター性についての変更は慎重になる必要がある。マーダーミステリーにおけるキャラクター性とは、その項で後述するが、このゲームにおいて最も重要な要素である。

 プレイヤーが時間を費やす最たる要素であるからして、最初に考えた「こういうキャラクターにしたい」は変えるべきではない。

 例えば議論させるべきことを考えているときに「このゲームには議論をひっかきまわす役が欲しくなったから、正義感ある朗らかなこのキャラクターを、犯人を庇う陰険なキャラクターに変えよう」という誘惑については基本はねのけるべきだ。

 局地的なゲーム内容について考えているときは、得てして大局観を失っているもので、そんな状態でキャラクターという大枠に触れることは懸命ではない。誘惑が頭をよぎったら筆をおき、1日以上の間隔を置いてから代替案を探す。

 

 趣味の創作だ。そんな余裕で臨むのが好ましい。


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