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マーダーミステリーの作り方  作者: もくはずし
議論導線
14/16

議論導線② 『夜行列車に銃は踊る』議論導線

このページには『夜行列車に銃は踊る』のネタバレを含みます。

https://mokuhazushi.booth.pm/items/2819396


 議論は物語性を持たせるのが難しいものの、議論によって進む物語だってある。人間関係が変わる、というのが最もわかりやすい。友好的だと思っていた人間が実は悪事を働いており険悪になるとか、その行動の裏に本当は誰かへの思いやりがあったとか。よく聞くしんどいものであれば、議論時間内で告白しろ、なんてのもある。

 容疑者は誰か、というのが移り変わっていく議論も、推理小説的な物語の進行だ。最初はAが怪しいと思っていたが議論が進むごとにBが怪しくなり、3転してCが一番あやしくなり、最後には全員怪しく見えてくる。議論は進んだはずなのに……。


 『夜行列車に銃は踊る』の制作で一番気を付けたことは、議論に物語性を付与することだ。長い議論時間で、ループしたり行き先がわからなくなったりする議論になってはおもしろくない。議論における道は長いほうがいいし、そのためには導線をなるべく長く引いてあげる必要がある。

 導線を長くする、というのは情報を多くすればいいというものではない。情報というのは、推理と推理の合間をつなぐ架け橋だ。架け橋の合間が長くなればなるほど、導線は長くなっていく。

 目標は推理をしていくごとに容疑者が増えていくこと。そして、そこに怪盗がどう混ざっていくかだ。


 夜行列車の議論導線を作ってみた下記URLで画像が出る。


図1

https://ibb.co/hDQd8f4


 内容を把握していればこれでわかるだろう。このゲームは、各PCが出しずらいと思っている情報を引き出させることで、候補が増えていく。メインストリームは一番左にある、死体のある部屋が密室である謎を解くことから始まる導線だ。出てくる情報から密室であったことがわかるとマスターキーを持っている神宮寺以外に犯行が難しそうに思える。

 そこで、矢面に立たされた神宮寺が部屋にあったはずの怪盗のカードが無くなっていることを証言すると、密室は部屋に誰かが潜んでいた、という結論に至れる。神宮寺は自身に向けられた疑いを、自身の推理ではねのけなければならない。カードは天利が持っていた。

 天利は事件当時に事件現場におり、あまつさえ被害者に銃を向けたことがある。本来なら隠しておきたい情報だが、ここまで暴かれては仕方がない。すべてを暴露して、他に犯人がいたことを信じてもらうしかない。

 そして現れたもう一人の犯人候補、弥益と争うことになる。


 マーダーミステリーは、限られた情報をもとに、生身の人間が会話することで進行するゲームだ。もちろん、上記のように、作者が考えた通りになるとは限らない。密室であることを誰も気づかないままゲームが終わることも多々あるし、開幕直後にすべてをさらけ出す、勇気ある天利もいる。

 ここで重要なのは、議論の上で銃口を突き付けられた人間が、議論を動かす主体となるべきであるという思想だ。マーダーミステリーにおける議論はたいていの場合犯人捜しだ。当然、犯人を押し付けた、と思っている側の人間に、議論の方向を変えようという動機は発生し得ない。それをするのは、ゲームとしてワンサイドになってしまうとおもしろくないし、疑われている人がかわいそうだから、というPLの良心でしかない。

 だからこそ、シナリオを作るうえで必要な考え方として、犯人として疑われる人間には、なにかしら反撃する武器を持たせるべき、というものがある。これは、その人がどうやって疑われる可能性があるのか、という導線を把握できていなければ、適切な武器を渡すことはできない。だからこそ、これをあらかじめ作っておくべきだ。図示しなくとも、脳内で良い。

 

 図1はメイン事件の議論導線だ。実際にHOや情報カードを作ってるうちに細かい分岐がいろいろ生まれていくのだが、事前に考えていたものはこんなものだった気がする。ここにビンテージガンの在処や怪盗の有無などの議論も絡んでくるので、例えば一番左の議論導線が一番下までたどり着くのは30分~1時間ほどかかるだろう、との予想だ。一番下までいったら、あとはどれだけPCが信用を勝ち取れるかのゲームである。さらに、怪盗は自身の立ち位置に気が付けば、犯人になりたがる役割を担う。状況は図のようなきれいな展開にはなり得ない。


 作家としては、きれいな展開になり得ないほどに議論導線を細かく複雑に作りこむべきだ。ゲーム後にプレイヤーに提示する”推理導線”用に、メインストリームの議論導線は単純であるのが好ましい。けれども、議論導線が単純ということは、つまり早々に話すべきことがなくなってしまうことを指す。作家として一番怖いのは、ゲーム中沈黙の時間が流れてしまうことだ。議題に対する結論が出てしまうゲームは、欠陥である。


 そして1枚作ってわかったのだが、めんどうくさい。前話で全作品分作る宣言しているし、これまで散々偉そうなことを書いておいて申し訳ないが、セイレム以降は作らない。

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