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マーダーミステリーの作り方  作者: もくはずし
議論導線
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議論導線① 議論導線と推理導線

 議論導線とは、なじみがない言葉かもしれない。推理導線を作るんじゃないの? と思っている方もいるかもしれない。

 議論導線は推理導線とは似て非なるものだ。議論導線は作者がプレイヤー向けに設定するもの、推理導線はGM向けに解説するものだ。


 議論導線というのは、プレイヤーが展開する議論をコントロールする為の情報を指す。なぜこれが制作時に必要かと言えば、ひとえに情報整理につながるからだ。

 マーダーミステリーにおいて必要な情報整理は二つある。情報そのものと、それがどこから出てきてどこに流れていくか、だ。議論導線はその両方を示すものである。

 

 一方、推理導線というのは、ある事件についてプレイヤー視点でどのようにその真相を紐解くことができるのか、ということを示す。全章でもさらっと述べたが、マーダーミステリーにおいてこの推理導線は必要ない。

 多くのマーダーミステリーの作り方を示すサイトでは、推理導線が必要だとか、どうやって作るのかを解説している。しかし、これはまったくもって頓珍漢な努力だ。推理導線などはゲーム終了後、GMがプレイヤーを丸め込むためだけのものである。もしも犯人が確定してしまうような推理がゲーム上存在するのであれば、それは作家の敗北だ。

 なぜかと言えば、マーダーミステリーは基本的に犯人がプレイヤー内にいるゲームだからだ。読み手が犯人を探す役割を担う推理小説と違って、犯行を隠したい犯人がいるからだ。犯人役のプレイヤーからすれば、特定の情報から犯人が確定してしまうような状況のゲームなんてやりたくはない。

 犯人役がうまく嘘をつけばいいと思うかもしれないが、推理導線とはプレイヤーに「このゲームはうまく立ち回れればあなたたちは犯人を見つけることができたのです」と説得するために存在するものだ。当然、犯人役がどんな嘘をついて、それに対してどんな対応ができるかも考えられている。この内容が、犯人を完全に特定できて且つ演繹的な跳躍なしに到達できるような推理では、当然犯人役などだれもやりたくないと思ってしまう。

 

 そんな簡単なシナリオなんてあるわけないだろう、と思うかもしれないがたくさんある。おすすめのミュートワードは「初心者向けシナリオ」だ。情報がオープンになりやすく、それをまとめれば犯人が容易にわかるような、犯人役にとってのクソゲーがそこかしこに転がっている。

 かといって、推理導線が必要ないかと言えば、必要だ。GMはゲーム終了後、議論フェイズが徒労ではなく、プレイヤーの実力によって正解に導き得た時間であったと示さなければならない。当然、それぞれのキャラクターは議論の目的が違うから、それぞれのキャラクターにおける推理導線がある。

 推理導線を作るのはいかにも難しそうだ。その通りで、かなり厄介な問題となり、制作中の手をなんども止めてくる。面白い議論導線を作れても、それが全てのプレイヤーに対して最終的な模範解答を突きつけることができなければオシャカになってしまうのだ。

 推理小説のような巧妙なトリックを考えなくても良い分、説明のための推理導線を導くのが煩わしい。

 

 この章は議論導線について述べるとともに、最後に推理導線をどう作るかにも触れる。推理導線はプレイヤーを丸め込むものであるから、ゲームの根幹となる議論導線を作ったあとに、無理矢理つくるものだ。なので、この順序で作るし、実際私が制作するときもその順序だ。


 導線と聞いて、ミステリー的な、何かトリックを用意してそれについて考えるのではないかと考える人もいるだろう。推理小説の推理導線というのはそういうものだ。推測困難な犯行状況から、必要最小限の情報だけ開示していき、最後に作中の探偵はその情報を駆使して事件を解決する。

 そんな難解なトリックは、マーダーミステリーには必要がない。読者にとっては、どこまでいっても物語の外から俯瞰する推理小説と違って、プレイヤーは作中キャラクターを演じるのだ。当然見えている景色は一人称視点で、得ている情報そのものも、情緒的な視野も、狭いものになる。

 極端なことを言えば、部屋の中で被害者をナイフで指した犯人が部屋からでた、だけで犯行そのものは成立してしまう。この犯行を、どうやって「解けそうで解けない」ように情報を整理し、どのようなルートで議論の引き合いに出されるかを調整するのが、議論導線でやるべきことだ。

 犯行があった時間が確実にわかり、その部屋を出入りしたキャラクターを二人以上が見ていれば、ほぼ犯人は確定してしまう。逆に部屋の中に誰がその部屋にいたかの痕跡が何もなく、誰にも強力な動機がなかったりすれば、その事件は迷宮入りだ。おとなしく警察の到着を待つより他に、できることはない。

 犯行時刻に候補があり、それぞれの時間に出入りしているキャラクターがいるだとか、死因が複数考えられるとか、調べていくと実は別のルートでその部屋には入れるだとか。そんな状況にプレイヤー達を陥れなければならない。

 事件を迷宮入りにさせず、少しずつヒントを出しながら、キャラクター達を真相解明に突き動かす。それこそが、議論導線をつくる最重要な狙いだ。また、別の目的に関する情報もここで整理する。


 つまり、ゲームで議論に必要な情報はすべてここで出しておこう。ここできちんと整理ができれば、各キャラクターのハンドアウト、追加情報用のコンポーネントを作るのは一瞬だ。

 本章では自作を具体例として、それぞれのシナリオの議論導線と推理導線を解説していく。パターンとしては物足りない数であり、導線のクオリティも頼りないものであるが、なんとか感覚をつかんでほしい。

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