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異世界日誌(仮)  作者: 鈴木啓一
前書き
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前書き

 やっと自宅でインターネットに繋がった時の感動と言ったら、一塩などという凡庸な表現で満足できるものではなかった。それはまるで、漂流者が広大な海原に一隻の船を発見したようなものであり、再び強固に現代文明と繋がれるという安心感そのものだった。誤解泣きよう付け加えておくのは、こちら側でインターネットが全く使えなかったわけではない。しかし割り当てられた通信量と限られた接続口を自らの娯楽として使うことはできず、通信無制限のお触れが出たつい昨今、ようやく私の個人用パソコンが現代文明の娯楽を享受する準備を整えた。ということである。


 前置きはこのくらいにしておこう。


 まず自己紹介をさせていただきたい。私の名前は鈴木啓一。新京で高等部教員をしている者である。簡単ではあるが、この内容で多くの読者の皆様には察していただくことができると思う。


お察しの通り、異世界の、あの新京である。


アメリカの大陥没跡から繫がり、地球各地の頁岩層から接続が可能となった異世界、テフレア。所謂「帝国」がアメリカとの戦争に負け、その当事国が分割統治されている。今となっては子供でも知っている社会常識ではあるが、異世界のニュースが日本本土の巷間を賑わせる注目の社会時事であることは、東京を離れて暫くになる私もよく存じ上げている。友人からもらう手紙にも、異世界での風習や文化、人種などについての質問が後を絶たず、私の消息を心配するよりも多い。多くの人が羨むが、一方で技術的・文明的なギャップを警戒してか、やはりこちらで生活をしようと行動をする人間は、実のところ少数派のようである。

正直に言えば、私も東京での生活が恋しいと思ったことが何度となくある。美味しいイタリアンや寿司を食べ、本屋とデパートに行き、好きなアニメを観ていたい。と思い、感傷に浸る日もあった。今ではこちらにも慣れてしまい落ち着いたが、東京を離れた日からそう年月が経った訳でもない。ふとした時に、そちらに戻りたいと思うことも間々あるものである。


閑話休題。私が今、この小説投稿サイト『小説家になろう』において、皆様に恥ずかしながら拙文をお見せしているのは、ある理由がある。


それは「異世界の実情が正しく伝わっていない」と感じた。というものである。


我が日本はアメリカの同盟国として、帝国に付き従う小規模エリアを統治することになった。それが「四公国」あるいは「二公二王の地」と呼ばれる小中国家群である。そこには統治のための日本人街「新京」が作られ、大量の日本人が(私を含めて)暮らし、現地の技術向上や文明進化に寄与するという大命を負って日々仕事に明け暮れている。その中で私は教師として現地の青年たちに地球文明を教授する身であり、常に地球の思考法、価値観、世界観について語っている。学生たちは真剣に地球について学び、全く違う星の思考を理解し、そして支配者たる地球人と共存する道を探ろうとしているのである。

しかし一方で地球、日本の方はどうか。私の知る限り、あまり良い情報は耳にしないと思う。現地人の眉目秀麗さや現地世界の異質さを過度に賛美したものや、あるいは文明の遅れを過度に強調し、貶める情報。そうしたものに我々地球人が流されていては、いくら異世界人が地球人を理解しようと奮闘したところで無駄となってしまうのではないだろうか。


理解とは即ち相互理解であると私は考える。


そこで、私は地球、とりわけ日本本土の皆さんに異世界を等身大で感じてもらう必要性を感じた。この『小説家になろう』をその媒体としたのは、異世界小説の本場であり、一人でも多くの方に読んでいただけると考えたからである。

この話は基本的に異世界で起こる事実を、小説形式で私の視点から語らせていただくものである。私が新京で実際に出会った人、動物、現象を、可能な限りありのまま読者の皆様にお伝えし、異世界、テフレアのリアルを感じ取っていただきたい。多少の小説的誇張が入るかもしれないが、概ね事実を記録する。


以上をもって前書きとさせていただく。

末筆ながら、本ページを開いていただいた皆様に、心よりの感謝を申し上げる。




宗歴5262年12月10日 

新京社会人学校 第三高等部

鈴木啓一


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