25.おいおい…ほんとに仲は良いんだろうな?
誤字脱字があったら報告してもらえたらありがたいです…
「次行くぞぉ」
「やっとかい、待ちくたびれて魔石集めしてたよ」
「少しは休めよ、花さんみたいにスタミナ無限ってわけじゃないだろ」
「ニコ、私は動き続けないと落ち着かないんだ」
カシオレ姉さんが流れるように俺に魔石を渡しながらどんどん進んでいく
「待て、カシオレお前…なんか今日おかしいぞ」
「何がだい?」
「いつもなら気だるそうに動いてるはずだ、なのに今日は妙にやる気一杯だなおい」
ニコママがカシオレ姉さんに喧嘩を売るように笑いながら声をかけ、足を止めさせる
「ちょっと思うことがあってねぇ…柊のユニークについて」
「え、俺!?巻き込まないでもらって…」
「もうどうでもいいから聖達さがそうよ~」
司は早く先にと俺の袖を引っ張り続けている
「カシオレ、言ってみろ。どこがどう気になる?」
「柊、変身は対象の情報…があればいいんだろう?」
「え?あぁ。変身したくても出来なかった時は毎回『対象の情報がありません』みたいなこと言われるのでそんな感じかな…と」
「それで魔石を食べたら対象の情報を手に入れられたわけだ」
「カシオレ姉さんはさっきから何が言いたいの?」
「それならさぁ、魔石って…魔物の情報が詰まったDNAみたいなものってことだろう?」
「まぁ、言い換えれば?」
「柊…私の髪、食べてみないかい?」
「…はい?」
カシオレ姉さんが…壊れた…
「あぁ、そういうことか。食え」
「いやいやいやいやいや!!ニコママまで髪渡さんでください!そんな某ヒーロー漫画の画風が一人だけ違う平和の象徴みたいに言われても!」
「そういやお前少し前からニコママニコママって!俺はニ!コ!さ!ん!だろ!!」
「あ~!あ~!取り敢えず食べてみな」
「食べればいいんでしょ?!食べれば!」
ええい!と口の中に二人の髪を一本ずつ突っ込む
「何も起きないですけど?」
「変身できないかい?私たちに」
「「「「「「?!」」」」」」
カシオレ姉さんとニコママの二人以外が、驚きを隠せなかった
「そ、そんなまさか…」
「いや、あり得るさ…日本には昔、研究熱心な男がダンジョンでユニークスキル『複製』を手に入れた」
カシオレ姉さんが話し出したところでキリストのあだ名をつけられた人がものすごい剣幕でカシオレ姉さんに向かって走っていくがニコママが羽交い絞めにして止めている
「やめろ!その話は国家機密だ!」
「その男も対象の情報が必要で魔石をよく食べていたさ、ただ魔物の複製をしたところで所詮魔物だ、言うことも聞かない。何なら他の人に被害が出るところだったさ」
「おい!ニコ!止めろ!」
「最後にその男は…自分の情報を手に入れるために髪を食べた、髪が一本も残らないまで引きちぎってね」
「カシオレ!止まれって!」
「その男は自分を複製、自我の崩壊の後。自殺、大多数の一般人を巻き込んでね」
「…!Aの言っていた自我の崩壊って…!」
「まぁ、つまり私が言いたいのは…髪の毛でも対象の情報ってやつは手に入るわけで…」
「変身」
『変身対象の情報が不足しています』
なんと!できないわけではなさそうだ!だが不足している…?
「情報が不足している…だそうです」
「おぉ!やったじゃないか!他人にも変身できるなんて!」
「カシオレ…その話をしたってことは」
「あぁ、私は旦那の研究の後継者を探している、いや…探していたんだ」
「これは?USB?」
「あぁ、柊。あんたが私の旦那の、複製のユニークスキル保持者の研究を継いでくれ」
カシオレ姉さんがUSBを俺に渡して満足そうに笑って先に向かって歩いていく
「あの…いや、その…重いというか…」
「あぁ?ダメだってのかい?」
「い、いや…俺には研究施設もない、それにユニークスキルの研究なんて俺に務まるとは思えない」
「いいのさ、もし自分に何かあったら私が選んだ人にこの研究を継がせろって」
「は、はぁ…うち父親の形見の壊れかけのオンボロノーパソしかないですけど…それでもいいですかね…?」
「それはダメだねぇ…容量が足りないだろう?私が最新機種のデスクトップPCを買ってやろう」
「え!まじで!?やったぁぁぁ!」
ガッツポーズのままジャンプして喜んでいるとニコさんが拳骨をかましてくる
「痛って…!」
「まだこのダンジョンから出られてねぇだろ、何なら死ぬ確立のほうが圧倒的に高いと思ってろ」
「そうさねぇ、奇跡的にここから出られたら家もぶっ壊れてるだろうから建て直しの資金も私が出してやるさね」
「あ、そこは私の家でどうにかできるから多分問題ないよ?」
「ま、まぁ花さんの家庭だ…驚かねぇよ…」
そうか、この人たちも司の家の財力を知ってるのか
「そうじゃん!みんなで同じ家にしよ!シェアハウスみたいに!」
「だから~…まd」
「まだ、ダンジョンから出られたわけではない、でしょ?早く聖達を見つけて地上に帰りましょう」
「分かってるじゃねぇか、先行くぞ。気を締めなおせ」
次の層へと俺達は改めて進みだす
ーーーーーーーーーーー
「そうそう、何となくなんだけどね」
「…?はい」
「ここ、出られる気がしないんだよね…」
「えぇ!?」
「いや、多分?恐らく?もしかしたら?ってぐらいだから…まぁ?」
「いやいや、そこまで言うならほとんど無理でしょ…」
疲れないのか結構な時間走り続けても全くペースが落ちない聖さんが突然止まって不安気に小さく話し出した
「他に誰か…強い人がダンジョンに入ってこないと助からないと思う」
「聖さん、結構強いし…頑張れば行けるんじゃ…」
「そもそもの出入口が上なのか下なのかわからないからね…」
「大体こういうのは登っていくとボスに行く気がするので、下って行けばいいんじゃないですか?」
「そうだね、下に行こうか」
ーーーーーーーーーーー
「そういえばなんだけど、ここの難易度低くないかい?」
「あ~!それ私も思った~!」
「まぁ、難易度で言ったら日本一の一歩手前、北海道の阿寒にあるダンジョンと同じぐらいだな」
「えぇ!?そうなの!?」
「とは言ってもあの鳥のスピードだけは少し焦ったけどね」
「だが…一層前と比べると比較的にならない程のレベルアップだ。次層がどこまでいくかだな」
「恐らく、次層かその次の層が限界かもしれない」
「お、誰かいた」
階段を上っていると見知った二人組が下がってきた
「うぇ!?聖?!」
「司さん!お兄ちゃん!聖さんが記憶喪失になっちゃった!」
「「「「「「「「はぁ!?!?」」」」」」」」
カシオレ姉さんだけじゃなくて…わが愛しの妹まで頭がおかしくなってしまった…
「で?誰が柊で誰が司?」
「私が司!これが柊!」
「聖お前マジで記憶喪失なんか」
「なるほど…お前らが…」
「おいおい…ほんとに仲は良いんだろうな?」
「何してるんだ?!聖!!」
何で?何で聖が葵の首をもって…
「ひ、聖…何してるの…?」
「俺が、俺達がここに閉じ込められてる理由、アナウンスの声に聴いたよ」
「おぉ、そりゃありがたい。なんでだ?」
「「堀江 柊、一 司。両名を狙う為」だそうだ」
「はい?」
「何言ってるだこいつ」
「考えたよ、結果的には今の俺には他人に変わりないから狙ってるやつに捧げる生贄になってもらうことにした」
「つまり、その葵ってやつの首掴んで持ち上げてんのは人質ってことか」
「ご名答、二人は早くこっちに」
「いやぁ、こちとら柊、司、聖の三名を守れと言われてるもんでね…その葵ってやつがどうなっても問題はない」
「おい!ニコ!てめぇ俺の妹に何か起きたらぶっ殺すからな!」
「うるせぇ…未来のためだ。尊い犠牲として割り切れ」
「悲しいこと言ってやらないでよ」
「い、痛い…!」
バタバタと暴れながら逃げようとしても逃げられない…葵が苦しそうだ
「聖!頼む!葵は…!葵だけは…!」
「命の取引で懇願するな、結果は下に回った時点で決まってしまうぞ」
「取引?勝手に力が互角と思い腐んなよクソ野郎」
ニコママは指を鳴らして自分の後ろに葵を瞬間移動させる
「…え?え?」
「動くな嬢ちゃん、お前が変に動くとややこしい」
「お前ら、多少壊れてもまぁ問題ない。後で記憶ごと治してやればいい…死ぬ気でやれ」
「ニコ…殺してしまうぞ…!」
「ビリー、やれと言ったらやれ。命令だ、口答えは許さん」
「諦めなビリー、ニコはこうなったらもう聞かないさね」
改めて思う、俺とこの人たちにはどれだけの差が、壁があるのだろうか
常にいつでも守ると言ってくれているような優しい圧を感じていたが、今は震えが止まらない。殺すと直球に言われてるような圧だ
ニコママが笑うどころか、顔的に怒ってる
「聖…と言ったかい?人質が悪かったねぇ…ニコは大の子供好きだよ」
「カシオレ、無駄なことを言うな。俺を無駄にイラつかせんじゃねぇよ…」
「早く来なよ…グチグチうるさい」
「ニコ、いつものやってくれ…俺はあれが好きなんだ」
「はぁ…お前ら覚悟はいいか、全ては」
ニコママの声に呼応するように全員が笑いながらローブを握って一斉に移動した
「「「「「「未来のために」」」」」」
「わぁ、厨二病みたいだ」
「うるせぇ…よ!」
「馬鹿にする余裕が続くといいねえ…!」
それぞれが殴る、蹴るなどの一斉攻撃。高校生相手にすることじゃないが聖はその場から動かずに殴ってきた人たちを自分に引き寄せ後退、寄せられたニコママたちは避けられるわけもなくカシオレ姉さんたちの蹴りをもろに顔面に食らってしまう
「気力を無意識で使ってるな」
「子供一人相手に6人で一斉攻撃とか…どっちが悪者だよ」
「お前ぇだよ」
指を鳴らして瞬間移動、速攻を仕掛けて失敗しようが成功しようがまたすぐに指を鳴らして避難、ヒット&アウェイ
「これは敵に回したくないね、ニコさんたちが味方で良かった」
「俺が…俺達が聖に着いていけば誰も戦わなくて済むのか…?」
「柊、ダメだよ。ニコさん達が戦っている意味がない。望むは保護対象3人+葵ちゃんの4人の無事」
「で、でも…このままじゃ」
「私たちが言っても邪魔だね、やるとするなら…邪魔にならない遠距離からの援護」
「俺に遠距離の援護は無理だ」
「だろうね、私の魔力回復要因になりな」
「あ~、はいはい…今はお前の道具になってやる」
司が一瞬で全力装備に着替えて俺に手を差し伸ばしてくる、俺は迷いなく手を取って魔力循環などの魔力操作をやめる
「すげぇな、一瞬で着替えたじゃん」
「このガチ装備の機能の一つ、『瞬間装着』だよ」
「便利だなそれ…!」
司がニコさんたちに長杖を向けた瞬間に魔力が一気に吸われていく
「う…おぉぉぉおぉお!?」
「魔石!」
「ヘイマム」
渡されていた魔石を口いっぱいに含んで俺はどんどん噛み砕いて飲み込んでいく
「ハハッ!あいつらイカれてるぞニコ!」
「うるせぇ気を抜くな…!」
「いいねぇ…!堪らない!」
どんどんハイペースになっていく戦闘に俺は着いていけない、確実に
それでも俺にできるのは司の魔力タンクというただの魔力補給係だけだ
「悔しいね…」
「馬鹿言え、お前の結界ならまだついて行けるだろ」
「ご名答」
こともあろうに司は聖のほうに結界を張った
「何やってんだ…!早く解け!」
俺が早く司に結界を解くように言うが司は少しニヤけてガッツポーズを小さくかます
「この結界はあの結界の逆…中の時間の進みを遅くする…!」
「良くやった司…!」
ニコママが一瞬近くに飛んできて結界の中に入って聖の邪魔をしては抜けるを繰り返す
「…!そういうことか!」
外のほうが時間の進みが早いため、こっちが1を考える時間が中にとっては0.1。ほとんど考える間もなく攻撃が飛んでくる上に結界から出ようとしてもこちらからはカタツムリレベルで遅い、中に入って聖を殴れば一生出られないままだろう
「この戦いのMVPはくれてやるよ司…!」
「ダメ押しサービス!回復させちゃうよ~!」
司が一人一人を対象に回復させ続けるが、その度に俺の魔力がゴリゴリ削られていく
「おい!魔石ももう尽きるぞ!」
「いいの!もう終わるから…!」
ニコママ達が変わりなくヒット&アウェイをしていると聖の様子が変わった
「…!」
「頭を抱えている…?」
「行け!お前ら!」
ニコママが俺と司を聖の目の前に飛ばす
「聖!聖!」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!頭が割れる…!」
「聖!また皆でバーベキューするべ!俺達四人で!」
聞いた事がある。記憶喪失から記憶が戻るとき、激しい頭痛に悩まされる場合もある
頭痛は殴られまくったせいで気のせいならそれでもいい…!
「聖!元に…!お願い!」
「ほらこれ!去年の誕生日にお前がくれたネックレスだよ!思い出せ!」
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
頼む頼む頼む頼む頼む!神様…!
「あぁ、司…柊…何で泣いてるんだ…?全身痛い…」
「聖!自分がわかるか!?」
「あぁ、これ以上ないほど鮮明に。さっきまでの記憶もあるよ」
「ゆっくり休みな…!料理は私が作っておくから!あとで食べよ?」
「痛い痛い…司、痛い!」
聖の記憶が戻った…!これでニコさんたちの保護対象が全員無事に揃った…!
「感動の再開のところ悪いが、先に進むぞ。柊、その木偶の坊を背負え」
「ニコママ…少しだけゆっくりできないですか?聖は皆さんと戦って消耗してる…!」
「いや、ダメだ。問題がいくつかある」
息が上がってるニコママたちが焦り気味で俺達を引っ張りながら進もうとするが、魔力循環をしてない俺でも振りほどけるほど力が入っていない
「無理だろ!こんな状態で進めるわけがない」
「ダメだ、後ろから来てる…!何かが!」
設定ポロリ
・好きな漫画キャラ
柊:現役引退した戦うと馬鹿つよいおじいちゃん
司:ゴリッゴリの武闘派脳筋キャラ
聖:物語後半に出てくる糸目つよつよキャラ
美咲:かわいいマスコットキャラ
葵:能力は弱いけど考えようによって最強になるキャラ
美晴:凍った心を優しく溶かしてくれる漢キャラ
感想とか頂けると筆乗るんで暇だったら書いていってください