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全魔と呼ばれた探索者  作者: 新戸成蔵
16/46

16.くそ雑魚やないかい

誤字脱字があったら報告してもらえたらありがたいです…

「待て待て!俺が頑張ってる感が無い…!」


司がずっと来る狼を倒しては俺が持っているビニール袋に魔石を入れていく光景を見て俺は嘆いていた


「でもどんどん先に行かないと時間が押しちゃうよ?」

「クソッ…!司タクシーで一思いに一気に下に行け!」

「どうなっても知らないからね?」

「望むところだ…」


ある程度は死ぬ目に会うだろう(?)。だがこんなところで司にぐちぐちと言われ続けるより司が何も言わなくなるまで下に潜ればいいのだ


「とりあえず、ボス部屋まで行ってみようか?」

「いや、お前が納得するところで降ろせばいいだろ」

「ん~、ボス部屋まで何層かわかる?」

「知らん」

「ならとりあえずボス部屋まで下がってみようか。ダンジョン自体の難易度によってボス部屋までの層の数も増えるから、ここならすぐボス部屋まで行けると思う」


いや、明らかにここの難易度はこの前の高難易度ダンジョンより難易度低いだろ…あのダンジョンで10層までなら次の層でボス部屋のパターンもあるだろ…


「じゃ、口閉じてなよ?あ、これでカウントよろしく!」

「え?あ、ちょっ」


ポイッと渡されたカウンターを急いで握って辺りの景色に集中した。一瞬しか階段は現れないからな…見逃したら司に何て言われるか…


そんなことを考えながら階段が来たらカウントをしていくうちにどんどん下がっていく、ある程度階層を降りて突然司が止まった


「…なぁ」

「うん、多いね」


現在のカウントを見ると24


「今、24層目だぞ…?」

「20越えって…私がいつも行ってる日本最高難易度と同じかそれ以上ってこと…?」

「そんなバカな」

「でも…今までのダンジョンの法則では難易度の高さ=階層数の多さだよ?これは世界中での検証の結果だから…」

「何事にも例外はあるって言うだろ…ちなみに世界最高の層数は何層までなんだ?」

「確か…50層とかじゃなかったかな…アメリカ」

「うわっ、アメリカって最強なイメージあるけどイメージ通りだわ」

「ここは何層までなんだろ…」


司の顔は少し不安そうに見えるが俺は長い付き合いだからわかる。今みたいに一見少し不安そうな顔をしているときの司は、楽しみで仕方がないのだ


「なんだ?その~…行くか?」

「いいの?最悪心中かもしれないよ?」


少し嬉しそうに笑いながら聞いてくる


「仲のいいやつと死ねるのは俺にとって本望だが心中は極力避けてくれよ」

「任せて!これでも日本でも有数の実力者だからね!」

「よし行け!絶望!」

「後でお仕置きだからね!?」


そう言って抱えられたままの会議は終わり、また進みだしたので俺はひたすらカウントだけをしていく。しばらくカウントを進めているうちに一瞬で景色が見覚えのある景色に変わったので察した。ボス部屋の前に着いたのだ


「今何層?」

「えっと…65層だな」

「マジか…これほんとに逃げに徹しないと死ねるね?」

「階段の少し前でストップしてよかったな?!」

「ねぇ…?お願い」

「ダメだぞ、絶対に」

「ホントにお願い!」

「ダメだって」


俺には司が何をお願いしようとしているのかが手に取る様にわかる


「一瞬!一瞬だけだから…ちょっかい掛けてきていい?」

「死ぬぞ、冗談抜きで。もしお前に何かがあって俺が帰れなくなったらどうする」

「大丈夫!階段まで逃げ切れば魔物がこっちに来ることはないし!最悪2人で1か月難なく暮らせるぐらいの荷物はポシェットに入ってるから!」

「お前…マジで言ってんのか?」

「マジ、ここで冒険しなくていつ冒険するのさ」

「はぁ…行ってこい。最悪骨を拾える範囲でやってくれよ…」

「サンキュ!」


司は俺とポシェットを階段に置いて、ポシェットから取り出した装備に着替える


「それは?」

「これはガチ装備だよ?かっこいいでしょ」

「なんか、魔術師っていうか…司祭って感じだな」

「うん、私って回復専門だよ?」

「あ?あの身のこなしで何言ってんだてめぇ」

「でもね、魔力の量が少ないから師匠に体術も教えてもらってるの」

「まぁ…それは分かる」


魔力を消費するのは殆ど最終手段的な感じなのだろう。俺達が司に変に危ないことをさせられていたころは自分だけはしなかったからな、あまり体を動かすのが苦手な司が身体能力お化けなのが少し解釈違いだったがそういう背景があったとは…


白をベースに金の刺繍が少しだけ入ったローブ、左手に長杖、まるで司祭のような見た目だが一部だけ司祭らしくない。右手に持っている禍々しいナイフだ。逆手持ちで、なんだか腕から顔にかけて黒いバラの枝のようなものが巻き付いている


「さぁ、見てて…!」


と言っても、一瞬で階段のすぐ近くにいた牛の身体をして手に斧のようなものを持っている二足歩行のムキムキマッチョメン、所謂ミノタウロスに切り付けてこっちに帰ってくるだけだからな。俺の目にはそもそも見える速度じゃない


「おかえり、大丈夫か?」

「うん…いたた…」


そういうと装備をポシェットに仕舞いながら司は右腕を押さえる


「やられたのか?」

「いや、スピードでは勝ってたよ。多分ギリギリだと思うけど」

「お前…よくこの階層まで降りてこれたな…」

「そもそも魔物に見つからないように40層ぐらいから透明化するピアス付けてたしね」

「ナニソレ初耳」

「今はそれはどうでもいいの!見て、あのミノタウロス」


指差した先にいる司が攻撃してきたミノタウロスはかすり傷ほどしか傷を負っておらず、それにプラスして自分で回復魔法のようなものを使っていた


「はぁ?なんだあれバケモンじゃないか」

「流石世界最大層の魔物だね…こりゃまずい」

「早く腕治せよ、痛いんだろ?」

「これは少し後じゃないと痛みが消えないの、傷は治ってるから。痛みが消えるまであと1時間ぐらいかな?」

「うっわ…攻撃するって決まった瞬間から1時間はここに縛られることが確定してたのかよ」

「面白いね…すこし遊ぼうか」


司は右腕を押さえながら少し笑っている


「遊ぶの少し後にしろ。あのナイフ、どんな効果だったんだよ」

「えっと…自分にはスリップダメージ、攻撃した敵には回復を少しだけ阻害する呪いが傷口にかかる。クロノノロイってナイフだよ」

「スリップダメージって…大丈夫なのか?」

「あ、それは大丈夫。魔力上乗せ装備で使える永続回復魔法自分にかけてるから体力がなくなることはないけどずっと傷ついては回復を繰り返してるから腕が痛いのなんの」

「それどれぐらいの減少量なんだよ…」

「大体5%毎秒ぐらいかな?」

「はぁ!?」


それ回復役が居ないと20秒で死ぬぞ…?だから自分で回復できる司が持ってるのか…?いやもうわけわからん


「もう今後一生そのナイフを使わないと誓え。聖にも誓わせるからな」

「え、いやだよ。回復阻害って結構ありがたいんだよ?」

「それでお前が死にかけるのなら意味がないだろっての」

「え~…わかった…」

「今すぐ、聖にも誓え」

「はい…」


RAINで聖に電話して誓わせるが聖は「意味が全く分からん、なんの誓い?」と困惑していたのはここだけの話


「それで?遊ぶって何して遊ぶんだよ」

「ここに取り出したりまするは…ギャンブラーが大好きなこのキリ!」

「お前な…死ぬぞ?」

「スピードで勝ってるから問題ない!それに人型の魔物の弱点は頭って相場が決まってるの!」

「腕は?痛いんじゃないのか?」

「ん?遊んでたらどうにかなるでしょ」

「どうにかって…あ!お前に貰ったポーション!疲労とかも回復するなら多少の痛覚軽減とか…」

「そんなの無いよ。麻酔とか今後持ち歩こうかな…」


ロングコートの内側にあるポーションポケットのようなところに貰ったポーションを刺して大事に持っていたのだが、使い時は今ではなかったようだ


「じゃ、ちょっと喧嘩売ってくるね」

「死なないように全力で行ってこい」

「は~い」


それから一瞬で消えては一瞬で帰ってくるという究極のヒット&アウェイ戦法を繰り返した司は最後までミノタウロスを倒すことができなかった


「何回ぐらいクリティカルっぽい反応あった?」

「そもそも反応が変わんねぇんだよな…まだクリティカル引いてないのかクリティカルでもダメージがほとんど無いのか」

「まぁこの武器一応攻撃力が低いし…」

「生半可な攻撃じゃビクともしないってことか、軽く地獄だな」

「まだまだ実力不足だね~」


ポシェットからカセットコンロなどを取り出しながら司が弱音を吐く


「何してんの?」

「ん?少しエネルギー補給しようと思って!」

「何作るんだ?」

「何がいい?ご飯は炊くと時間かかるからやめてほしいけど」

「そうだな~…うどんとか?ラーメン…パスタ?」

「パスタいいね!それにしよう!」


ポシェットの中から色々な材料を取り出しながら司が聞いてくる


「何味の奴がいい?ミートソース?カルボナーラ?ペペロンチーノ?」

「ナポリタンで、ピーマン抜き」

「はーい。ピーマンは我慢して食べてね」


司は要らない食材をポシェットの中に入れなおして手際良くナポリタンを作っていく


「はい、召し上がれ~♪」

「いただきます。腕は大丈夫なのか?」

「痛いままだけど少し慣れてきた」

「いやな慣れだな~…」


そう言って右腕をさすっている、俺は少し申し訳ない気持ちで司を見ていた


「労わってくれるのはうれしいけどピーマン入れてるの見えてるからね」

「チッ」

「なんで?ピーマン美味しいじゃん」

「苦いじゃん…」

「その苦みが良く感じるようになるさ、いつかね」

「そんな日は来なくていい」


なんだかんだで司はピーマンを全部食べて食器を片付けていく


「絶対ブラックでコーヒー飲めないでしょ。わかるよ?私も飲めないから」

「は?コーヒーはブラック一択だろ、チョコとよく合う」

「えぇ…」


なんと司はブラックコーヒーが飲めないらしい。お子ちゃまもお子ちゃまだな、ブラックは大体の人が中学2年で憧れて一年の修業期間を経て、飲めるようになるものだ。


「さて…ちょっと寄り道して帰ろうか」

「寄り道はいいけど…腕は?」

「もう大丈夫、大体40層ぐらいだったと思うから少しは敵の強さもマシになってるはず」

「寄り道ってなにするんだ?」

「スライムっぽいのが居たからさ、そいつの動向を見て柊の参考になる動きと狩るかもって!」

「名前言ってるし…口滑らせるなよ…?」

「ここは元々丸々カットだから問題ないよ?」

「あ、さいですか…」


まぁ世界記録大幅更新まで伸びるダンジョンを見つけたとなると色々とめんどそうだしな


「翌々考えると俺と聖は近所だから世界最高難易度クラスを探索できるのか…!いいじゃん熱い…!」

「馬鹿なこと言わないでよね、私が居なかったら今の柊は5層までで確実にやられるね」

「はぁ?!10層までは楽勝だわ!」

「あ、言うの忘れてたけど10層以上の階層数があるダンジョンには10層刻みでフロアボスっていう戦わなくてもいいけど戦ったらおいしい報酬くれる奴いるからね?当然強いけど…多分聖と二人で挑むことになるだろうから忘れないようにしといてね」


突然の重要情報、と言いたいところだが俺だって探索者になる前に少しは調べている。存在自体は知っている


「分かった、とりあえず寄り道場所まで行くか」

「は~い、ちゃんと口閉じてなよ?」

「ん」


司も俺も慣れてきたのかスムーズに俺は担がれる


「ご~!」


景色が線状に見えるほどの加速を一瞬でしてどんどん階層が上がっていくのがわかる。この調子ならすぐお目当ての場所まで着けそうだな


「到着!」

「おぉ、ほんとだ。スライムだらけだな」

「まぁ、ここも40層越えだから世界最高難易度以上ぐらいの強さだと思うんだけど…」

「そこまで強いスライムの動きとか俺見て見たいぞ?!」


じっと上の層へと続く階段からスライムを見ていると色んな動きが見える


「あ、食べた」

「普段はあまり起こることじゃないけどやっぱり強いところだと同種を吸収して自強化とかもするんだね~」

「え…分裂したぞ」

「わぁお!何のために吸収したのかわからないや!」


俺達は階段という無敵の味方に身を任せ、スライムの動きをよく観察しながら色々と能力について考察をしていた


「まずこのスライムがスライムの上位種だった~とかあったらどうする?柊はスライム上位種になれるの?」

「え、上位種とかいう進化系いるの?」

「某狩猟ゲームで言うと下位、上位、G級の三つだね」

「しっかり三つに分けられてんのな」

「って言ってもちゃんと星の数の方で考えたほうがいいよ。大まかには三つだけど下位にも星の数があったでしょ」

「え、俺のスライムどこ」

「下位の1の採取クエに出てくるドス系の子分だね」

「くそ雑魚やないかい」


俺の変身できるスライム君はとても弱かったようだ。まぁそりゃ第一層の魔物の魔石で手に入った変身先だし?そら弱いだろうなとは思ってたよ


「ま、生肉要因よりかはまだましだから安心しなよ~」

「ちなみにあいつの強さ的にはどんなもんなんだ?」

「そうだね~魔力で言うなら…あのドラゴンの4倍ってところかな?」

「はい?4?0.4ではなく?」

「何で10層目ぐらいのボスが40層超えてるスライムより強いの…普通にこっちのほうが強いに決まってるでしょ」

「第一層のスライム何体ぐらい…?」

「え…わかんない。測定不能ってやつ?あまりに差がありすぎて分かんないや」

「マジか~…俺世界樹ダンジョンに行く前にこのダンジョン探索しているうちに死ぬんじゃないか?」

「それはないかもだけど…あまりダラダラしてるとそうなってくるかもね?」


あまりに規格外なダンジョンだ。到底探索しきれるとは思えない


「はぁ…こりゃ駄目だな。聖と地道に探索しよう…」

「私もだけど高校が終わるまではあれだね、本腰入れられないもんね?」

「まぁな…うぜぇ…!こんなワクワクする展開が目の前にあるのにお預けなんて…!」

「ちょっと探索会議必要だね~。帰ったら聖の家で会議開こう」

「そうするか」


俺と司は立ち上がって、それからは二人とも何も言うことはなくスムーズに担がれてダンジョンの出口まで戻ってきた


「いや~いい動画が取れた!動画の終わり部分だけ撮っていい?」

「いいぞ」

「いや~、目隠しも案外悪くない!狼に嚙まれたりしたけど!みんなは真似しないでね!またね~!」

「ありがとうございました…」


もう司の切り替えの早さにも慣れてきた、適当に挨拶をしてそれっぽくしておこう


「よし!じゃあ聖の家で探索会議~!」

「お~」



設定ポロリ

・好きな場所

柊:水族館 (家族で一緒に行った回数が一番多いから)

司:動物園 (ライオンがカッコイイから)

聖:水族館 (薄暗くて落ち着くから)

美咲:動物園 (もふもふがいっぱいだから)

葵:水族館 (たまに母親にお小遣いをねだって兄と一緒に行くから)

美晴:動物園 (もふもふアイランドだから)


水族館の薄暗くておしゃれな雰囲気好きなんですよね (by作者)


・好きなゲーム職業

柊:付与術師 (後方支援で皆を支えてる感がある、最悪自強化でチクチク行けるから)

司:戦士 (ゲームの中だとリアル体力関係なく暴れられるから)

聖:魔法使い (自分が死ぬと敵を倒せなくなるという極限状態が好きだから)

美咲:僧侶 (自分が居るとパーティーの皆が喜ぶから)



感想とか頂けると筆乗るんで暇だったら書いていってください

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