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短編集:私がダンジョンマスターになったわけ  作者: 木苺
(9)チームでお仕事♡
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シンクタンの仕事とジャッキー軍団

ダン菅とシンクタンク・ミーちゃんが雇用した面々との間で 守秘義務に関する新たな誓約がかわされた。


そのあと、Aチームは、クインの研究結果を参考にしながら、①人やモノがダンジョン内に転移陣を利用せずに出入りした場合のエネルギーの移動問題と

②異なるダンジョン間で転移陣を利用して人やモノを移動した場合のエネルギーの移動問題に関するあらたな実験計画をたてた。




その計画に基づいてまず ①について実験と計測が行われた。


このとき、Aチームのアリソンがリーダーとなりモートンといっしょに、ダン菅本部のあるダンジョンを皮切りに、各ダンジョンを回って調べた。


その結果 徒歩や、ダン菅建物に備え付けのエレベーター(これは地表で発電されたエネルギーを使って動いている)を使って、ダンジョン内外を移動する場合は

ダンジョンエネルギーが消費されないことが確認された。


むしろ 一般客たちが、ミーちゃんダンジョンに遊びに行くために、各地のダン菅支部に入場するときのワクワク感が その支部のあるダンジョンのエネルギーに加算されていることが判明した。



そこで、アリソンとモートンの二人は、ダン菅各支部を回って、①の確認と②の実験を始めた。


その結果、同一大陸にあるダンジョン間でそこの住民やその地の生産物を転移陣で移動させる場合の ダンジョンの消費エネルギーは少ないことが分かった。

 それこそ 利用客の感情エネルギーの放出で賄える程度の量であった。


一方、異なる大陸間の移動、つまり各ダン菅支部とミーちゃんダンジョンとの間での転移陣の発動の際には、

 ダン菅支部→みーちゃんダンジョンの移動に要するダンジョンエネルギー消費は少ない

  ただし 直近にミーちゃんダンジョンに滞在した時間が多いものは

  若干 ダン菅支部発の転移で ダン菅支部のあるダンジョンエネルギーの消費が多い


 みーちゃんダンジョン→ダン菅支部の移動の場合は

  みーちゃんやダンサンのように 長期間ミーちゃんダンジョン内で過ごしているものを送り出す場合、ミーちゃんダンジョンの負担は少ない


 その一方で、 日帰り客の出入りの際にはミーちゃん達の時に比べて、 ミーちゃんダンジョンが失うダンジョンエネルギー量が多い。


ということがわかった。



この点について さらに精査すると、

(あ)ダンジョンのある大陸で生まれたり過ごしたり生産されたモノは

   ダンジョンとのなじみがよいのか、

   転移陣を使ったダンジョンの出入りの時に、ダンジョンが失うダンジョンエネルギーも少ない


(い)ダンジョンが存在する大陸と、異なる大陸で生まれたり過ごしたり生産されたモノは

   ダンジョンとのなじみが薄いほど、

   転移陣を使ったダンジョンの出入りに際には、質量に応じて

   より多くのダンジョンエネルギーを消費すること

がわかった。


このことから 仮説として、転移陣を移動する際に、

ダンジョンになじみの薄いものほど 通過の際の抵抗が大きくなるため

ダンジョン内エネルギーが消費されるのだろうという推測が出た。


(今のところ それを否定する材料がみつかっていない)


・アリソンとモートンが実験などのためにダンカン支部やダンカン本部でを訪れるのに合わせて、

 ダンサンもルポを伴って 本部や支部にあるダン菅資料室に行った。

 

 

・それやこれやの実験と計測の結果、

 新型転移陣を使って、ダン菅各支部とみーちゃんダンジョンとで 直接転移するシステムを運営しても多分大丈夫だろうという結論に至った。


 もちろん 各ダンジョンの負担を小さくするためのモデルをつくり

運用上の制限・条件も細かく定めたうえでの話である。



・この制限事項や条件を定めるための予備調査として、ダンサンはダン菅内の資料すべてを複写してミーちゃんに貸し出す許可をもぎ取った。


 ダン菅としても、いつまでも資料室を「開かずの魔(間)・埋もれた宝・ただの場所ふさぎ」にしておいてはダメだという危機感があったので、ミーちゃんが シンクタンクのメンバーを率いてその情報を有効活用できる形にまとめてくれるのなら 閲覧許可を出してもよいと考えたのだった。


 みーちゃんからすると、パンドラの箱を開けるような真似をしたくない、そもそも 宝の山か屑の堆積かわからないものから「何か良いものが出てくる」と期待されても困るのだが・・


 そこはそれ、「資料にインデックスをつける」作業そのものに対する日当と報酬と奨励金が成果報酬とは別枠で常時保証されたので、その他もろもろの条件も考え合わせて、シンクタンクとしての新たな契約を結んだ。


 なにしろ、資料をコピーするという最初の面倒な仕事は、ダンサンがすべて引き受けるといったので。

 もちろん ダンサンの補助としてルポを派遣したのだが、彼女の出張に関しても 経費と諸手当てがダン菅から支給された。


 そして コピーしてきた資料の解析は、クジャク型精霊ジャッキーの中でも データ分析に特化した銀ちゃんグループに任せた。

 銀ちゃんは、頭に冠のような銀色の羽毛を持つ精霊ジャッキー達の総称である。



 銀ちゃん達は情報を分析して目録・要約の形にまとめるときに、単純化された記号を使った。


 それを一般人が読んでもわかるように言語化する作業を、精霊ジャッキーの一人銀3(ギンサンー)と第1グループのアップルとで行った。


「まさか ブログラム言語を日常用語に翻訳する仕事をすることになるとは思わなかったよ」とアップルは笑った。


 頭の回転はとびぬけて早いが、対人関係における押しの弱いアップルとしては、

 穏やかな性格で アップルの思考速度にあわせて対話できる銀3との協同作業は

 予想以上に快適だった。


  (アップルは頭の回転が速すぎて

   たいていの人間との話のペースを合わせるのに苦労していたのである。


   ミーちゃんのように 出会って1分たたないうちに「ごめん 話のペースを落として」と

   素直に 自分の頭の回転速度がアップルに追い付かないと認める人のほうがまれであり

   たいていの人間は、頭の回転の速いアップルを攻撃したり嫌ったので。


   おおかたの人間は アップルを馬鹿にしたり無視して自分達の言いたいことだけをアップルに押し付ける方向に走るので、アップルは音声会話による意思疎通をほとんどあきらめていた。

   

   なので アップルのペースで音声会話のできるギン3との出会いに、アップルは感激した。

   やはり文字や記号を利用したコミュニケーションでは共有できない「雰囲気」というものが

   顔を合わせての会話にはあるから。)

 


◇ ◇

これらの作業には、Aチームと第1チームの双方がたずさわった。


第1チームの仕事は なにも献立の開発ばかりではなかった。


第1チームはAチームの手足となって みーちゃんダンジョン内を動き回った。


みーちゃんは チームと協力して様々な機器を生み出した。



・消費エネルギーに重点を置いたダンジョンの出入りに関する初期データがそろってからは

ダンジョン内に滞在することにより 人体にどのような変化が生じているのか調べる作業も並行しておこなった。


この研究には、諸連絡のためにミーちゃんダンジョンとダン菅本部やダン菅支部との間を行き来する・みーちゃん・ダンサン・アリソン・モートン・ルポの5人が計測対象として協力した。


さらに ペット広場をご利用のお客さまから ペットの測定に関してご協力頂いた。


解剖などが必要な場合には、実験用小動物を使いました。

 人の命には代えられない。ごめんね 実験動物君たち。



生体に関する研究のチームリーダーはルポが兼任した。


彼女は 人間の医師免許を持つ生物学の研究者でもあった。


なにしろ 今の時代、研究者は複数の学位を持つのは当たり前のこと

 さらに 理系の研究者なら 本業とあわせて システムエンジニアの資格と技能くらい持っていて当たり前の時代ですから。



逆にいうと なぜ 理系の技術者に、その専門領域とは関係なくシステムエンジニアの資格を持たせるのかというと

各領域独自のコンピューター技術やらそれに関する倫理を持たせると

ターミネーターやスカイネットを生み出したサイバーダイン社の研究者のような人間を生み出しやすいからだ。


それゆえ 情報を取り扱う技術者の倫理観を社会全体で共有し、そのモラルを維持するために

情報機器や情報工学技術を利用する者には、必ず システムエンジニアやプログラマーとしての資格取得を義務づけたのだ。


だから 早熟な子供の場合は プログラム言語を学び始める10歳~12歳の間にこれらの諸資格を取得している。


それは 子供がゲーム感覚でハッキングして 大人社会のコンピューターシステムをいじることを予防するためでもある。


情報処理技術とは 子供や研究者がおもちゃにしてよいものではないのである。 

 むしろこれらを利用できるものは、高い倫理性を備えた選ばれしもの(エリート)でなければならない。


 といっても エリート=社畜といえなくもないのであるが。


 なぜなら 高度な技術を身に着けるには、先行投資として 多くの個人的時間と努力と学習費用を負担しなければならないので、刻苦勉励(こっくべんれい)の生活習慣が身に沁みこんでしまうのである。


 それゆえ 効率的に稼いで 物質的な満足を追求するには肉体労働

 (無償の義務教育終了後すぐに働くことができ報酬を手にできる、就業のための先行投資不要)


 社会的地位を狙うなら文系

  (大学で1科目だけ専攻して競争試験に勝ち抜けば就職も昇進もできる。コネも使える。

   ダンサンもこのタイプ)


  ただし「出世競争」が伴い、必ずしも自分の努力・労力が収入に反映されるわけではない。

  確実な収入・労働に見合った報酬・堅実な生活を狙うならば肉体労働がおすすめ


 それに比べて、高度な技術職を目指すのは

  頭が良すぎて、生まれた環境での人付き合いに苦労した少数派(マイノリティ)

  裕福な環境に生まれ、学習意欲や探求心の強かった人のいずれか


というのが ミーちゃんの生まれた世界の常識であった。

(ミーちゃんの世界では、肉体労働を「地球環境への負荷が最小となる動力」として高く評価し

 肉体労働者の労働環境と労働への対価を高く大切にとり扱う社会であった。)

 


話をもとにもどすと、これらの研究の結果

ダンジョンとのなじみ度とは、飲食物と飲食したものが体の構成要素に置き換わることが関係しているとわかった。


 つまり

・ダンジョンのある大陸でできたものを摂取して育った人やモノはそのダンジョンとなじみ度が高い。


・ダンジョン内生産物を飲食した物を未消化のまま体に抱える人がほかの大陸にあるダンジョンに転移するさいには、受け入れ側に何らかの抵抗が生じるらしく、送る側のダンジョンで消費される転移エネルギーが増える。


・ダンジョン内で摂取したものを消化してすでに血肉化した生物は 飲食したものを生成したダンジョンとのなじみ度が上がる。etc.



(うーん こうやって書きだしていくと 頭がくらくらする。

  あちらを立てれば こちらが立たず みたいな面もあるような・・・)

みーちゃんは 頭を抱えた。



しかし そこは その手のことに強い教授が率いるシンクタンクのめんめん

 なんやかんやを うまくモデル化してしまった。



◇ ◇



ミーちゃんダンジョン内で用いられる 「エネルギーの移動に関する各種モニター機器」というのは、

実は ダンジョンエネルギーをの移動状況を感知して記録したりデータ処理することに特化したダンジョン生物 精霊ジャッキーと直結した装置であった。


つまり 装置がエネルギー状態を計測しているのではなく

装置を通して ジャッキーが計測しているのであった。



一方 ミーちゃんダンジョン外での計測で利用している機器というのは、

その機器が感知したエネルギーの変化を記録保存する装置である。


その機器の中に蓄積されたデータは シンクタンクのメンバーが読み取って解析することもできたが、ジャッキーがシンクタンクのメンバーに気づかれずに読み()くこともできた。


それゆえ シンクタンクのメンバーが開発したシステムが うまく作動しているかどうかを常時監視するのも ジャッキーの仕事のひとつであった。



・クジャク型精霊ジャッキー

 その中でも ダンジョン全体のエネルギーの流れを監視するのは、頭に金色の冠のような毛をつったてたジャッキー金グループであった。

 その名は 金1(キンワン) 金2(キンツー)・・・

 識別ナンバー込みの呼び名である。


Aチームのメンバーにとって ジャッキーたちは いつのまにか同僚の一部となっていた。

 ただ 個体の識別があまりつかなかったので

 ジャッキー達をまとめて「金ちゃん」「銀ちゃん」と呼んでいた。


休憩中 胸をはり羽を広げて しゃなりしゃなりと散歩するジャッキー「金ちゃん」達は 良い目の保養であった。



ちなみにAチームが 食堂控室にいるモルガナに会いに行って、最初にキンツーと鉢合わせたのは、このメンバーと精霊との相性をみるために ミーちゃんが仕組んだことだった。


この時の出会いが 良い雰囲気だったので、みーちゃんも 安心して「金ちゃん」たちを

Aチームと組ませることができた。



一方、第一グループの面々は、アップルと一緒に作業をしている銀3の存在を通して

「銀ちゃん」グループに親しみを持った。


ジャッキー銀たちは、休憩時間 会話する人間たちのそばでくつろいでいるように見えた。

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