階層に特色を持たせて増やしたら、ダンジョンがさらに進化した
転移陣を設置するゲートの混雑緩和と、お客様の移動ルートをすっきりとさせるために
階層を増やしました。
さらに、大人数を輸送できる転移陣に加え、ミニ転移陣「扉」も設けました。
◇ ◇
【第3階層】
<Aゾーン>
・ダンジョンスタッフ休憩所
・お花畑スタッフである「ちょうちょと幼虫モンスター」の待機場所
<ファミリーランド>
☆エリア1
・幻影城のお堀端
・芝生広場
芝生広場の中央に管理棟と売店がある
管理棟(ファミリーランド出入受付・お客様広場との到着転移陣・出発転移陣)
小川のほとりに
①「大型テント村」からの扉の出口
②「ちょうちょの飛ぶお花畑」行の扉
③「乗り物遊園地」行の扉
・小川
・野原
小川のほとりに、
④「友達広場(大型テント村)」行き(宿泊者専用)の扉
⑤「ちょうちょの飛ぶお花畑」からの扉の出口
⑥「乗り物遊園地」からの扉の出口
☆エリア2
・ちょうちょの飛ぶお花畑
夕方4時~朝4時:ちょうちょは退場して、青虫・芋虫モンスターが出現
☆エリア3
・乗り物遊園地
山・川・湖・平原とポップフロッグ
ウナギ車コーナー(川)
ニョロ車コーナー(岩山と平原)
ひらひらちょうちょコーナー(巨大花の咲く花畑)
「ブンブンブン」
蜂型モンスターの背中に載って、花畑の上で スピード競争。
「トンボで飛ぼう」:ヤンマ型モンスター・林
各コーナーをつなぐ「乗り合い芋虫」の道
「空飛ぶヒラメタクシー」乗降所
<大型テント村:宿泊者専用ゾーン>
・友達広場
管理棟:
入出手続き・お客様広場との到着転移陣・出発転移陣
テントの割り当て・ファミリーランドと行き来するためのパス(腕輪)の発行
売店(各種ガイドブック・おみやげ・便利グッズの販売・貸出)
食堂・野外炊さん場
木々と生垣に囲まれた露天風呂(男女別・更衣室つき)
WC
・林の中の大型テント
◇
【第4階層:Aゾーン】
第3階層の管理
乗り物用ダンジョン生物の健康管理・安眠場・誕生場所
【第5階層:採り採り野山・食べ放題野原(日帰りエリア)】
【第6階層:Aゾーン】
第5階層と第7階層の管理エリア、特にモンスター発生イベントには気を配る
ダンジョンスタッフ休憩所・誕生場所
【第7階層:採り採り野山・食べ放題野原(宿泊エリア)】
・・・
・第1階層では、ダンジョン運営者が設定した範囲内で、お客様が楽しむスタイルでした。
それゆえ、果物を摘んだり、乳しぼりをするのも、参加者数や消費量を、ダンジョン運営者が設定した範囲にとどめることができました。
なので、農園スタイルで、ダンジョンスタッフが ダンジョン植物の生成・成長管理をおこなっていました。
さらに第1階層でお客様が消費するものを、第2階層で作って搬入するのも容易でした。
・しかし、「採り採り野山・食べ放題野原」では、お客様が何を採取してどのように消費するかはお客様しだい。
というわけで、採取されたらそれと同じか同系統のものが次々と自動生成するように、エリア設計する必要がありました。
・しかも、冒険的要素を求める都市住民であるお客様に対応するためには、
ダンジョンスタッフの仕事が多岐にわたる。ランダムに多様な・予想外の仕事が発生する!
(リゾートや遊園地の運営とは段違いに、客の世話に手がかかる!)ということがわかりました。
というわけで、「採り採り野山・食べ放題広場」は、日帰りエリアと宿泊エリアで階層を分けました。
◇
ミーちゃんダンジョンのスタッフは、接客サービス要員も施設維持要員も 全員 ダンジョン生物です。
「農園・リゾート型だった第一階層にくらべて、「わくわく・冒険型」の「第3・5・7階層」では、
ダンジョン生物たちの消耗が激しいですね」ダンサン
「そうなのよ。
乗り物担当モンスターたちの消耗の激しさは最初から予想して、
ダンジョン生物たちの回復を主目的とするAゾーンを、「第4・第6階層」として挟み込んでいくことにしたんだけど」
「おかげで、サービススタッフの予想外の疲労へのサポートもしっかりとできて良かったです。」ダンサン
「それにしても、私たちが、サービススタッフの疲労度の違いに気づいて、
ダンジョン生物の回復プログラムを調整するよりもまえに
ダンジョンの回復ゾーンが 自律的に対応していたのには驚いたわ」
「もしかしたら、転移を目的とする機能を、その規模に応じて、転移陣と転移扉にわけたこと、
ダンジョン生物の回復を目的としてAゾーン専用階層を複数設置し
さらに そのAゾーン内のダンジョン生物回復場所を、回復させるダンジョン生物の種類と業務内容別に細かくエリア分けしたことが、功を奏したのかもしれません」ダンサン
「というと?」
「つまり 同じ機能でも、エリアごとに程度がちがうことによって、
ダンジョンが ダンジョンとしてのお仕事を加減することを覚えたとでもいうんでしょうかね
ダンジョンが 己の機能の仕方について学習を始めたというか」ダンサン
「つまり これまで、ダンジョンの成長と言えば、面積や体積の広がりだけだったのか、
階層化という、空間の個性的発達をはじめて
さらに、機能の調整という質的変化(=学習)も始めたということ?」
「そうそう、ダンジョンの成長が 第2段階からすでに第3段階に突入していったのではないかと」ダンサン
「わぉ! すごいわね。
もしかしたら これからはダンジョン生物にも個性が出てくるかもしれない。
でも その分 マスターの仕事も増えるわね。
これまでは、ダンジョンにやらせたいことをプログラムするだけでよかったのに、
これからは ダンジョンが独自に生み出すプログラムの監視と統制もやって行かなくてはいけない」
「ですね、
なんだか ダンジョンが 複合型巨大プログラムに見えてきましたよ」ダンサン
「これまで、ダンジョンが 機能面で独自の動きをみせ始める過程が不明だったのですが
今回 それが明確化できたのではないかと思います。」ダンサン
「となると ダンジョンマスターは、単なる夢の設計者ではなくて
オペレーターってことになるじゃない?」
「言われてみれば、みーちゃんのダンジョン経営って
なんとなく ブログラマーっぽかったのが、
このミーちゃんダンジョンの成長・発展に寄与したんですかねぇ」ダンサン
「そぉお?」
「ええ、今までのダンジョン経営者とは 一味ちがう経営をしているなぁというのは
ダン管職員内でも話題になってたんですが、
今までは それは 女性だから感性がちがうんだろう、
今までのダンジョン経営者はみんな男性だったからってことで話が終わってたんです。
でももしかしたら、みーちゃんの前職がプログラマーだったことも関係していたのかって
今思いました。」ダンサン
「となると、計算機の扱うデータ量が膨大になりすぎて
オペレーターがシステムを監視しきれなくなって、
そのシステムを採用した企業が解散しなければ、バグの解消ができなくなった事例や
計算機が行う演算処理の速度を上げるために、
膨大な計算機を連結しただけでなく
その連結した計算機群を監視・調整するためのシステムプログラムの自動化処理まで組み込んだせいで、
人間が システムダウンできなくなって滅んだ文明の二の舞にならないように
最初から ダンジョンが行う自律的プログラムの調整機能には、厳しく制限を加え、
プログラムの稼働時間を断続化することにより、
人間(=マスター)の介入権(プログラムの修正・廃棄)を確保し続けなければならないわねぇ」
「みーちゃんさんは、過去のコンピューターの暴走、システムの崩壊は、
計算機を連続使用しつづけたことと、
人間が把握しきれない量のデータおよび演算処理を一つの計算機群として関連付けてしてしまったことあると考えているのですか?」ダンサン
「当然でしょ。
人間が 休息を必要とする存在(生物)である以上
システムの維持要員(人間)には 常に 交代=業務の引継ぎが必要であり
その交代時間を利用して、システム運営時におきたできごとを多様な視点(=個性の異なる複数の人間)により再検討したり、
微調整・定められた許容範囲内での試行錯誤(管理規定内での個人の自由裁量)することにより、安定した社会活動・制度を構築してきたのだもの。
なのに「24時間365日稼働し続けることができるのが、計算機の利点だ
AIの強みだ」なんて寝言を言って、
もはや 人間の頭脳では 把握できないほどの膨大な量のデータを アルゴリズムに従って処理させ続けたら、
微細な不具合が修正されることなく、ルーチン化した処理の繰り返し、ひずみが増大したり、
所詮は プログラムの自動生成といっても、元となるコマンドは単純な形式化されたアルゴリズムの組み合わせだから、
プログラムの自動修復機能なんて いかれ頭の暴走と全く変わりない形で、AIが暴走するだけの結果になるのよ。
そして 人間社会のシステム管理を 計算機にやらせているから、
そしてシステム全体が休みなく稼働するようにという設計だけは 最初に組み込んでいるから、
機械の電源を1個2個引っこ抜いてもまにあわず
人間社会全体がシステムダウンするまでAI制御下のインフラが勝手に稼働し続けて
とうとう資源は枯渇し、
大地における生物の自然発生が不可能となり多くの生命種が絶滅、
人類の文明が文字通り崩壊して
かつてそこに存在していた人間集団も自滅したと、
それだけのことじゃない?」
「だからこそ ダンジョンの暴走時に備えて、大陸一つを まるまるダンジョン開発の実験場にしたんでしょ?
人間達は 自分達の生活の場を すべて計算機の制御下におくことによって、
文明をいくつか失ってしまった反省から」
ミーちゃんの言葉を聞いたダンサンは、
「いやいや それは 論理の飛躍というもので・・・
計算機に制御させる範囲は、最小の範囲にとどめねばならず
コンピューター同士を複合的に連結させてはいけないというAI制御法と
ダンジョンの種の取り扱いについての規定は関係なかったはず。
というか 私は今まで そう思ってましたが・・
言われてみれば 確かにそうかもしれません。
かつての AI暴走による文明崩壊の歴史と
ダンジョン暴走とのメカニズムに、共通のパターンがあったとすると・・
この件、さっそくダンジョン管理部に持ち帰って 検討してみます」
ダンサンは あわただしく、ダン菅に連絡を入れた。
❀ ❀ ❀
ダンジョンが、エリアごとに与えられた機能を独自に開発し始めた結果
ダンジョンスタッフを務めるダンジョン生物たちに、「個性」といえるほどの ランダムな変化が生じた。
その様相については いずれまた報告したいと思う。 (ミーちゃんメモより)




