第3話 覚悟
通信用の魔法石を取り出すと、そこに軽く魔力を流す。
そして、特定の人物をイメージすることで通信を開始することができる。
この魔法石には通信相手を50人まで登録することができる。
これには高度な魔法技術は必要無い。
魔力の適正があれば、誰でも使うことが出来るのだ。
科学にも似たような技術が存在するが、あれは国境を越えて通信をするのはまだ、研究段階だったはずだ。
しかし、この魔法石なら世界中どこに居る相手とも通信することができる。
ラウスが通信を入れると、すぐに通話が承認された。
「ひさしぶり。夜遅くにごめんね。今、大丈夫?」
『ラウスさん、ご無沙汰しております。もちろんです。ラウスさんの為ならいくらでも時間を割きますわ」
魔法石から美しい女性の声が聞こえてくる。
「ありがとう。アーナ、近々俺もそっちに行くと思う」
『え、ラウスさんが我がメイルス王国に!?』
その声は弾んでいるように聞こえた。
今、ラウスが通信をしているのは隣国、メイルス王国の第一王女アーナ・メイルスだ。
ラウスはちょっとしたきっかけから、こうして王女様とも気軽に話せる関係になっている。
王族や貴族というのは普段から媚びられることが多く、信頼を寄せている相手には堅苦しい言葉遣いは嫌う傾向にあるようだ。
「ちょっと、こっちで色々あってな。詳しいことは長くなるから、会った時にでも話すよ。そっちに着く頃にまた連絡する」
『嬉しいです! 私もラウスさんとお会いできるのを楽しみにして居ますね! そうだ、迎えの使いを出しますわ!』
アーナはわざわざ迎えを寄越すという。
なぜ、一国の王女がここまでしてくれるのかは、後々分かることだろう。
「そこまでしなくてもいいのに」
『いえ、ラウスさんは私の恩人です。ラウスさんが居なかったら今頃、私はこの世には居なかったかもしれないのです! これくらいはさせてください!』
「そんな大袈裟な」
『大袈裟などではありません! 道中、お気をつけてくださいね』
「ありがとうな」
声が弾んでいる。
それに加えて、前に会った時よりも声が大人びたような気がする。
「夜遅くにすまなかったな。おやすみ」
『はい、おやすみなさい』
そう言って、ラウスは通話を終了する。
アーナと最後に会ったのは、もう4年ほど前になるだろうか。
そこから、連絡先を交換はしていたが、こちらから連絡することは無かった。
「会うのが今から楽しみだな」
ラウスは魔力で展開していたライトの魔力供給を切る。
暗闇の中、新天地の事、アーナと会えることを楽しみにして目を閉じた。
やがて、意識を手放したのであった。
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