第23話 救出
残る敵の数は2人である。
誘拐犯とラウスが対峙するその空間には緊張の糸が張り詰めている。
「貴様は一体、何者だ……」
主犯格の男が口にする。
「魔術講師だ」
ラウスはドスの効いた声で言い放つ。
「魔術師のくせに肉弾戦か」
「こんな狭い空間なら、魔術よりも効率的だぞ」
「おしゃべりしてる余裕なんてあるのか?」
主犯格の男がニヤリとした笑みを浮かべた。
「あるよ」
もう1人の男がラウスの後ろに回り込んでいるのは、索敵魔法で既に検知している。
「何!?」
後ろから、ラウスの左頬に向かって蹴りが飛んでくる。
しかし、それをラウスは男の足を掴んで受け止める。
そのまま、男を地面に叩きつけると踵落としをお見舞いした。
「うわ、痛そ……」
「王国式軍隊格闘術だと……」
「お、よく分かったね」
目の前に立っている主犯格の男は、ラウスが使った格闘術を瞬時に見抜いていた。
ラウスが使う格闘術は王国の軍隊が主に使うものである。
宮廷魔術師時代に、軍の大佐から教えてもらっていたのだ。
「あなたもやりますか?」
「俺はあいつらみたいには行かないぞ」
「さあ、どうでしょうか?」
そう言ってラウスは笑みを浮かべる。
男はナイフを抜いた。
そのナイフの先は真っ直ぐ、ラウスの顔に向けられる。
「確かに、あなたは他の2人とは違うようだ」
ナイフがラウスの頬をかする。
「今のを避けたか」
「おかげ様で。あなたに体術だけでは分が悪いようですね」
なにしろ、体格差が大きい。
細身のラウスに対して、筋骨隆々な男ではいくらラウスの体術が優れているとはいえ、厳しいものがある。
ラウスは右手に雷の魔法を纏う。
相手の攻撃を躱すと同時に雷系統の魔法をお見舞いする。
少し、ずるい気もするが、誘拐犯相手に手段を選んでやるようなお人好しではないつもりである。
雷系統の魔法に耐えられる訳もなく、主犯の男はその場で倒れて居た。
「無事か? 怪我とかしてないか?」
ラウスはロープで拘束されている生徒たちの拘束を解く。
「私たちは大丈夫です」
「それにしても、さすがですね。まさかこんなに早く見つけてもらえるとは思いませんでした」
「君たちの魔力の流れを覚えておいて良かったよ」
覚えてなかったら、救出までにもっと時間がかかったことだろう。
失踪してから48時間以上経つと生存してる可能性は一気に下がると言われている。
その前に救出できたのは幸いだった。
「「魔力の流れ??」」
2人は不思議そうな表情を浮かべて居た。
「そう、個人に流れている魔力ってのは誰1人として同じではないんだ」
「先生は、魔力が見れるんですか?」
「見れるってよりは感じるって言った方がいいかな。まあ、これは授業で喋るよ。ここを出るぞ」
ここに来る前に学長に連絡は入れて置いた。
ここに衛兵がもう少しで到着することだろう。
ラウスは生徒2人を連れて、廃墟から脱出したのであった。
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