第20話 模擬戦闘
午後の時間は実際に魔法での戦闘を訓練する。
座学だけでは魔術を磨くことは出来ない。
やはり、実際に魔術を使ってこそ上達するというものである。
「皆んな揃ったな」
校庭に生徒たちが集まる。
「じゃあ、実際に魔術を使っている所を見せて貰おうと思う。面倒だから全員一度に俺を攻撃してみてくれ」
ラウスの言葉に生徒たちは驚きの表情を浮かべる。
「あの、先生、いくら何でも10人以上を一度に相手をするのは無理では無いでしょうか?」
「君は、ボルンくんだね。でも、やってみなきゃ分からんだろう」
ラウスはニヤリとした笑みを浮かべる。
戦闘においてはラウスの得意分野である。
そう簡単に負ける訳にはいかない。
「よーし、全員で来い!」
「先生、その剣は何ですか?」
ラウスは右手に木刀を握っている。
「ただの木刀だ」
「そんな物、役に立つんですか?」
「気にするな。ちょっとしたハンデだ」
戦闘開始の合図と共に生徒たちが魔法の展開を始める。
『ファイアボール!』
火の玉が正面から3個ほど飛んでくる。
ラウスはそれを半歩移動するだけで攻撃を躱した。
「どうした? そんなんじゃ当たんないぞー! 本気で来い」
『エアーカッター』
今度は背後から風の刃が飛んでくる。
速度は申し分ないが、威力が弱い。
ラウスが手をかざすだけで、ラウスの魔力と相殺されてしまった。
「一気に来ないとダメだよ」
すると、今度は炎の渦と雷が同時に飛んでくる。
「うん、いい選択だ」
しかし、ラウスは避けようともしない。
炎の渦と雷にラウスは飲み込まれた。
「え……」
「先生……!?」
生徒たちからは心配の声が上がる。
「うん、まあまあだね」
炎の渦が収まった時に現れたのは、無傷のラウスである。
コートに付いた砂埃を払いながら、余裕の笑みを浮かべる。
「まだですよ!」
「そうだ! こっちには十人もいるんだ!」
ラウスの周りと炎の球が囲む。
「なるほど、これで避けられないようにしようということですか。60点ですね」
ラウスは握っている木刀に魔力を流す。
この木刀は魔力伝導が高いものである。
魔力を流した木刀は真剣にも劣らない。
魔力をまとっている分、真剣よりも遥かに強度が高いのである。
木刀でラウスは炎の球をぶった斬る。
ラウスの後ろで爆発音が響くが、当人は何の攻撃も受けてはいない。
「僕が何のために木刀を持っているかも考えましょうね」
「強すぎでしょ」
「何なのあれ……」
生徒たちはもう、息が上がっている。
「もう、終わりにしますか?」
おそらく、そろそろ魔力の限界も近いだろう。
これ以上無理することはない。
「これで、みなさんの癖や得意な魔法などが見えました。休憩を挟んで今度はそれを解説していきます」
魔術と言っても様々なジャンルがある。
水魔法が得意な者もいれば風魔法が得意な者もいる。
人間、誰しもが得手不得手があるものである。
その人の得意な魔法を伸ばしていくのが、一番なのである。
この模擬戦は生徒たちの適正を見るために行ったという訳である。




