第16話 学院長
ラウスは準備を整えると、王宮を後にする。
メイドによって魔術学院までの道を案内されることになっている。
「おはようございます。私が、ご案内致します」
「ありがとうございます。お願いします」
メイドの先導で王都の街を歩いて行く。
初めてみるメイルス王国の街並みは新鮮そのものであった。
昨日は馬車の中からチラッと見ただけだったので、改めて時間を作って王都を見てみたいものである。
「到着致しました。こちらが魔術学院です」
そこは、学校とは思えないほどに豪華な建物であった。
さすがは国が総力を上げて作った学院である。
これを税金ではなく、国王が自費で建設したというのだから国民の支持も集まるのだろう。
ここでの講師陣は“宮廷魔術講師“と呼ばれる。
「参りましょう」
メイドは学院の中に入って行く。
そして、学院長室と書かれた部屋の前までたどり着く。
「では、私はここまでとなりますので、御武運を」
「ありがとうございました」
そう言って、案内してくれたメイドはその場を離れて行った。
ラウスは学院長室の扉をノックする。
「入ってくれ」
すぐに中から声が飛んできた。
「失礼します」
ラウスはゆっくりと扉を開ける。
「待っていたよ! 君がラウスくんだね! 陛下からの推薦で王女殿下がご執心というからどんな人物が来るのか楽しみにしていたんだ!」
学院長と書かれたプレートが机の上に乗っている。
この人がこの学院のトップなのだろう。
学院長は美しい女性である。
水色の髪を腰の位置まで伸ばし、黄色の瞳がとても美しい。
「ラウスと申します」
「まあ、そんなに固くならずに座りたまえ」
学院長はソファーに座るように促してくれる。
ラウスは学院長が座ったことを確認すると、対面のソファーに腰を下ろした。
「まずは自己紹介といこうじゃないか。私がここの学院長のへレーネだ。よろしく」
そう言って、へレーネは右手を差し出した。
「国王陛下の推薦で参りました。よろしくお願い致します」
ラウスも右手を差し出すと、握手を交わした。
まあ、魔術師というのは一癖も二癖もあるような連中の集まりだ。
この学院長も相当な曲者なのであろう。
「いやあ、あの陛下が直接推薦するなんてねぇ」
「珍しいんですか」
「うん、陛下が直接推薦状を出したのはこの学院が出来てから君で2人目だ」
確か、この学院が創設されて7年が経つ。
それまでで、陛下が直接認めた人物がたったの2人とは、少なすぎるのではないか。
「まあ、陛下の基準は厳しいからな。もう1人は私ね」
「そうなんですね」
「期待してるからね! 頑張って!」
へレーネ学院長はラウスの肩をバシバシと叩く。
いや、力強いな。
「ご期待に添えるように頑張らせて頂きます」
「楽しみだよ! じゃあ、早速だけどこれがラウス先生に担当してもらうクラスだよ」
学院長は一冊の冊子を手渡してきた。
そこには1年Aクラスと書かれており、生徒の名簿が印刷されている。
「拝見します」
ラウスはその資料を一通り目を通して行く。
「新任の先生には一年生から担当してもらう規則なんだよね。本当はもっと上級クラスを見てもらいたいんだけど、こればっかりは私ではどうしようもなくてね」
「いえ、一年生からで大丈夫です。全力を尽くします」
「ほう、いい顔をしているな。これがうちの職員証と教員バッチだ」
へレーネ学院長がラウスの職員証とバッチを机の上に置いた。
「ありがとうございます」
ラウスはその二つを受け取ると、バッチはコートの襟に付け、職員証は内ポケットに仕舞った。
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