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第13話 王女が慕う訳

応接間には、ラウスとアーナのみが残されていた。


 これもべノン陛下の謎の気遣いかもしれない。

あの男は、ラウスをアーナの婿にすることまで一時期画策していた。

それは、今も諦めてはいないのではないだろうか。


「にしても、随分と大人っぽくなったな」


 3年前に比べたら、アーナはだいぶ成長していた。

これでは求婚が絶えないことだろう。


 陛下は以前、そのことでぼやいていた。


 べノン陛下と王妃の間には息子が居ない。

アーナと身内を政略結婚させ、この国の政権を握ろうとする者が後を絶えないらしい。


「ありがとうございます。ラウスさんはあまり変わりませんね」

「これでも、歳は取ったぞ」


 ラウスは今年で21歳になる。

この国は、確か16歳で成人だった。


 去年成人したばかりのアーナとは違い、自分でも老いは感じることはある。

その代表格は徹夜がしんどくなった。


「何言ってるんですか。ラウスさんもまだお若いですよ」

「ありがとう。にしても、もう三年になるのか」

「ええ、早いものですね」


 ラウスがここまで王女様の信用を勝ち取ったのにはちょっとした訳があった。


 あれは、ラール王国の魔術師協会の依頼でメイルス王国との国境沿いに位置する森に魔獣の討伐に行った時の話である。


 一台の馬車が魔獣に襲われていた。

たまたま、そこに居合わせたのがラウスだった。


 ラウスは見過ごすことはできず、魔獣どもを蹴散らしたのだ。

その馬車に乗っていたのが、アーナとべノン陛下だった。


 それから、二人にはとても感謝された。

しかし、ラウスはラール王国の所属だった為、その場を後にしようとした。

それでも、アーナからは連絡先を交換して欲しいと懇願される。


 流石に王女の頼みは断れず、ラウスは連絡先を交換した。


 その縁がこうして繋がることができたので、捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもんだ。


「お互い色々あったみたいだな」

「そうですね。でも、またこうしてラウスさんとお話できているのは嬉しいです」


 アーナはハーフアップにした銀髪を揺らした。

ふわりと甘い女の子らしい香りが鼻腔に触れる。


 そこから、ラウスとアーナは小一時間は話し込んだ。

お互いに積もる話があった。


 気づけば、茜色の空は暗闇へと変化していた。


「ラウスさん、お食事にしませんか?」

「ああ、頂こうかな」


 そういえば、お腹も空いていた。

ラウスはアーナの案内によって、リビングまで移動した。


「おう、来たか」


 そこには陛下ともう一人の女性の姿があった。


「紹介しよう。私の妻のセシリアだ」


 陛下の隣に座っていたのは王妃様らしい。

ラウスは初めてお目にかかる方だ。


「主人と娘がお世話になりました。セシリアと申します」


 王妃様は優しい声でそう言った。


「ラウスと申します。こちらこそ、陛下や王女にはよくしていただいて」


 ラウスは王妃様と挨拶を交わした。


「ほら、ラウスくんも座りなさい。アーナの隣がいいだろう」


 ラウスの席はアーナの隣に用意されていた。

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