出会い
……………
………………
「……んッ…」
目が覚めた。
「……痛てて…あれ?なんで身体が痛いんだ?」
記憶が曖昧だ。とりあえず、周りを確認する。
「…⁉︎な、なんだこれ?」
丸い半円状の窪みの中にいた。俗に言うクレーターみたいな所に裸で……
「ハッ!そ、そうだ。お、俺は……魔法に失敗して……か、母さんは?」
額に嫌な汗が流れる。
……まさか…俺が……
「う、ゔぁァァァァアアアァ」
………その日は声が枯れるまで泣き続けた。
北の極地
「!!……西の方か…見に行ってみるか。」
彼は口元に笑みを隠しつつ南に飛びたった。
「ま、魔王様そっちは南っていうんですよ!!」
飛び立った魔王と呼ばれた者の口元には、笑みが消えていた。代わりに、頬が赤くなっていたような…なっていないような……
翌日
ジークは昨日のクレーターの中心から動けずにいた。なにもやる気が起きず思考する事を放棄していた。時間だけが流れて行く。
それから三日……
ジークは痩せこけ、力なく横たわっていた。このまま死んでも構わない。そう思っていた。かつて、神の前では生きたくてしょうがなかった彼だが、今では死を願っていた。
ただ早く死なせてくれと願いながら時は流れ、爆発から九日目に衰弱して彼は三度目の死を迎えた。
…………ガサッ…
「う…うぅん……はっ!し、死んでないのか?」
ジークは再生した。
「な、なんで死なないんだよぉぉぉ。クソがぁ!」
その時、ジークはふと思い出す。
「ま、まさかガチャで出たreplayのスキルか?リプライ……再生…俺は死ねなくなったのか?いや、そう考えるのは早計か。ただ、その今蘇ったのは事実だよな……」
スキルの事を考えていると、少し罪の意識が薄れていた。
「…ぃ!…い!おい!」
ビクッ!
考え事をして、人がいる事に気付かなかった。後ろを振り返ると、蝙蝠のような翼を生やした黒髪長身の男が立っていた。
「やっと気付いたか…貴様はここで何をしておる?」
「え?えーと…分かりません…何もしていないのかもしれません。」
「……??…では、このクレーターは何か分かるか?」
「こ…これは、……俺がやりました。」
そう、俺がやったのだ。俺が家族や家、村を消し去ったのだ。殺ってしまったんだ…
人に話す事で自分の行いを改めて理解した。
「そうか…では、小さき人間よ我と共に来い!」
「…? いや、俺は死にたいんだ。そ、そうだ!俺を殺してくれませんか?」
「フハハハハ!そうか!貴様も死にたいのだな?ならば尚更来い!我は魔王サタン。我と共に来ればいつか死ぬだろう。貴様名はあるか?」
「俺はジークです。本当は今殺して欲しいんですけどぉ……」
「そうか。ジークか。ジークよどうせすぐ死ぬ事になるゆえ黙って来い!!」
背筋が冷たくなるような感覚を覚えた。これが殺気か。殺してくれるならいいか…
「わ、分かりました。着いて行きます。」
「それでよい。城に転移するゆえ掴まれ。」
「はい。」
自称魔王の手を握った瞬間光りに包まれた。
こうして、死にたがりの人間と魔王は出会ったのであった。