青の悲劇
翌日、今日からは魔法を極める。
これからの人生の目標は、酒池肉林!!
魔法を極めて賢者になり、綺麗なお嫁さんを囲って、子供をたくさん作って、大豪邸に住みたい。
前世の俺丸出しの欲望の為に頑張るのだ。
「さーて、どの系統からやっていこうかなぁー」
「あらあら、今日からさっそく練習するのね。お母さんも後で見に行くからお庭で練習するのよ。」
「はーい」
庭に出て、腕を捲り準備を整える。
昨日は風系統だったし、今日は外だし火でもやってみようかな。
そうだなー
まずは、リトルファイアでいいか。
「リトルファイア」
手の先に魔力が集まっていく感覚を覚える。
ボウッ!
「おっ!やった!」
拳ほどの大きさの火が手の上に乗っている。
不思議と熱くはないみたいだ。
目の前の地面に飛ぶように念じてみる。
「あれ?飛ばないなぁ」
火は徐々に小さくなり消えた。
発動のタイミングでイメージしてないと駄目なのかな?
「リトルファイア」
ボウッ!
しかし、飛ばない。
魔力の問題か?少し多めに込めてみよう。
「リトルファイア!」
ボボウッ!
違う!火力が少し上がっただけだった。
呪文が駄目なのか?
「○ラゾーマ!」
発動しなかった。
……ただ変な呪文言ってる痛い人みたいになっている。まぁ、まだ始めたばかりだし続けていこう。
その日リトルファイアは飛ぶ事はなかった。
翌日。
「呪文さえあってれば発動する事は分かったから、今日はイメージを膨らませてみるか…」
そう前世では、妄想やら空想はお手の物だった。
大人のおかずだけどな。
イメージ……イメージ……
身体の芯から肩へ、肩から腕、腕から手の平へ。魔力の流れをイメージする。
そして、手の平に来た魔力を溜める。どんどん溜めてはち切れそうになったタイミングで、か○はめ波を打つ!その掛け声で呪文を唱える。
「リ〜ト〜ル〜ファイアァァーー」
思わずか○はめ波風に言ってしまった。
ドバァーーン!
せ、成功だ!
溜めすぎたせいか直径一メートルくらいのリトルファイアになってはいたが、飛んで地面を抉った。
「す、すげぇ!これ極めたら世界取れるんじゃないか?」
前世での有名なアスリートもこういう気持ちで言ったのであろう
「なんも言えねぇ」
まぁ、言ってるんだけどな!
よ、よし!今の成功を忘れないうちにもう一度やっておこう。今度は炎の温度を変えれないか、検証しながらにしよう。
まずは、目を瞑りイメージ……
確か炎って赤より青の方が熱いんだよな?
夜空に輝く星も、赤い光りを放つ星よりも青く光っている方が温度が高かったはずだ。
まずは、拳くらいのリトルファイアをイメージする。次にそれを徐々に太陽に見立てていく。そして青の太陽をイメージしてみる…………
………チリッ…
「え?」
なにか異変を感じ目を開ける。
詠唱に入る前にも関わらず、すでに手のひらの先に青の太陽が出来ていた。
「!? や、やばい!」
最初青の太陽は拳程の大きさだったが、ジークの魔力吸い続けどんどん膨れ上がっていく。
リトルファイアは熱さを感じなかったが、この青の太陽は尋常じゃないくらい熱い。既に手の感覚は麻痺してきている。空気も乾き、口の中、目、肌、身体中から水分が失われていくようだ。
「ジーちゃん?……!ジークッ!」
母が駆け寄って来るのが視界の端に見えた。
「か、母さん、来ちゃ駄目だッ!!」
「ジィィィーク!!」
母が、庭が、家が、そして自分自身も青く塗りつぶされた。