始まり
死の淵にふと考えた。
今までの人生何を成し遂げたのか。
ここまで普通に生きてきた。
普通に学校に行き、普通に就職、そして普通に結婚?
いや、結婚は出来なかった!!
まだ、アラサーだからしょうがない。
モテなかった訳ではない。ただ縁がなかったのだ。
「脈拍、・・弱まってます。」
「このままじゃ・・」
そして今、何故か救急車で運ばれている。
記憶が曖昧だ。
ただ、目が開かない。頭が徐々に白に塗りつぶされていく。これが死ぬということなのかと考え、そしてそれすらも白く・・・
「ここは・・」
真っ白な空間にいた。
「これが天国・・・?」
いや、俺は無神論者だ。
天国や地獄なんてない。死ねば無になるはず。
この白い空間が無なのか?
そもそも死ねば、思考することすら出来ないはず。
「やあ!」
ビクッ!!
周りを見ても、白一色。
「誰かいる・・のか?」
「目の前にいるじゃないか・・あぁ、君には魔力がなかったね。」
「魔力?」
何度目を凝らしても見えない。
「まぁ、見えなくても問題はないからいいか。君にはチャンスを与えにきたんだよ。」
「フッ、俺はチャンスや緑保留は信じてない。」
「??・・・何のことを言っているんだい?まぁ、いいや。君にはこれから転生してもらいます!」
転生・・・!イタイ創作小説の定番異世界か!!
ついに俺にも巡ってきたか!
千載一遇のチャンス!
まだ生きれるのか。
「あのー、異世界に転生という事でよろしいでしょうか?」
「おっ!君は察しがいいね!その通り、異世界に転生してもらいまぁーす!」
キタッ!
俺はガッツポーズ決めた。
しかし、ガッツポーズは白に塗り潰されて見えなかった。
「まぁ、このガチャで当たりを引けたらだけどね。」
「え?ガチャ?」
気が付けば目の前に、小学生の時お世話になったガチャガチャがあるような気がする。
白くてモヤモヤの中ほんのり見える…
「チャンスは3回!当たりには、君の転生する時のスキルが書いてあるよ。ハズレには何も書いてないからね。」
「・・ハズレを3回引けばどうなるんですか?」
「その場合は、輪廻の輪に戻ってもらおうかな。」
「つまり俺は本当に終わるってことですか?」
「そうなるね。まぁ、それが通常なんだけどね。」
どれくらいの確率なんだ・・・
そもそも何でこんなチャンスをくれるんだ?
クソッ!
上げて下げやがって・・いける気がしない。
結局は死ぬんだ。もう失うものはない。こうなりゃヤケクソだ。やってやる!
「さぁ、一回目引いちゃってよ!」
ドクン・・ドクン・・・
「・・・いっけええぇぇ!」
手首が千切れるほど右に回した。
半回転くらいで、さすがに持ち直してもう半回転回した。
コロン・・・!
真っ黒なカプセル!
パカっ・・・
・・・中には何も書いてない紙が入っていた。
「・・・」
「・・・これはハズレだね。」
「まだ、・・まだ二回ありますよね!」
「うん。まだまだこれからさ!」
後二回回せば決まる。
生か死か。気付けば手が震えている。
白くて分からないけど、感覚的に分かる。
・・・やるしかない。こういう時は単調な思考に陥りやすい。だが、やるしかない!!
「た、頼む!」
ギリギリ、ギリ、ギリギリ!
コロンッ!
くっ!また、黒だ!
パカッ・・
「はーい。ハズレー!やっぱり君には無理かなー」
「・・・クソッ!大体何分の一で当たりなんだよ!!」
「8192分の1」
「あなたが神か!じゃなくて、そんなの無理だろ!」
「でも、君が生きたいのなら引くしかないよね?」
どうしたらいいんだ。普通にやったら終わる。つまり死ぬ。もうやるしかない。ぶっ壊す!!
「さぁ、最後のチャンスだよ!」
先程までの震えは止まっていた。
一周回って心の芯まで冷えていた。
ぶっ壊す!ぶっ壊す!ブッッ壊す!!
「・・・」
ギリッ、ギッ、ガリッ、ガリガリガリガリッ!!
俺は冷徹な眼差しで全力で回した。左に!!
「こ、壊れちゃうぅぅー!」
途中変な声が聞こえたが回しきった。
・・ゴロン
金のカプセルッ!!
少し重いようにも感じる!
「こ、これは当たりだろぉ!」
「さぁ?開けてみなよ!」
・・パカッ
(replay)
・・・紙にはそう書かれていた。
「えーと、これはどういうスキルなんですか?」
「それは自分で確かめてよ!」
「ということは、俺は転生出来るって事ですよねッ!」
「そうだよ。君は裏技・・真の攻略法で勝ち取ったのさ!」
・・やった!やったんだ!これで俺はまた生き直せる!!
「あ、あれ?」
白の空間が黒に塗り潰されていく。
「これってもう転生しちゃいます?余韻とか、聞きたいことがあるんですけどー!」
「説明は不用さ!自分で見て感じて理解するのが一番さ。」
「ちょ、ちょっと待ってぇぇー」
白は完全に黒に塗り潰された。