71話 引っ越し
屋敷に戻り神様のブレイクについて色々と調べる事にしたが、書物などからは一切の情報を得ることが出来なかった。
あと数年でまた世界が破滅すると思うと努力する意味はあるのだろうか?そんな事を考えるが、周りの皆が商売に勤しんでいる姿を見ると何とかしてやりたいと思う。
やっと金策が上手くいって余裕のある暮らしが出来そうだ。商売繁盛までさせてこのまま終わるのは気分が悪い。
コナさんに至っては、
「自由に使える金がこんなにあるのは気分が良いな!!好きなだけ研究に没頭出来るなんて至高の極みだ!!」
後先考える事なく金を使う。多分必要の無い物まで衝動買いしていると思われる程物が増えている。
貧乏人が金を得ると正常な判断が鈍るのは本当らしい。
「お二方とも少しよろしいでしょうか?」
いつの間にかザンが後ろにいた。その表情は少し険しく見える
「屋敷の裏に怪しげな洞窟がーー」
その発言に背筋が凍る。前の世界でも同じ事が起こり、それを調査していた途中で世界が崩壊した。
急いで俺は洞窟に向かった。
地面は盛り上がり、突如現れました感が満載だ。周囲を見渡すと地形が変わっている。
洞窟の中は真っ暗で少し不穏な気配を感じる。
「行かれますか?」
「行きたくは無いけど行かざるを得ない状況だよな。このまま放置して問題が起こらない筈がないし•••」
前の世界で調査した時は洞窟内に大した敵ではなかった。今回も同じ感じだろうと思い単身で乗り込む。
何分歩いただろうか?どこまで続いているか不安になる程長い下り坂。
数時間下り何処かで見た様な扉に辿り着く。ここまで獣関係は一切現れていないのが少し不安だが、気を引き締めて扉を開ける。
「何だ?もう訪ねてきたか」
そこには何故かハディが座っていた。
「・・・何してる?」
「引っ越しだ!」
紛らわしい事をされて少しイラついたがハディにも引っ越さなきゃならない理由があったのだろう。
「これでハクに何かあればすぐ駆けつけることができるな。友は近くに居てそのあれだ•••親友になることが出来る!」
色々と勘違いをしている。
「そう言えばあの後ゼスがまた来たな」
「何か言っていたか?」
「2つの世界を合わせてみるのも面白いかもとか言っていたが、何のことだかさっぱりだ」
確かに意味が分からない。文明が微妙にズレている世界を混ぜたら普通の内戦じゃ済まないだろう。
「変な事される前に世界を支配して•••」
「どうした?ハクなら出来ると思うぞ?」
「いや、そうじゃなくて」
自分で世界を支配するって言うと物凄く恥ずかしい事に気づいた。
「単純に我とケルがハクの手下になって地上の人間を支配すれば良いのでは無いか?」
「それって俺じゃなくてハディが支配することになるんじゃないか?ゼスの言い方だと多分俺自身が何らかの形で支配する事に意味があると思うんだが」
2人して考えても答えが一向に出ない。正直、正解があるのかと思うことの方が多い。
話し合って数時間。
「誰だ!?」
唐突にハディは声を張った。振り返るとそこにはザンとコナさんが立っていた。
「帰りが遅かったので追いかけて来たのですがーー」
目の前のハディを見て言葉を失うザン。無理も無い。サイズもアレだし威圧感もある。
「でっかいのぉ〜。これは召喚魔法的なアレでハクが呼び出したのか?なんて名だ?」
「我はハディだ。召喚されたのではなく引っ越して来たのだ」
「お隣さん的な感じじゃな。ザンの予言していたていた脅威とは少し違う気がするがヌシもまぁまぁだな」
何故かコナさんは初見から驚く事なく普通に会話している。神を目の前にして肝が据わっている。
2人は俺の無事と洞窟に危険は無いと知ってその場を後にした。
「あの幼女と年寄りはハクの友達か?」
「友達ーーーじゃないけど一緒に暮らしてるよ。もぅ家族みたいな感じかな?」
「ほう。他の人間と比べても優秀な部類だが、両名は死期が近いな」
「いつ頃だ?」
死期=世界の破滅だろう。死期を知ることが出来ればそれまでに世界を支配すれば良い。
「んん〜•••15」
「15日!?急いで策を練らなきゃ間に合わないじゃ無いか!」
俺は急いで屋敷に戻り策を練る。いっその事スキルを創生して世界を支配する事も可能な筈だ。
しかしどんなスキルを創生すればいい?神を従えるスキルなら俺の言うことを聞いてくれるか?
もし、ダメだった時にいきなり世界破滅とかされるのも厄介だ。直接的じゃなく間接的に操る?
「ハク様!!」
悩み事ってやつは一つ抱えると次から次へと現れる。
「えっと、いつもの場所でみんなと特訓する予定だったんですけど、何時の間にかその場所に町ができていて、住人が多く、ここは何処だとか言われているんですけどどうしたら良いですか!?」
指南役のシルバは何かを必死に伝えようとしているが今が全く伝わってこなかった。
俺が理解していないのを察したのか
「すぐ来てください!」
考えがまとまることなく俺はシルバに連れられてその場所に向かった。




