7話 道中3ー魔法は最強で残酷ー
長めです。
「んん~」
「やっと起きたか!
昨日の夜なにがあった!?」
シャネがハイテンションで聞いてきた。
「ちょっと待ってくれ。
まだ体がダルいんだよ」
「そりゃそうだ!昨日のお前は魔力の枯渇でかなりやばかったんだからな!!」
「そうなん?」
「あんな状態の人は久しぶりにみたよ」
そんな酷かったのか?フワフワした感覚だったが戻ってからは記憶がない。
「魔力回復の薬を飲ませてあるから死ぬことはないけど、今日は大事をとってここにもう一泊だな」
「マジか。
俺は早くここを出た『駄目だ!』・・うぃ」
「アタシは薪を補充するからおとなしく寝てろよ」
「らじゃーです」
よく考えれば昨日はまともに寝れなかったし疲れがたまっていたんだろう。
今日は丸一日のんびりと過ごしますか。
では・・・
キャンプの準備しまぁぁす!!
ハンモックとお菓子と虫除けの線香が有れば大抵なんとかなる!!
せっかくの休みだ。満喫してやろう。
「なにやってんだ?」
おっと、早速ばれたか。
「お早いお帰りで何よりです。
薪は集まりましたか?」
「外にでるな。車に戻れ。寝てろ。」
「・・・さーせん」
車に押し込まれてしまった。まぁ良いだろう。ベッドで小説でも読みながら過ごしますか。
「まだ読んでない小説はぁっと・・・あった」
手にとり読もうとすると、
【本の内容は推理小説です】
【本の内容を魔法化し、理解します】
・・・なんてことだ。まさか旦那の和也さんに隠し子がいて、犯人は不倫相手の娘の友人の母親なのか。そこまでいくと完全に他人だな・・・
おおおおぉぉぉい!!!
本は粉々になり、丸々5日は楽しめたであろう内容は2秒で終わった。
やられた。制御できない魔法はこんなに残酷だったとは・・
粉々になった本をダイ○ンで吸引してベッドに戻る。
ストックしてある小説は全てこうなのか?
「おとなしく寝てるか?」
シャネが帰ってきた。
魔法の事を悔しながら話してみると、
「ちょっとまてよ。そんな魔法聞いたことないぞ」
「そうなのか?」
「当たり前だろ!本人の意思に関係なく発動して完結する魔法があってたまるか!
なにより危険すぎる!!」
「そんな事を言われましても・・・」
「今は周りに害のない魔法だけど、攻撃系の魔法だったらただの暴発じゃないか!」
ごもっともです。
「どうしたらよろしいですかね?」
「勝手に発動するなら本は読まないことだな。魔力も勝手に消費してるなんて不条理だ」
「ですね。ならカレーでも食べてゆっくり寝ますよ」
レトルトカレーを手に取ると、
【箱に記載されている内容は調理法です】
【箱の内容を魔法化し、理解します】
電子レンジの場合は箱から取り出さず、600Wで4分。
湯煎の場合は沸騰したお湯に3分温める。
切り口は熱いので火傷しないように注意っと。ん?
NOoooooo!!
「ヤバいヤバいヤバい!!」
どうやらこの魔法は文章があると勝手に発動してしまうらしい。
案の定、箱は粉々。周りは粉まみれ。
「シャネぇ(泣)」
「どうしようもないな。
諦めろ(笑)」
最悪だ。初めての魔法はタチが悪い。本日二度目のダイ○ンで吸引。
シャネは笑いを堪えている。
「どうすれば制御出来るようになるんだ?教えてくれ(泣)」
「そもそも制御できない魔法は習得出来ないんだが・・・
基本魔法は発動に条件があるはずだ。
ハクレイの場合は詠唱もなければ、魔力制御もないから解決のしようがないな」
なんとかして魔力制御を覚えなければ本を手にする事はできない。
粉々になってしまうし、その都度掃除は面倒くさい。
とりあえずカレーを食べてベッドに戻る。
・・・何もせず大人しく寝るのはなかなかつらい。
とにかく寝てさっさと森を抜けよう。
しかし、寝ようと思うと寝れない。明日のために寝なきゃ。
【ハイスリーパー獲得】
【睡眠の質を向上させます】
【万が一に備えて意識の一部を分離します】
・・・・・・
おいおい、なんか昨日から暴走していませんか?
意識の一部って思考があるってことは寝れないってことか?
それは寝不足になるので辞めていただきたい。
【なお、体の修復及び回復は横になり、まぶたを閉じた段階から自動で行われます】
実質寝なくてよいってことですか?
それはそれで便利だな。
なら無理矢理疲れさせたらどうなる?
これを期に体でも鍛えよう。この世界じゃ体が強くなきゃ生きていけそうもないし。
【フィジカル強化獲得】
【フィジカルにストレスを与えると強化します。】
おぉぉ!!
スキルの暴走か!?魔法が量産されていく。
なら、寝ながら腹筋をしてみるか。
【フィジカルのストレスを確認】
【身体能力向上】
【自動回復発動】
【フィジカルのストレスを確認】
【身体能力向上】
【自動回復発動】
【フィジカルのストレスを確認】
【身体能力向上】
【自動回復発動】・・・・・・
これは無限に鍛えられそうだ。
鍛えた感がないが良いだろう。
「よし、疲れるまでやってやるぜ!!」
ーー5時間後ーー
やべぇ。ぜんぜん疲れない。
一秒に一回計算でも18000回腹筋してるのに、筋肉痛も疲労もない。汗もでない。
15000回から身体能力向上もしなくなったが、
【フィジカルマスター獲得】
らしい。
もう限界は越えたのかな?
心なしか体が軽く感じるしかなり元気だ。腹筋もそろそろ飽きた。
森でサバイバルだ!!
「とおぉぉぉう!!」
「っっなんだ!?」
車から飛び出すとシャネがビックリしていた。
「ちょっくら森を探索してくるわ」
「休めって!そんなからだでっ・・一体何をした?」
腕をつかんだだけでマイフィジカルの強さを察したのか。
なかなかやるじゃないかシャネよ。
「今の俺は体が絶好調なんだよ。
寝ながら鍛えたからな」
「鍛えたからって・・・さっきとは別人みたいな体になってるぞ?」
鏡では変わった様子は無かったが、引き締まった感じはする。
まぁフィジカルマスターだからな。
「二時間もしたら帰ってくるからちょっと待っててくれ」
「おぉい!!ちょっと待てよ!!」
大声で叫ぶシャネを無視し俺は森に向かった。
走り出して変化を実感する。速度が圧倒的に早い。アルマにも余裕で追い付けそうだ。そして疲れない。
10分以上走っているのに息1つ乱れていない。
魔法やべぇな。オリンピック全種目優勝出来そうな気がする。
それにしてもユニークスキル魔法創世の発動ってかなりお粗末だな。
本人の妄想・・じゃなくてイメージというか願望的なのに反応して発動してように思える。
本を読みたいとか寝なきゃは願望だったから発動は理解できる。
でも速読術は望んではいないな・・・
んん~ポジティブにいこう!今は冒険だ!
ーー30分経過ーー
迷った。調子乗りすぎたかな?
辺りは暗く、木々に囲まれているから月明かりも地面を薄く照らす程度だ。
帰路を探していると古い家をみつけた。
「またかよぉ」
昨日の家より少しでかいか?家の周りは相変わらずの湿気なし。
中にはいると・・・お決まりの本棚です。
片っ端から手に取りますか。
あれ?またしてもみたことない字だ。
【本の内容は魔法書です】
【本の内容を魔法化し、理解します】
魔法書には詠唱省略法や魔力が枯渇する直前の症状が記されている。
アニメなら残りのMPなりHPが数字や横メーターで表示されているが、この世界はそこまで親切ではないらしい。減り具合を体で感じろということか。普通だな。
よし次だ。
【本の内容は医学入門書です】以下省略
おぉぉ!!内容はこの世界の生き物全ての構造が記載されていた。
この小屋は当たりだな。しかしこの世界は一体幾つの文字があるんだ?
一番最初にこの世界に来たときの文字は読めた。それ以降全く読めない。
全部統一してくれ。
【・・・・・・】
駄目か。はい次!
【本の内容は童話です】
遥か昔のお話です。伝説の英雄ルイスは全能の神ゼウスから魔法を授かる。
凄い話だ。英雄ルイスは普段は手ぶらだが、戦闘になると剣や魔物を召喚して敵を圧倒したらしい。
多分マジックボックスとか異空間収納とかだろう。アニメでみたことあるしな。
それでも英雄ルイスさん流石です。次!
そこから先は日記と魔法の研究だった。
かれこれ1時間ほど小屋にいる。もう読む本もないから帰るとするか。
それから1時間、車を目指して走りつづけた。
やっとの思いで車にたどり着くと、頬をパンパンにして椅子にふんぞり返っているシャネをみつけた。
「遅いぞ!何やってたんだよ!」
「ボロい家で読書してたんだよ。
英雄ルイスの冒険とかなかなか童話にしては内容が細かくて楽しかったよ。
「この森に家なんてないぞ?
森に建造物を建てると森林破壊だからな。森の管理人が激怒する」
「むむ!?
怒るもなにも昨日もボロい家で本を読んでたんだぞ?
そしたら文字理解と速読を獲たんだ。
今じゃ読書家なんて魔法もあるぐらいだ」
「読書家って魔法よりスキルじゃないのか?」
「知らん。
魔法とスキルの概念がよくわからん」
「そこら辺はロックアームに着いたらいろいろ教えてやるよ。
それより。お前は飯食って寝ろ!」
「えぇそうします。
ご心配お掛けして申し訳御座いません」
どこで狩ったこわからんが、焚き火で肉を焼いていた。
「凄い量だか、これは何の肉だ?」
「近くでたまたま出くわしたパーティーラビットってモンスターだ」
ラビットってウサギだよな。サイズ的に豚か仔牛かと思うぐらい巨大だ。
「余ったら薫製にするんだ。だから早く食って寝ろよ」
肉をたらふく食い、汗拭きシートで体を拭く。
「んっあれ?」
脂肪という名の浮き輪が無くなっているだと?
バキバキの腹筋にすべすべの肌。まぁフィジカルマスターですから。魔法やべぇな。
シャワーを浴びたいが今はこれで十分だ。
さっさと寝たいが、魔法の効果で一部の意識がハッキリしていて眠れない。
これから先、長い夜になりそうだ。