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67話 鉱物資源と冥府の王

 道中、俺はケルに何故このダンジョンに来たのか説明した。ルビーやサファイアなどの宝石類の採掘、興味本位のダンジョン探索。

 しかしケル曰く、ここはダンジョンでは無く地下帝国の入り口。ただの玄関に過ぎない。

 その主人である王が住む場所は結構遠い。三時間は歩いているだろう。振り返ると歩き疲れたルイスをクラスが抱き抱えていた。


「大丈夫か?」


「下着の事ですか?それなら問題ありません。多少汚れていましたが払いましたからもう綺麗です」


 下着の話を未だにひっぱるとは。


「ルイスだよ。重いだろうし俺が持つけど」


「ルイスちゃんは物ではありません!」


 よく見るとメイド服はボロボロで穴があいていたり焼けていたりと酷い有り様だ。

 よし!今度服でも買ってやろう!


「あれが入り口だ」


 目の前に現れた扉はまぁデカい!高さは25、いや30メートルはあるだろう。

 緊張感のある扉の前で迷刀がすぐ抜けるように手を添えて開門を待つ。


「王よ!面白い人間を連れてきました」


 ゴゴゴゴと音を立てゆっくりと扉が開く。

 

「さぁ行くぞ」


 奥の方に馬鹿でかい椅子がある。そこにちょこんと誰かが座っている。椅子のサイズからして俺と同じ位の身長の男?

 近付くとちょこんのサイズではなかった。巨人族より更にデカい鎧をまとった大男。仮面で顔は見えないが威圧感と存在感が半端ない。

 見上げすぎてほぼ首が垂直状態だ。


「ケルよ、その者は何だ?」


 低い声、そして絶対強者のオーラに圧倒される。


「この者が王に何かお願いがあるそうです」


「願いか。それ相応の対価を払えるか?」


 難しい。本来ならただ採掘するだけで体力があれば何とかなる。

 対価とは何を指すのか?

 返答に困り悩んでいると王から話を切り出してきた。


「とっ、友達になってくれれば別に対価はいらんぞ?」


「「は?」」


 予想外過ぎてクラスとハモってしまった。俺達の反応を見てケルは呆れながら王に話しかける。


「客人が困っているじゃないですか!」


「いやいやいやいやっ、無理にとは言ってない!その、アレだ!うん!嫌なら別に•••」


 数秒前までの威圧感などは完全に吹き飛んでいる。急に頼らなくなったが、友達になれば宝石採掘し放題は魅力的だ。

 

「友達ってのは何か契約があるんですか?」


「それじゃ従者じゃないか!友達は友達!人間は契約など無くても信頼を得ることが出来ると聞いたぞ!?」


 友達を連呼されるとは何とも言えない恥ずかしさがある。しかし友達って対等な立場こそ成立する話であって、一般人と地下帝国の王が対等などあり得ない。


「友達としてお願いします」


 俺のより先にクラスは答えた。状況的に王がクラスにフラれた感じになってしまった。これはまずい•••


「そうか!?よし!」


 ガッツポーズをして喜ぶ王を見て少し笑えた。見た目はイカつくて圧があるがきっと良い奴だ。


「ならば自己紹介が必要だな?我が名はハーディ。皆は冥府の王とか鉱物資源の守護神として知れ渡っている」


 冥府ってヤベェ神様だよな?奥さんを地割れで連れ去った的な奴がギリシャ神話であった気がする。


「ハクです」

「クラスです」

「ルイスでぇす」


 ルイスのやる気の無い返事に少し肝を冷やしたが


「覚えたぞ!して頼みとは?」


 気にして無い事に一安心した。


「宝石類の採掘をしたいのですが」


「友達に敬語はいらん!」


 •••めんどくせぇ。


「宝石類の採掘させてくれ」


「良いぞ!どんどん掘ってくれ!毎日掘りに来ても良いぞ?」


 ノリノリだ。


「それは素晴らしい!」


 クラスもなぜか煽る。


「だろ?王は心が広いんだ!」


 無愛想のクラスが間の手を入れるのも珍しいが、それに簡単に乗ってしまうハーディは恐ろしい程チョロい。飲み屋なら一瞬でヤられるタイプだ。


「俺達は嬉しいがそれでハーディは良いのか?壁が穴だらけになるぞ?」


「その点は問題ない。嫁のペルは当分帰ってこないからその間に埋めれば良い」


 ハーディでペルでケル。完全にギリシャ神話に出て来る名前とほぼ一致する存在だ。この調子だとカオスとかゼウスが出て来る可能性がある。

 神様と仲良くすることは後々プラス要素になるが、下手すると神の逆鱗に触れかねない。

 毎日出入りしていれば多少は交友関係も良くなるがどうしたものか。


「ハク様、そろそろ宝石類の採掘に向かいましょう。

 時間的にもう余裕はありません」


 本来の目的を忘れかけていた。俺達は急いで採掘に取り掛かる。


「人間はこの様な石を欲しがるのか?」


 ハーディは興味津々で俺達の作業を眺めているが、


「この石になんの価値がある?」


 ウザイ。作業開始からまだ30分も経っていないのに横からの質問がハンパない。

 

「そろそろ休憩の時間じゃないか?」


 かまって欲しいのは理解した。しかしその都度、反応していたら作業効率が悪すぎる。


「クラスとルイスはハーディの相手をしてくれ。俺はこのまま掘り続ける」

 

 今は兎にも角にも効率重視!それから多分1時間は掘り続けた。

 

「何も無い」


 絶望の余りボソッと一言出てしまう。コレだけ掘って一欠片も出てこないのは辛い。流石に戻らないと時間的にも厳しい。

 苦労の割に全く成果無しは痛いがハーディの元に一旦戻る。


 キャッキャとお茶をしながら話が盛り上がっている様子を見て少し腹が立ったがそこはいい。それより


「ハーディ、考えたくは無いがこの場所って宝石類出ないの?」


 恐る恐る聞いてみた。


「宝石類か•••ここから出るなんて聞いた事ないな」


「•••そうか。時間もないしそろそろ帰るよ」


「もう帰るのか!?」


 俺の一言に相当驚いた様子のハーディ。宝石が欲しいだけでそれ以外は正直どうでも良いが、


「また遊びに来るよ」


 この社交辞令は大切だ。自分に利がなくても大事にするべき関係は存在する。

 ハーディは納得出来ない顔をしているが


「絶対だぞ!?」


 子犬を捨てる気持ちがどんなか知らないが少し可哀想になった。

 急いでハーディの自宅?を飛び出しコナさんの屋敷に向かう。

 

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