65話 出発
誤字脱字報告ありがとうございます。これからもバシバシお願いします。
魔法を教えて15日が過ぎた。
エムとケイはザンに任せているが他のメイド達は業務が終わり次第、時間の許す限り特訓している。
内容は中距離放出魔法。火を飛ばすか水を飛ばすかはその人の特性に任せている。
次の日の業務に支障を出さない為に限られた時間の中で如何に効率良く教えるかが重要なのだが、結果は微速前進程度。
時間は無いが焦る事は無い。何故かって?簡単だ。
クラス同様に専用の武器を作れば良いだけの話だ。
それでも多少の苦労をした方が良い。何かイレギュラーな出来事があっても臨機応変に対処出来るからだ。
経験と知識は武器になる。更に苦労すれば忘れる事もなく、苦労した分だけ自信を持って行動出来る。
俺は魔法創生というチートスキルで苦労してないので説得力は無いがどの世界もそこは同じだと思う。そして
「ハク様!出来ました!!」
遂に1人のメイドが完成まで辿り着いた。成果は30メートル先の岩に焦げた跡が残る程度だが魔法出力は慣れれば問題無い。
「完璧だ。今の感覚を忘れないうちに残りの時間も反復練習してくれ」
「了解です!」
初の成功者の名はシルバ。男っぽい名前で結構フランクな性格をしている。
ショートボブの黒髪が似合っているが稀に寝癖が残ったまま仕事をこなしているチャーミングな女の子だ。20前半位の歳だが頭の回転が早くしっかり者で業務中のサボり方が上手い。
結構サバサバした性格だが手先も器用で細かい所まで気を回す余裕がある。
こういう子は効率的に感覚を掴むのがとても上手い。
その後も出力が段々と上がって攻撃と呼べる程度にはなった。
「シルバは明日からみんなの指導に当たってくれ」
「ラジャ!!」
狙い通り完璧なプランだ。これなら明日から最終日までシルバが指導員になる事で違う教え方でコツを掴む者が現れるだろう。
そうなればまた指導員が増え、効率良く回すことが出来る。
「何とか間に合いそうか?」
いつの間にか俺の背後に立っていたコナさん。ちょくちょく覗いているのは分かっていたが1人が上手く出来たから安心して顔を出したのだろう。
「心配掛けました。でもこのペースなら間に合いますね。
俺は明日から宝石関係を探しに洞窟を探して来ます。良さそうな洞窟が見つかれば採掘に行こうと思いますが問題無いですよね?」
「ダンジョンの事か?それなら屋敷の裏に閉ざされたダンジョンがあるぞ」
素晴らしい。それなら三日程潜ってソロキャンしながらゆっくり過ごさそうだ。
「今サボる算段してなかったか?」
「サボる!?何で俺がそんなことを?
ここまでコナさんに尽くしているのに!?魔力を込めるだけで魔法を放つことが出来る素敵な道具を作るために、1人で危ないダンジョンへ挑もうとしているのですよ!?」
「いやいや、そもそも1人は危険だからダメだよ。ダンジョンにソロで挑む馬鹿は聞いたことがない。
そうだな・・・最低でも4人は必要だ」
「そんな危ない所に4人も行かせて帰ってこなかったらどうするんですか!?
3人が負傷して帰れなかったら大切な人材が減るんですよ!?」
「・・・大声出すなんてらしくないな。やっぱサボる気」
「それは無い!!」
「よく考えろよ?1人と4人じゃ危険が迫った時助け合えるんだぞ?
生還率が高いのはどう考えても1人より4人だろ?」
こんな感じに一悶着があったのだが何とか1人でダンジョンに行けることになった。
ーーー翌日ーーー
シルバに業務後の指導は頼んだし、何かあってもザンがいる。コナさんにダンジョンの場所も聞いた。
出発!!
「ルイスちゃん!!嬉しいのは分かりますが勝手に何処か行かないでくださいね!」
「ハクとクラスとお出かけなんて久しぶりだね」
何事も思い通りにはいかない。
仲良く?3人でダンジョンを目指し突き進むが、
「ハク様!ルイスちゃんが!!」
「どした!?」
「お腹すいたぁ」
「•••昼食にするか」
こんなやり取りがあるから1人でのんびり行きたかった。
コナさんの言っていた屋敷の裏にある洞窟のダンジョンの入り口。
着いたのは昼食から半日経った頃だった。
屋敷の裏って表現はすぐそこかと思っていたが遠すぎだろ。
ダンジョンの入り口は赤錆だらけでデカい錠が掛かっている。
「参ったな。鍵が掛かってるなんて聞いてないぞ」
引き返すにも距離がある。
ーードンーー
「開きました」
「鍵持ってたの?」
「破壊しただけです」
「•••そうか」
何はともあれ錠は外れた。錆びているが重厚そうな扉を開けると中は真っ暗だ。マジックポーチからライトを2つ取り出し奥に進む。
1時間程進むと少し開けた場所に出た。
キャンピングカーを取り出し作成会議を始める。
「取り敢えず中に入ったは良いが周囲に何の反応も無い。襲われる事は無さそうだから此処で一眠りしてから探索を始める。
何か質問はあるか?」
「ルイスちゃんと一緒に寝るのは私です」
「ご自由にどうぞ。無いなら全員起き次第出発だ」
車の中の時計は20時過ぎになっている。そのまま眠るにはまだ早い。
こんな時は魔法創生で何か新しい魔法でも作るのが1番効率的なのだが•••
「全く何も思いつかない」
ぶっちゃけ万物操作を獲得してからこの能力が最強だと気付いてしまった。飛んでくる攻撃は軌道をすことが出来る。相手の心臓すら止めることが可能だ。
これから何が必要か考えていると目の前で寝ているルイスの姿をみて思い付いた事がある。
コイツが人の姿になれば色々と都合が良いんじゃないか?
そもそも魔力量的にも優秀な魔物を人間の姿すれば最強じゃないか。
何故今まで誰もやってこなかったのか?
色々な事を考えた。
魔法のイメージが少し難しいが試す価値はある。
明日になったらクラスとルイスに相談するとして今は一先ず眠る事にした。
翌朝、考えついた事を2人に伝えるとルイスの反応は予想通り
「いいよぉ〜」
何とも言えない気の抜けた様な返事だった。予想外なのはクラスの反応だ。
明らかに顔が渋っている。基本が無表情なだけな小さな顔の変化が他の人より分かりやすい。
「クラスは反対か?」
「反対ではないのですが•••一言申し上げるとしたら、自分の意見をここまでハッキリと、明確なビジョンを持って言える事が出来るのは素晴らしいと思います」
遠回しに何かを伝えようとしているのかもしれないが俺には理解出来なかった。
「そうじゃなくて不満があるなら言ってくれ」
別に詰めている訳じゃないが、クラスは少し考えた顔をした。その珍しい表現に俺は驚いた。
「自分勝手?いや、自己中心的?んん〜」
相当酷い奴って事らしい。
「この事はザン様にも相談した方がよろしいかと思います。あの方は神のお告げを聞く事が出来る天啓という少し変わった能力をお持ちなので」
知らなかった。
「ならこの話は持ち帰るとして先に進むか」
それから約2時間程進んだが、一体どこまで続くのか分からないこのダンジョン。詳細な情報は一切無いのがかなりネックだ。
一本道なのでただただ下は向かって歩く。他に道は無く、見渡しても同じ風景が続く。何かが変だ。
なんせ魔獣すら出てこないのだから。
「クラスさんクラスさん、確認なんですけどダンジョンって何階層にもなっている。
その道中で魔獣が襲ってくる。
階層ごとにボス的な強い奴が居るで合ってますよね?」
「そうなんですか?私はダンジョンに入った事がないのでその知識は持ち合わせていません」
あれ?ダンジョンって世界によって違うものなのか?より不安になった。
それから更に1時間程奥に進んだ所で身体に異変が起きる。
頭がクラクラして身体は重く、吐き気がする。
疲れが出たのか?いや、まだそんなに疲れる事はしていない。後ろを振り返るとクラスとルイスは普通に歩いている。
俺だけ?考えていると意識が段々遠のいてーーーー
そのまま気を失い倒れた。




