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61話 人の道

 俺がコナじいさんの家に世話になってから一週間が過ぎようとしていた。

 初日にぶっ放した炎弾で残念な姿になった森には国から調査隊が来ていたが、コナじいさんの魔法研究の成果だと報告したら喜んで帰って行った。

 誇らしげに語るじいさんの姿は結構笑えた。


 そして一緒に生活してじいさんの忙しさに驚いた。食事も摂らずトイレに行く事すら忘れる程研究熱心な姿は何処か逞しく見えた。


 何か一つに集中出来るのは羨ましいが生活と性格が真逆で少ししんどい。

 魔法以外に興味が無さ過ぎて普段の生活がかなり適当過ぎる。

 服はそのままで洗濯しないし、食器などの洗い物もしない。

 掃除もしないし使った物は完全に放置で俺の寝ている部屋以外全てが汚部屋状態だ。


 誰かを雇って家事を頼めば良いのに家の中に他人を入れる事に凄く抵抗があるらしい。俺も他人なのだがそこは良いのかと聞いたら


「さて、今日も張り切って魔法をぶっ放してくれるかな?」


 人の話を聞くことが出来ないらしい。ずっと炎弾を放っているが研究の成果は•••期待できそうに無い。

 

 そして一緒に過ごせば過ごすほど人が変わっていく気がする。

 わがままになったと言うか威厳が無くなってきた。

 実験が失敗すると


「あぁぁ!もぅなんでだよ!!意味分かんない!!」

 

 老人らしからぬ言葉を口にするようになった。

 極め付けは


「気分転換も兼ねて違う魔法でも研究してみます?」


「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」


 イヤイヤ期の突入だ。

 正直これはキツイ。この状態の老人が視界に入ると目を疑いたくなる。

 

「はぁ。そろそろ休みませんか?休む事も大事ですし、俺も休暇したいですよ」


「•••」


 俺の発言は気に食わないとガン無視される。

 研究者って変わり者が多いらしいが実際はワガママなだけだと気付いてしまった。


 それから炎弾だけを研究して更に一週間が過ぎた。

 いい加減諦めて欲しい気持ちがあるが居候にそんな事を言う権利は無い。

 家主に逆らわずひたすらに炎弾を放ち続ける。

 しかし


「後片付け頼む」


 その日は昼過ぎで実験が終わる。


「今日は早いですね。諦めましたか?」


「王都に呼ばれて面倒だか行かなきゃ周りがうるさいんでな。

 帰宅は2日後になるからそれまでのんびりくつろいでいてくれ」


 素晴らしい!最近は休みも無く常に気を張っていたから正直ヘトヘトだ。

 コナじいさんを全力で送り出した後急いで片付けを済ませる。


 久しぶりの自分だけの時間を得た。自分の家では無いが何も気にしなくて良いのは本当に素晴らしい。

 が、外出は控えるなきゃならない。この家で何をすれば良いか正直言ってわからない。

 むしろこの家は何部屋あるのかも知らない。

 •••やる事は決まった。この家の掃除&探索だ!


 取り敢えず片っ端から部屋に入る事にした。俺の知っている限りではロビーと研究室、俺が寝てる部屋以外に5つの扉がある。それなりの地位を持っている人らしいが家自体はそんなにデカくない。

 その中で2つはコナじいさんの寝室と書斎だと思う。

 

「失礼しまぁす」


 多分寝室であろう一つ目の部屋に小声で突入。


「•••••」


 部屋に入ったが瞬間、目の前の光景に声が出ない程驚いた。

 そこはメルヘンチックなフリフリのレースで囲まれたベッドにぬいぐるみのオンパレード。

 娘の部屋的な?むしろ結婚してたの?まさかじいさんの趣味?

 色々考えたが多分見てはいけないモノを見てしまったようだ。掃除する目的で入ったがこれは手をつけられそうに無い。

 気を取り直して次の部屋に向かう。


「•••マジかよ」


 そこは衣装部屋だった。中にもう一つ扉があり寝室から直接来れる仕様らしい。研究用の白衣等があるがここにも明らかに小さい女の子向けの衣装がズラリと並んでいる。

 他人の趣味に口を出す事は出来ないがこれは問題だ。研究に没頭していた人がここまで人として道を踏み外す事はあるのだろうか?


「なにをしている?」

 

 後ろから低く殺意のある声が聞こえてきた。

 振り向くとそこには会議に行くと言っていたコナじいさんが仁王立ちして俺を睨んでいる。


「掃除です」

 

 とっさに出た言葉としては悪くない。


「そうか。掃除道具も持たずに掃除か?

 なるほど。床も壁も自分の舌で舐めて綺麗にしようとしたのか?」

 

 不覚。へそ曲がりのじいさんに下手な嘘は逆効果だった。


「言い訳はもうしない。ただコレだけは言わせてください。

 幼女の服を集める趣味はどうなんでしょうか!?色々と問題が起こる気がするのですが大丈夫ですか!?」


 言ってやったぞ!このじいさんの趣味は問題ありありだ!

 俺が正しい人の道に戻してやる義務がある気がする。居候だが。


「・・・・もういい。お前には正直に話そう」


 正直に話す?趣味は集めることではなく着ることだったとか?それは無理だ!

 サイズが違いすぎるしそんな姿を見たくはない。

 

「落ち着けじいさん!俺はアナタにこんな幼女の格好されるのは見たくない!」


「何を想像しているのか少し理解したがそれは勘違いだ。

 黙っていなさい。あとこれから起こることは他言無用だ」


 そう言って詠唱を始めたじいさん。左腕が光り出し一瞬で若くなった。


「これが本来の姿だ。誰も雇わないのは信用出来ない奴らにこの姿を見せることが出来ないからな」


 段々と理解が追いついてきた。最近の老人らしからぬ言葉やイヤイヤ期は本来の姿なら納得だ。それよりも性別が女と分かったなら凶器の危険度を確認する必要があるが、


「・・・このサイズなら問題は無いな」


「お前今相当失礼な事を言ってないか?」


「いえいえ、これは死活問題なので。

 それよりなぜ変装を?」


「こんな女の姿だと威厳も何もないだろ?世の中男の方が便利なんだよ」


 一理あるな。結局縦社会で男が優遇されるのはどこの世界でも変わらない。


「理解しました。それより会議は大丈夫なんですか?2日は帰ってこないって言ってたのに一時間も経ってないですよ?」


「まぁアレだ。寝ずに研究していたから日にちの感覚が無くなってしまっていたらしく、会議は三日前に終わっている」


 確かにそれは仕方ない。日本で仕事してるときも急がしすぎて残業と休日出勤を三週間フルで働いたときそんな感じだった。


「それよりさっきポストに入っていた手紙でワシの研究成果が認められて軍を編成する話があるそうだ。

 なんと!我がマルセス家の本家から軍編成費が出るらしいぞ!

 条件はーーー10日後に軍事顧問が派遣されるからその間に団長1人と団員2人以上を揃えておくことだそうだ」


「それいつの話ですか?」


「手紙が届いたのが12日前だから逆算してーーーー2日後だな」


 明後日かよ。


「団長はいいけど団員はどうやって見つけるか問題だな。

 こんな攻撃特化の魔法を放つことができる奴は国中探しても早々見つからないぞ?」


「なんだ?もう団長は決まっているのか?」


「そんなんハクがやるに決まっているだろ?団長としてあと2人もお主が探してくれ。

 ここで費用を上乗せできるなんて滅多にないチャンスだからな」


「ん?指名手配されてる俺が堂々と団長?それは無理だろ。何のために匿ってくれているんだ?馬鹿なのか?馬鹿なんだな?」


 心の声がモロに出てしまった。


「そんなの変装でもって何でもバレなきゃいいんだよ。

 それより騒いでも仕方ないことだしあと2日だ。人種も人選も任せるから軍費を貰うために頑張ってくれるよな?居候君」


 目がマジだ。この状況を簡単に考えているっぽい。

 猶予はあと2日、どうやって団員を増やせばいいんだ?


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