57話 呼出
クラスと別れて上流に向かった俺はそこで1日を過ごした。
結局クラスは合流する事もなく早朝に俺はケイとエムに合流した。
そこにもクラスの姿は無かった。
屋敷に戻りひたすらポーチから荷物を出す。なぜか誰も手伝ってくれなかった。
なので荷物を取り出すだけで半日掛かった。
嫌われてる?
一息ついているとケイとエムから道具の催促をされた。
約束は約束だ。部屋に戻り作業を始める。
要望は俺が持っているポーチと同じ性能の箱を一つと握力を上げる手ぶくろを一つだった。
馬車での買い出し関連だろう。月一程度しか使わないが2人には重要な仕事だ。早速作って渡した。
相当喜んでくれた様子だった。
屋敷内を歩いているとルイスが心配そうな顔をしていた。
「クラスどこ?」
心配するのも無理はない。ルイスとクラスは2日以上離れた事は無い。
俺もクラスの行方は知らない。
言葉に詰まっていると遠くからじいさんが歩いて来た。
「クラスは今本家に呼び出されているのです。
もう少しで帰って来ますからそれまで我慢していてください」
笑顔が素敵だ。俺に向ける笑顔とは全然違うのはなぜ?
ルイスはムッとした顔で少し不貞腐れている様子だったがそのまま屋敷の廊下を走ってどこかに行ってしまった。
本家にクラスが呼び出されるなんて何事だ?俺も行った事ないから少し気になったがじいさんがそう言うなら問題無いのだろう。
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「報告を聞こうか」
クラスは本家に呼び出されハクの近況を聞かれていた。
相手は従者統括担当。
本家はザンとクラスの2人にハクを監視する事を言い付けていたが、ザンがハクに肩入れした気配を察知してクラスから話を聞く事にしたのだ。
「昨晩に暗殺部隊から襲撃を受けました。
追い返す事はできましだが、これからも襲撃は続くでしょう」
「我々に害が無ければ良い。
そんな事よりハク様が魔法を扱える様になったと聞いたがそれは本当か?
神獣を呼び出したとか大型の魔獣を従えているとか色々と噂が絶えなくてね」
「神獣は知りませんが魔獣は知っています。
今私が世話係を任されていますから。サイズはこれくらいでしょうか?」
実際嘘は言ってない。
「そうか。我々の脅威にならなければ問題ないが、本家の意向、特にあの方に背く事はないのだな?」
「問題ないかと」
「ご苦労。行って良い」
クラスは屋敷に戻るため帰路についた。
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「クソが!!」
王城の地下にある部屋でゲル王子は暗殺部隊の生き残りに話を聞いて荒れていた。
仮にも王族の暗殺部隊だ。最強の存在だと信じていたのにハクの従者に壊滅させられた。
逆に自分を狙って来ると言付けまでしている。
爪を噛みながらウロウロと落ち着きなく部屋を歩き回る。
「王族の裏の力を勝手に使って失敗なんて父上に知られたらどうなるんだ?」
結局彼は自分の事しか考えられない。そんな彼を陰で見ていた男が近づいて行く。
「誰だ!?」
気配に気付き声を上げるゲル王子。
「兄様勘弁してよ。そんなに大声を出されるとここは反響してうるさいんだからさ」
小柄で見た目は男か女か判断出来ない容姿をした男。
「カインか。何用だ?」
「いやいや何用だって言われてもねぇ。勝手に暗殺部隊を10人以上も殺しといてそれは無いんじゃない?
しかもそれが1人の貴族の従者にやられたなんて信じられないよ」
「聞いていたのか?」
焦るゲル王子だがカインは冷静に状況を話し出す
「暗殺部隊を壊滅させる程の従者。そんな奴聞いたこと無いよ。
今回送った部隊に魔法を使える奴らが少なかったとしても国家勢力より強い存在があって良いわけないだろ?
それじゃ王族の安全は保証されないし国民を守れないじゃないか。ねえ?君もそう思うだろ?」
2人の会話を聞いていた部隊の生き残りにカインは話し掛ける。
「申し訳ない。
ですがこれだけは言わせてください。
我々はどんな相手でも油断せず確実に仕留めてきました。今回もそうです。
魔法攻撃なら防げたのですが、その従者は見た事も無い武器を使っていました」
「見た事も無い武器?飛び道具の類でか?」
「そうでしょうけど現物を見た訳ではありませんから何だったのかわかりません。
月明かりだけでしたし、手元が発火したと思ったら瞬間な仲間達が次々と倒れていったのですから」
カインは腕を組みながら考える。
「商人風情が相当な技術者を抱えているな。
戦争するにも国を統治するにしてもその武器が・・いやその従者が欲しい。
その主人の名は何だ?」
「ハクと申します。レイドクロームエル家の長男でーー」
「あぁ!あの神の手を持って生まれたとか騒がれた奴か!
今回の兄様のターゲットはそいつだったのか。
でも噂じゃ相当ポンコツだった筈じゃなかった?」
そのカインの何気ない言葉にゲル王子は怒りが込み上げ、閉じていた口が開き出す。
「ただのポンコツならこんな事にはなってない!!
奴は我が国に害を及ぼす者だ!あいつは俺を侮辱し我等の別荘地を荒らした。それに護衛を殺して脱走したんだぞ!?」
「わかったわかった!後は兄様に代わって俺が引き継ぐから落ち着いて!
今回の件は兄様には少し荷が重い。僕がやった方が効率良く動けるこら交代しよう」
「そんなことが出来るか!!これは第一王子としての威厳にも関わる事だぞ!?」
熱くなっているゲル王子をカインは醒めた目で見つめる。その視線にゲル王子は一瞬寒気を感じた。
「姫の時もそうだったけど、これは兄様の得意分野じゃないんだから今のうちだと思うんだよね。
前と同じになりたいの?」
「なっ、なら任せる」
「よし!なら僕は準備があるから戻るね!」
颯爽と部屋を出て行くカインをゲル王子は見送ることしかできなかった。




