53話 プランB
クラスの評価が地に刺さった次の日。俺は1人で朝早くから近くの川に来ている。
理由は— —釣りだ!!
水の流れる音と風の音。
それ以外の雑音は一切無い所で優雅に釣りをするなんてとても贅沢じゃないか。
ルイスもクラスもまだ車の中で寝ているし、朝早いこともあってとても静か— — —な筈だった。
「ハク様は不思議な道具で釣りをしているんですね」
アリスだ。それに大量の取り巻き組も元気いっぱいだ。
「ハクの旦那!!我々もお手伝いしまさぁ!!」
コイツはクラスの攻撃を避けたヤツかな?盗賊のリーダーみたいなツラだ。
他の連中も見た目はどう見ても盗賊だ。
「おい!そっちにいったぞ!追い込め!!」
「すばしっこいヤツめ!往生しろや!!」
こんな朝っぱらに川の中でバシャバシャと勘弁してほしい。
「アリスもよくこんな強面な連中と一緒に行動出来るな」
「根は凄く優しい人達なんですよ
戦闘でも頼りになるし、身分も種族も気にしない人達って思ってるほどいませんから」
「そんなもんかな?」
みんな心が狭いんだな。
「ハクの旦那!そっちにデカいのが向かってます!」
川を覗き込むと確かに川魚とは思えないサイズのデカい魚影だ。
俺のロッドでは確実に釣り上げることはできないだろう。
「ハク様!!」
急にアリスが俺には覆いかぶさってきた。まだ建設途中の柔らかいツインロケットが俺の顔面に直撃する。
「なに!?急にどうした!?」
こんな大勢の人が見てるのに大胆にロケットを押し付けてくるなんて・・まさか発情期か!?
「あのサイズは魚では無く魔獣です!
早く逃げてください!!」
あ~うん。そうだよな。
「逃げるにしても俺の上に乗っかっているお前が降りてくれなきゃ無理だぞ?」
アリスは顔を赤らめた。こんなやり取りをしていると川から何かが水しぶきを上げて出て来た。
「ポイズンフィッシュ!?なんてサイズだ!!」
「全員川から離れろ!!」
ポイズンフィッシュ?直訳して毒魚か。
ナマズの親戚のゴンズイかな?いやここは海じゃないな。
盗賊ヅラの連中が騒いでいるがアリスが邪魔でよく見えない。
「早く逃げてください!!」
馬乗りでマウントを取ってる側の発言とは思えないな。
パニクっているアリスに何を言っても多分無駄だろうから別に何も言わないけど。
テンパっているアリスを降ろして俺もポイズンフィッシュとご対面。
「デカッ!!」
川魚なのに5メートルはあり、ゴンズイよりピラニアに近い。
【思考加速開始】
【胴体視力向上】
【胴体視力超向上】
【相手の攻撃パターン先読み開始】
【筋力向上】
【反射速度向上】
対面早々にコイツは俺に殺意を抱いているらしいな。
【討伐開始】— —シュッ —【討伐完了】
「ハク様!ソイツは— — —」
— — キン— —
「コレって食えるのか?」
カサゴもフグも毒さえ取り除けば美味い魚だ。俺は少し期待していたが誰も答えてくれない。
「今何が起きた?」
「動き出したと思ったら首が落ちたぞ?」
「最初っから死んでたんじゃねえか?」
ザワつくアリスの取り巻き組。
「あのハク様?今のは一体•••」
極めし者の速度は本当に一瞬だ。この速度に誰も反応は出来るはずが無かった。
「•••やっぱ刺身だな!!」
俺は1番美味しく頂く方法を思い付く。日本人は刺身だよな?
いやっ、煮付けか?そもそもコイツは赤身?白身?
赤身なら煮付けは無理だ。
「ハク様!!」
アリスの声が森に響く。
「大丈夫だ。分かっているから安心しろ。
捌いた時赤身なら刺身!白身魚は淡白だから煮付け!これで満足か!?」
誰一人反応無し。
「何の話ですか!?
今聞いているのはポイズンフィッシュの首がいきなり落ちた事です!!
今のはハク様がやったんですか!?」
「ん?えぇっと、違います」
誰一人として信じてくれなかった。
「アリス様!ルカが毒で!」
少し離れた所で騒いでいる。
俺はアリスと共に駆け寄る。
そこにはまだ若い青年が横たわっていた。どうやら左足に怪我をしているらしい。
話の流れから魚にやられたのかな?
顔を覗き込むと額に小さなツノが生えている。
鬼の子孫的な?
「解毒薬は!?」
「それがまったく効きませんでした」
「私が治療します!
我に宿し聖者の力よ— — 」
聖魔法とか初めて見るけどやたらと長い詠唱だな。
その間にも毒は体を蝕み続ける。
「くっ!解毒できない!!」
凄そうだったのにダメなのかよ。
「あの〜ちょっといいかな?」
「アリス様!!もうルカの体力が」
おーい。無視か?
確かにさっきより青ざめてる気がする。
結構ヤバそうだ。
「回復魔法と回復ポーションを!
早く!!」
周りの全員が協力して回復魔法の詠唱を始める。
「「癒しの精霊よ— —」」
回復魔法を使えない他の人がポーションを飲ませるが
「毒の進行が早すぎてポーションの意味がありません!!」
カオス。
「見てられないな。
アリス、俺が治療しても— —」
「ポーションが効かない!?どうすればいいの!?」
なぜかさっきからシカトされてるな。
確かに俺は組織の人間じゃ無いし、ルカってやつも正直関わり無いから別にいいけど見殺しは違うよな。
「はい、どいてどいて〜」
俺は人混みを退かしてルカの前に立つ。
アリスの膝の上で真っ青な顔をしてグッタリだ。
「ごめんね••ごめんなさい•••」
涙を流すアリス。
「時間が無いから取り敢えずこれ飲ませてあげて」
俺は自作のの透明ポーションを渡す。
「こんな水じゃ」
「早く!!
毒は俺が何とかするから!」
「すっすみません!!」
つい大声を出してしまった。パワハラとかモラハラにならない事を祈りつつ俺はルカの左足の上に手をかざす。
解毒なんてやった事ないが魔法創生があるからイメージすれば毒を吸い出す事は出来るよな?
俺の毒が左手に引き寄せるイメージをする。
有害物質を手のひらに集めるイメージだ。
【万物操作獲得】
よし!これなら毒素を手元まで引き寄せることができる。
ルカの体内から毒素を吸い出す。
「んっっあれ?僕は・・・」
ルカは正気に戻った。何とか毒だけ吸い出すことが出来たらしい。
手の上で明らかに毒です!って色の液体が浮遊している。
気化させて毒に侵されましたじゃ元も子もないな。
俺はポーチから空いてるビンを取り出し毒を保管しておく。
いつか何かで使うときが・・・無いだろうけどまぁいいか。
それにしてもーー
「毒を吸い出す魔法なんて聞いたことあるか?」
「それよりポーションだ。あれは通常のポーションより透明だったがそんなの聞いたこと無いぞ」
「いやいやポイズンフィッシュを倒したことの方がーー」
ガヤの連中が面倒な事になってしまった。
「ハクの旦那、少しーーいや、かなり聞きたいことがあるんですが、ポイズンフィッシュを倒した感想は?」
誤魔化しきれなかったか。
それならプランBだ!
ーーーーーーープランBーーーーーーーー
倒すことは出来たが苦戦した事にする。
決して余裕は見せない。
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これだ!
「なかなか手強かったぞ?
毒を吐き出す前に倒さなきゃと思って必死に抵抗したんだからな。
運良く弱っていたから何とか首を落とせた感じだ」
「ポイズンフィッシュの弱点は腹ですよ?
しかも首は金属以上の硬度を持った鱗に覆われていて戦闘中に切り落とすなんて聞いたことないですよ」
おっと?いきなり墓穴か?
早くもプランBほ崩壊した。
助けてアリス!!
本気で助けを求めるアイコンタクトを送った。
「そうですそうです!!ポイズンフィッシュは一級討伐対象ですよ?
30人規模の小隊を組んで討伐に向かう程に危険なんです。
あんな魔獣を一瞬で一撃なんて考えられません!!」
アリスへ送ったアイコンタクトは空中で散った。




