49話 兄弟
レイと連絡が取れなくなって6日が過ぎた。
俺が帰ってきてからじいさんは父親の元に出掛けたらしい。
誰も居ない部屋で手の甲に話しかけるのも側から見たらヤバいヤツにしか見えないから辛い。
ソファーで横になり手を天井に向けて当時の事を考える。
負の感情が強くなると繋がるのか?
それともただの偶然?場所的な問題?
試したい事は沢山あるが、あの場所には正直もう行きたくない。
また捕まりそうだし。
「ハクゥ!!」
勢いよく顔面に飛びついてくるルイス。
「散歩帰りか?」
「うん!今日も特に変わった事はなかったよ!」
「ご苦労さん。それより•••」
「ん?」
「先に足洗ってこい。
顔も服も泥だらけだ。誰かルイスの体洗ってやってくれ」
最近は声を張らなくても
「失礼します。
ルイスちゃん、行きますよ。
それとハク様、明日はお姉様がいらっしゃるそうです」
メイドが早速と現れる。
見張られているのではないかと疑うほどに。
それにしてもまた姉さんか。
「・・・俺自身も洗いに行くとしよう」
ソファーから立ち上がり風呂に向かう。
廊下ですれ違うメイド達は俺を見つけるとどんなに距離があっても壁際に寄って通り過ぎるまで頭を下げ続ける。
いやその距離で!?って思うほど遠くても頭を下げ続けている。
前までこんな事は皆無だった。
ここ最近はこうした小さな変化が続いている。
俺が通り過ぎない限り頭を上げない。
この光景に慣れない俺は小走りで駆け抜ける。
風呂場に着けば
「失礼します。
御召し物を脱ぐお手伝いをします」
「結構です!」
毎回断っているのに毎回聞かれ、夜になってベッドに横になると
「失礼します。
本日は私が」
「結構です!」
ここで断ると「失礼します。」から解放される。
じいさんが居ないとずっとこんな感じだ。
屋敷の中でもこんなで少しは気が休まる時がほしいが、理不尽の申し子である王子のことだ。
報復しないなんてあり得ないと思うのだが、今のところ特に何もない。
日中はルイスに見回りをさせているが変わった様子もないらしいから大丈夫だろう。
明日に向けて俺も眠ることにした。
ーーーーーーーー
「お休み中大変失礼します!!」
メイドが慌てて部屋に乗り込んできた。
「・・・姉さん来たの?」
「いえっあの!」
「失礼するよ」
「・・・誰?」
また知らない人だ。
白装束みたいな格好で小さめの丸メガネ。ヒゲモジャのチリチリロング。
服が赤なら完全にサンタクロースだ。
「ハク様!このお方はーー」
「私は王国の法廷を取り仕切っているカベリー・マルセス大臣だ」
「・・・はぁ」
カベリー・マルセスか。この世界でファーストとファミリーがあるなんて知らなかった。
カベリーさん?マルセスさん?どっちなんだろう。
「ハク•レイド•クロームエルで合っているな?」
長くね?
俺の名前なんか呪文っぽいな。
「たぶんそうですが何か?」
「ふむ。
本来なら私は王国から出ることはないのだが、なぜこの辺境の地に足を運んだかわかるかな?」
まだ目覚めて数分で頭が全然起きていない俺に質問されても
「わかりません」
これしか答えられない。
大臣は部屋を見渡しソファーに腰掛る。
「君は十数日前に国家反逆罪で法廷にいた。
合っているな?」
俺は頷く。
てかなにこれ?事情聴取的なあれか?
「その場で君は死刑を言い渡された。
しかし君ほ異議を申し立てたが受理されなかった。
怒った君は古代魔法を発動し魔獣を呼び寄せてその場の人間を殺した。
合っているな?」
「んん~んっ!?」
一気に目が覚め思わずヒゲを二度見した。
「あのクソ王子か?あのバカ王子やっぱり報復してきたか」
心の声が漏れに漏れた。
「違うのか?」
モジャったヒゲを弄りながら俺を観察するかのように聞いてきたチリチリロング。
「全然違うね。
国の意向に背いたこともなければ人を殺したこともない。
大体あの王子ってなんなの?偉いの?
まぁ王子だから偉いんだろうけどアイツは悪だね。
本来なら裁くべきは王子だろ?
苦労もなく周りの人間にペコペコされて自分は凄い!みたいな感じなんだろ?
結局俺はまた罪に問われる訳だ。嫌な奴だな」
俺史上一番長く喋った。
気付いたら後半はただの愚痴になっていたが。
「・・・なるほど。
ザンのやつが言っていた人物とは少し違うが・・・まぁ信じてやるとするか」
「ザン?大臣はウチの執事を知ってるの?」
「そりゃ~ワシはアイツの兄貴だからな」
そう言って大臣は笑った。
もっと堅苦しいじいさんかと思ったが笑顔を見た瞬間その概念は無くなった。
「ザンは凄いぞ?アイツは成人する前からーーー」
ーー一1時間ーーー
「ーーーーって事があったときもーーー」
ーーー更に1時間ーーー
「ーーーーこれで兄弟と信じたか?」
話が長い!!
約二時間ぶっ通しで話続けた偽サンタクロース。
ただじいさんの話をしているときは終始笑顔だった。
兄弟思いのいい兄貴なんだろう。
「さてと。
真実も知れたことだしワシは帰るから問題を起こすなよ。
あっ!それとここには極秘で来たから他言は一切するなよ?」
「いやっもうウチのメイドに見られて」
ーーバタン
最後まで自分だけ話して一方的に部屋を出て行った。
俺は部屋着ままベッドから降りることはなかった。




