48話 家族
アドリの謀反から2日。
俺はゲル王子とやらの屋敷に連れて来られた。
道中の馬車は揺れが酷く、野営も見ていられない程のモノだった。
そして着いて早々に俺は地下の檻に入れられた。
事情聴取は明日になるらしく大人しく待っていろと言われたが正直扱いが不当だ。
客人として扱って欲しかった。
——翌日——
「これより裁判を始める。
国家反逆罪のアドリが不慮の事故で亡くなった為、共犯者の貴殿に話を伺うこととする。
尚、発言は代理人にのみ許可する」
意味がわからない。
共犯者になってるし代理人いないし。
ただの公開処刑ってやつだな。
手足に鉄製の枷を付けられて足には重りまでとは相当な犯罪者扱いだ。
「裁判長!
此奴は国家に対して重大の〜」
何やら胡散臭い奴が話し出したが聞くのも嫌だな。
発言も出来ない訳だから否定も出来ない。
そもそもなんで誰も助けに来てくれないのだろうか。
このまま死刑宣告を受けて終わるのだろう。
裁判のような茶番は数時間続いた。
裁判長とやらはその都度俺に
「今の内容は真実ですか?」
と、聞いてくるが発言権が無いので
「無言は黙認とする」
くだらない。何なんだと怒りがこみ上げてくるだけで何の解決にもなっていない。
「判決を下す」
裁判長が判決を口にする瞬間手の甲が光出す。
その場の全員が眩しすぎて手で目を隠す。
「久しいな。
外見は変わったが魂の色はあの時のままで安心した」
「・・・レイか?」
光が収まり目の前にレイが姿を現した。
その姿を見た周りの人間は一切言葉を出さない。
レイは周囲を見渡し俺の現状を理解したのだろう。
「お主は変なことに巻き込まれる特殊スキルでもあるのか?
見ていられないぞ」
「助けに来てくれたのか?」
「絶望と悲しみ、怒りの感情がまた我らを繋げてくれた。
積もる話は後で聞くとして・・今はここを出ることにしよう」
やべぇ。泣きそう。
こんなタイミングで来られたらこの世の中で信じられるのはレイしかいないように思える。
完全にストックホルム症候群だ。
「よく聞け愚かな人間どもよ。
我はこの世界で神獣と呼ばれている。
我の知ったのなら友にこれ以上の質問は不要だろう。
むしろ貴様等が崇める存在の友を傷付けたのだからそれ相応の罰は受ける覚悟があると理解する」
後ろから見ていると威厳があるな。
「やはり神獣様でしたか!!我々は決して神に背いたワケ」
「発言を許可していない」
「おぉ!!」
つい興奮して声を出してしまった。
立場が逆転するや否や裁判員は皆手のひらを返すようにレイに取り入ろうとしたのだろう。
それをレイは一蹴した。
この場の全員が悔しそうにしているが、レイ単体の存在感に圧倒されて何も言えなくなっている。
「主もそんな鎖や手錠は簡単に千切れるだろ?
さっさと切れ」
ーキンッ!ーー
「ぁぁあ」
胡散臭いおっさんは変な声を出しながら膝から崩れ落ちた。
「そう言えばこれを返しておこう」
おもむろにレイは前脚の根本あたりから大きめの麻袋を口で取り出し俺の前に置いた。
「なんだこれ?」
「これから必要になるものだ」
中を開けると転生前の俺の装備が全て入っていた。
俺はその場でポーチや刀を身につけシャネから貰ったコートを着た。
「やはりその格好が一番似合うな」
心なしかレイが喜んでいるように感じた。
「さぁ乗れ。
こんな茶番はもう終わったから屋敷に帰るとしよう。
貴様等もそれでよいな?」
誰一人反応しない。
「無言は黙認したと判断する。
さぁ帰るぞ」
俺はレイの背中に乗り光子化してその場を去った。
レイは一瞬で屋敷の近くまで走る。
「助かった~
レイ、本当にありがとう」
「礼には及ばぬ。
それに茶番劇をしていた奴等にも少なからず感謝している。
今回の出来事がなければまたハクと繋がることは無かっただろう」
確かに今回の事は相当頭にきたがそれで再会出来たのなら何か意味があったってことだ
終わり良ければ全て良し!オールOKだ!!
「それにしても俺の装備を全てレイが持っていたんだな。
悪用されなくて良かったよ」
「まぁな。
主の肉体が消えても装備だけはすべて残ったからな。
形見のつもりで回収したがまた役に立つからそれはそれで間違った事ではなかったな」
やはり俺は死んだって事か。
これで前の世界とこの世界が繋がることはハッキリした。
俺は世界を救うことに成功したって事だ。
「積もる話はあるが我らは何時でも話せる状態に戻ったことだし、そろそろ家に帰ってやれ。
主を心配する感情がこの周辺は凄い強い。
そして屋敷の人間に感謝しろ」
何のことだ?屋敷の人間は誰一人助けにきてくれなかったのに
「それってどぅ・・」
レイに話を聞こうと思ったその瞬間、身体中が重く物凄い眠気に襲われた。
意識が遠のく中でレイは何かを話しているがよく聞こえない。
「主の周り%&~#*'$|&#~」
ほぼ聞き取れずその場で意識がブラックアウトした。
ーーーーー
目が覚めると俺はベッドで横になっていた。
目の前には見慣れた天井。
「ハク様!!」
声の方には屋敷のメイドと・・・誰?
見知らぬ女が座っていた
メイドは眠っていた俺を世話していたのだろう。
「目が覚めたか。
死んだかと思ったぞ?」
「え?いや・・誰?」
「ハク様!!この方は」
女はメイドに手を向け
「ここは良いから下がれ。
後は私から説明するこれ2人っきりにしてくれ」
メイドは頭を下げ部屋を出て行った。
多分偉い人かな?
「さて、どこから話したものか。
なぁ?英雄ハクレイの生まれ変わりのハク君」
「それは人違いですよね。
僕は魔法も剣術も使えないんですよ?」
「・・・記憶は戻ったのだろ?」
おっと?やばい奴か?
馬鹿正直に話すと面倒な事に巻き込まれないか考え少しとぼける事にした。
「記憶が戻る?少し意味が」
「バカにするな。
この間の事を忘れているはずが無いだろ?」
「この間?昨日の裁判みたいな奴ですか?」
「裁判は10日前の事だ。
お前は御伽噺の英雄の様な格好で屋敷の前に倒れていた。
しかも裁判の日にだぞ?ここからあそこまでどれだけ距離があると思う?」
10日間も寝ていた事に驚いたがこの女は色々とヤバイな。
勘が鋭く常に俺を疑っている。
「それより何で女性なのに貴公子の格好をしているのですか?」
「話を逸らしたいって顔だな」
んん〜バレてる。
とてもやりずらい。
女は大きく息を吐いて呆れ顔で
「家族も屋敷の人間も信用出来ないのは知っている。
だが、姉さんだけには素直になれって言っただろ?」
「•••姉さん•••姉さん!?」
知っている単語だ。
だが、俺に姉がいるなんて聞いてない。
そもそも家族に会ったこと無いから家族構成を知らなかった。
「こんな美しい姉を忘れるなんてことある!?」
顔を膨らませグイッと顔を近づけて来た。
「おぉいい匂いだ」
「なっっ何を言っているの!!」
顔を赤くし距離をとられた。
心の声が漏れてしまったな。
でもいい匂いなのは確かな事だ。
少し距離があるが良く見ると確かに似ているか?
金髪でサラサラの長い髪に白い肌。
そして男の格好をしているがナァァイスボディ!
こんな美人の姉がいたなんて元の俺は贅沢な奴だったんだな。
「ヴンッ話が逸れたけど話を戻そう」
姉さんは咳払いをして真剣な顔。
「話って言ってもこれと言って話す事はないよ。
アドリが暴走してそれを止めてたら王子が来てそのまま連れてかれただけだ」
これ以上は話しようも無い。
姉さんは顎に手を当てて悩んでいる様子だった。
「あのアドリが暴走•••」
五分程の沈黙。
そして姉さんは立ち上がり
「また来るね」
納得していない顔で部屋を出て行った。
忙しい人なのだろう。
「レイ、聞こえるか?」
「•••••」
レイに連絡がつかない。
訳がわからない。結局それ以降何度試してもレイと連絡が取れることはなかった。




