47話 王子
犬がウチに住み着いてから2週間が過ぎた。
突貫工事で敷地内に犬小屋でも作ろうかと思ったがそんなデカい犬小屋いるのか俺?ってなったので小屋作りはやめた。
考えてみれば覚醒した俺は前と同じ様にイメージを魔法に出来る。
カワイイ外見に変化させたら途端に人気者になり、メイド達も世話をしてくれるだろう。
イメージ通りカワイイ外見にした。
まんまパックの姿になった。
他のメイドとの意思疎通も出来ると楽なので会話ができる様にした。
面談と商談を終えると俺は犬の元に向かう。
「お帰りハクゥ!!」
完全にパックだ。
最初の方はパックも可愛かったが、途中からなんかツンツンし始めたからな。
油断大敵だ。
そして名前はルイスと名付けた。
コイツの部屋は俺の一つ隣にしてもらった。
コイツは元々魔獣だったから魔力を持っている。
番犬としても最高の働きをしてくれるだろう。
「今日はなんか変わった事はあったか?」
「んん〜ない!」
こんな感じで屋敷で起きた小さな事でも今の俺なら全て把握する事ができる。
これで人間の常識さえ身につければ完璧だ。
誰に頼むか悩んでいると、
「失礼します」
狙ったかと思うほど完璧なタイミングでじいさん登場。
「ナイスタイミングだ。
俺も今「ハク様、大変な事が起きました」へ?」
表情や素振りからは大変な事が起きた感じは全くしない。
「どうした?何があった?」
「はい、どうやら商人のアドリが謀反を起こした様です。
今この屋敷は魔獣と殺人を得意とする輩に囲まれています」
むむ!?なんか凄そうだぞ?
恐る恐る窓の外を覗くと魔獣が5体、汚らしい人間が数十人見える。
「魔獣は大した事ないだろけど、人間が厄介だな」
「ハク様でも感じますか?」
「あぁ、なんか触るのも触られるのも嫌な汚さだな」
「••••そこですか?
あれはアドリの私兵団ですよ?
全員が魔力を帯びた武器を持ち、人を殺すことだけに特化した殺人集団です」
俺は首を傾げた。
「そんな物騒な集団を私兵にしている奴がなんで野放しになってるの?
寧ろその危ない集団の親玉を雇ってるウチが心配だよ」
我ながら当たり前の事を言ったと思う。
その話を聞いてじいさんは目を閉じてため息をした。
「貴方のお父様は能力が高い人を好む傾向がありますよね?」
「知らん」
「ハク様にこの屋敷を与えたのもアドリを仕えさせて支配する意図があったのだと思われます」
なる程、性格が悪い父親って事だな。
「なら何で逆らってきたんだ?」
「それは最近のハク様の対応では?」
「俺!?」
じいさんらギョッと目を見開いて驚いている様だ。
「商談の時横槍を入れたでしょう?
それが彼にとって気に入らなかったんですよ!?」
何やら怒っている。
別に悪気があった訳じゃないのに何で?
そもそも相手を見下して無理難題を押し付ける方が悪いだろ?
「とにかく今は安全が最優先だ。
屋敷にいる全員を一か所に集めてくれ。
アレらは俺がなんとかする」
返事を待たずに俺は庭に飛び降りた。
俺の事を確認したアドリは笑みを浮かべた。
「これはこれは無能なハク様じゃないですか。
お一人で何をしに?」
この状況でそんな事言うのは悪役しかいない。
「何やら屋敷が魔獣やら凶器を持った人間に囲まれてるもんでね。
今日はもう仕事は無いけど何か?」
「黙れ無能が!!
今までの手柄は全て私のものだ!!
それを•••まぁいい。やってしまえ!!」
「えぇぇ!?」
結局何が何だかわからないまま襲われるらしい。
アドリの声と同時に魔獣が突進してきた。
が、唐突に急ブレーキで止まった。
「何をしている!!」
アドリが叫ぶが魔獣は動かない。
何かに怯えている感じだ。
俺は辺りを見渡すと屋敷の屋根の上にイカツイ姿のルイスがいた。
「ふっ魔獣を止めたぐらいで図に乗るなよ!
お前たち!!」
俺じゃないけどな。何で誰も屋根の上を見ないんだ?
「おぉぉ!!」
威勢良く飛び出してきたお前たちとやら。
【思考加速開始】
【胴体視力向上】
【筋力向上】
【反射速度向上】
じいさんが言ってたがあっちは武器持ってるし相当なやり手らしい。
人を殺すことだけに特化するってどんな環境に身をおけばそうなるのかは疑問だが、
油断して殺されたら元も子もない。
目の前で浮浪者から振り下ろされる魔法武器は少し脆く見える。
紙一重で避けて刀身の横っ腹を軽く叩き軌道を変えて反撃だ。
ーーパキッ!!
「え?」
軌道を変える前に剣が折れた。
「なんて奴だ。伝説の魔剣にも引けを取らない俺の剣が・・・」
それはないだろう。
そこまで脆いと違う意味で伝説だ。
「これならどぉだぁ!!」
3人が同時で攻撃してきた。
1人はオノを振り下ろし、2人は背後から剣を水平に斬りかかってくる。
確かに連携も素晴らしい。これなら逃げることも出来ないだろう。
流石殺人に特化してるだけあるな。
ーーー【超戦術を極めし者発動】ーーー
俺は人を殺したことはないし、殺したくもない。
こんな時はパックと特訓したこれで乗り切れるだろう。
発動と同時に三人が地面に崩れ落ちる。
何をしたのか俺でも理解できないが少しはビビってくれれば退散の二文字が頭をよぎるだろう。
「アドリさん!話が違うじゃないですか!!」
浮浪者が叫ぶ。
「まだだ。あと少しで準備が終わる」
準備?まだ何かする気なのか?
「そこまでだ!!」
どこからか男の声がした。
「アドリ!貴様を国家反逆の罪で逮捕する!!」
「くっゲル!!貴様裏切ったか!?」
アドリの後ろに騎士の格好をした100人程の軍隊。
その中央に一際目立つ鎧を装備した金髪の男。
アイツが叫んだのか?
「騎士の諸君!
この場の全ての人間を捕らえよ!!」
コイツら一体いつからいたんだ?
一瞬で湧いて出るなんてモンスターみたいだ。
100人の騎士は浮浪者とアドリを捕まえようとしているが、何故か俺もターゲットにされている。
戦って国家反逆とか言われるのは心外だ。
【無重力浮遊】
ひとまず空に逃げた。
「飛行魔法だと!?有り得ない」
騎士達が驚いている。
それより屋敷だ。このままだと屋敷の人間にも手を出しかねない。
【隔離シールド】
【物理カウンターシールド】
【マジックカウンターシールド】
これだけ張っておけば安心だ。
一安心したのも束の間、俺は空から今の現状を見て少しビビった。
騎士達はアドリと浮浪者、そして動かない魔獣を殺していた。
さっき捕らえよって言ってたよな?
「空に浮く者よ!!
今すぐ降りてこい!!話し合いがしたい!!」
それは無理だろ?
捕らえよって言って殺してまくってる奴が話し合いなんて出来るはずがない。
「今すぐ降りてこなければ屋敷に火矢を放つ!!」
マジか。どんな思考だ?
「俺達は国家に反逆する事はない!!
それなのに何故無抵抗の屋敷の人間に向かって火矢を放てるんだ!?」
金髪の男は不思議そうな顔をしている。
「貴様等はコイツらの仲間だろ!!」
「全然違う!!俺達も襲われていたんだ!!」
「なら降りてこい!!無実を証明しろ!!」
無実を証明するにも当事者が殺されているからどうしようもない。
最悪襲われても極めし者が発動するから問題無いが、それこそ反逆で捕まりそうだ。
「事情聴取をする為、我が屋敷まで来てもらおうか?」
言うとおりにした方がいいのか?
「ハク様!!」
屋敷の中からじいさんの叫び声が聞こた。
「ゲル様はこの国の王子です!!
決して逆らってはいけません!!」
王子だったか。これは更に面倒な事になりそうだ。




