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45話 お飾り

「これは300年以上も前の話です」


「300年!!?」


 驚く俺を相手にする事もなくじいさんは遠くを見ながら話し出す。

 と言っても俺のやってきた内容をそのままカッコ良くしただけに聞こえる。


 一見どこにでもいる冒険者の格好をしているが、素性は不明。

 冒険者試験では既に最強クラスだったとか、伝説の剣で魔獣を一瞬で倒したとかだった。

 魔法も独特で周りを圧倒。

 最後の方だけは破滅する世界を救った事になっていたが、それ以外はほぼ同じだった。


「魔族達も英雄の存在を脅威だと認識した事で争いは起きなくなった訳です」


 魔族!?•••居たのか?

 全く知らん。


「これはハク様の大好きだった物語ですね。

 さぁ!夢を見るほどよく眠れたなら仕事です!!」


「は?」


 なんか急に元気になったぞ?

 このじいさん大丈夫か?


「他の従者を騙せても私を騙すのは無理ですよ!

 あなた様に仕えて20年!

 仕事をしたくないからって記憶を無くしたフリで休もうなんて甘いことはさせません!」


 この世界の俺は一体どんな奴なんだろう。

 結構な頻度で仮病を使って仕事を放棄しているのか?


「仕事はするから俺の素性を教えてくれ。

 このままじゃ恥を晒すだけだ」


「ほぅ、まだ懲りずにフリをしているのですかな?

 いいでしょう!付き合ってあげましょう!!

 そのかわり!!

 しっかり大旦那様が与えてくださった仕事をこなしてください」


 目がマジだ。

 それでも俺について教えてくれるならその話に乗ってやる。


「ハク様の父君と母君は国王陛下主催の食事会で出会いまして、そこから2年ほどお付き合いを始め結婚されました」


「そこから!?

 いや、両親の馴れ初めは聞いていない。

 俺が普通に成人してからの事を話してくれ」


「承知しました」


 じいさんの話だとこの世界の俺はそれなりの貴族らしい。

 大商人の父と貴族の母から産まれた。

 政略結婚だろう。


 左手の模様は本当に生まれた時からあり、英雄の生まれ変わりと周りが騒いだ。

 しかし、魔法は愚か剣術すらも才能がなく、両親はしかたなく商人の見習いとして父の仕事を手伝わせている。


 逆らう事は無いが仕事をやる気が無く、人と交流する事もない——まぁ要は引きこもりだ。


 話を聞く限り陰キャ。

 才能が無さ過ぎて自分で自分が嫌になったのだろう。


「幼少期の頃はとても無邪気で汚れ無く、輝いた目をしていました。

 クッッなのに何故!?」


 おぉぉう。激情型の人だったか。

 菱形の喜怒哀楽グラフで外周を爆走している。

 相当俺の事を考えてくれているのが伺えるが、激情型は少し面倒だ。


「なるほどな。仕事はしっかりやらなきゃダメだよな。

 なら俺はどんな仕事をすれば良い?」


「え!?」


 マジ!?見たいな顔で振り向くじいさん。

 このじいさんは良い人なのだろう。

 信用して今はやるべき事をやって信頼を得る事も大事だ。

 転生?の事は落ち着いてから調べることにした。


「おぉぉ。ハク様にやる気が•••

 ふぅぅ。

 今日の仕事は比較的簡単です。

 面会が3と商談が2です」


 なんか執事っぽい。

 了承した俺はじいさんの後を追って身なりを整える。

 家族の服は着心地最悪だ。

 商談室に入るとデカデカと飾ってある肖像画。

 ただの年寄りだがなんか見覚えある顔だ。


「これ誰っけ?」


 ボソッと一言呟いただけなのだが、じいさんは驚いた顔で見てくる。


「この方は我が商会の初代で商業の神として崇められている偉大なお方ですよ!?」


「へっ、へぇー」


 強めに来られても知らんものは知らん。

 

「へぇーって、この方は鍛治職人をしながら冒険者をし、商会を自分で立ち上げ、英雄に剣を献上しサポートされた立派な方です。

 まさかお名前までお忘れですか?」


「•••ジェイド?

 な訳ないよな」


「そこは忘れてなくて安心しました」


 •••うえぇぇ!?結婚したのか?

 俺ジェイドの血筋なの?

 不安だ。鍛治職人としては優秀だったが、冒険者としては•••んん〜どうだろう。

 商会もパックが立ち上げたようなものだったし。

 

 呆然と固まっていると最初の面会人が訪ねて来た。

 

 豪快なドレスを身に纏った美人で、多分まだ10代の女性だろう。

 会話をしていると少し違和感を感じる。

 会話の中身が無い。

 

 笑っているが愛想笑いにしか見えない。

 1時間程で退席すると俺はじいさんの方を見た。


 ニコニコと笑顔で立っているがこれは•••


「美しい女性でしたね。

 今の方は候補に入れても問題ないと思おます」


 なる程。さっさと結婚しろって事か。

 その後面会に来る女性は1人目と全く同じ。

 愛想笑い、上部だけの会話、将来が〜的な奴だ。


 半日使って3人と見合いしたが、全く心に響かない。

 俺を見ていないからだろう。


「後は商談なので」


 じいさんはそう言って俺を上座の椅子に移動を促す。

 数分後帳簿をもった中年が部屋に入って来た。


「ここからは私が商談をさせていただきます」


 おぉ、完全に仕事には関わらせない気だな。

 中年の男は部屋の中からメイドを呼び、客を通すように命令する。

 命令口調に少しイラついたが我慢。


 メイドが連れてきた少し汚れた顔をした男2人。

 正装しているがぎこちない。

 鍛治職人かなんかだろう。

 ヘコヘコと中年オヤジに頭を下げながら商品のナイフ売り込みをしている。


「仕入れるなら3HCだ。

 1日5本作れるか?」


 3HCって一食分にしかならないよな?

 男2人は顔おを見合わせて困っている。


 そりゃそうだ。この世界で量産なんて出来ない。

 それに一本で一食分じゃ割りに合わない。


 肩を落として退室する2人


「次の方〜」

 

 メイドが1人の男を連れてきた。

 これまた鍛治職人らしき男だ。

 前の2人と違って正装はしていない。


「なんだまたお前か。

 まぁ座れ」


 顔見知りなのか?

 中年のおっさんはため息をしながら男を席に座らせようとするが、男は立ったまま口を開く。


「俺のこのナイフが一本3HCなんて納得できない!」


「何度も言っているだろ?

 まだまだ未熟なんだ。ウチの商会で売るにはそれが妥当なんだよ」


 なんか揉めてる。

 ナイフ持ってるし煽って襲って来たらどうするんだ?

 しかしよく見ると握られたナイフは結構しっかりしている。

 腕は良さそうなのだが性格に難ありか?


「おっさんは鍛治を知らねえな?

 コレだけのナイフを打つのにどれだけ大変だと思ってる!?」

 

「ほぅ?なら自分で売れば良いじゃないか。

 高価なモノは自分で売った方がより多くの利益を得られるぞ?」


 お?なんか盛り上がってきた。

 男は苛立ちながらも耐えていた。


「それが出来ないから来てるんだ」


 苦しそうな顔だった。訳ありか?

 にしてもこのおっさんは意地が悪い

 嫌いだ。


「ウチの値段で卸さないなら交渉は決裂だな。

 帰った帰った」


 男は今にも襲い掛かりそうな顔でおっさんを見ている。


「その人のナイフ借りて良い?」


 やっちまった。

 見るに耐えない状況につい話しかけたしまった。

 俺が言葉を発したことが珍しかったのかじいさんはギョッとしていた。


「ほぅ?あんた喋れたのか。

 あんたはいつも座って見てるだけだからただの人形だと思ったよ」


 やはり性格に難ありだ。

 わざわざ俺に突っ掛かる意味はないのに。

 

 それよりもおっさんの視線が痛い。

 邪魔だと言わんばかりの形相をしている。かと思えばため息をして話し出す。


「ハク様、我々の商会で量産しているナイフはご存知ですよね?

 切れ味、耐久性、デザイン

 全てが一級品です。値段も70HCとリーズナブル。

 こんなナイフと比べるなんてとんでも無いです」


「70HC!?量産でそれは高すぎないか?」


「妥当です。

 我が商会で売っているってことはそういうことですからね」


「これがあんたらのやりかたなんだな!

 もう来ねえよ!!」


 俺とおっさんのやり取りを聞いて感情が爆発した男は怒鳴って出て行った。


「はぁ、では私もこれで失礼します」


 おっさんも嫌味のようにため息をして部屋から出て行った。


「なんか出しゃばったのが不味かったのか?」


「ここの主はハク様です。

 全く問題ありませんが•••••少し驚きました。

 今までのハク様なら会話に入り込むなんてありませんでしたから」


 前の人格はどんなだったのだろう。

 目の前であんな光景見せられたら黙っていられないはずなのに。


 面会、商談を済ませ俺は早に戻る。


「夕食の準備ができましたらお呼びします。

 ごゆるりとお休みくださいませ」


 1人部屋に取り残された。

 ベッドで横たわり伸びをする。

 結構疲れた。

 このまま寝てしまいたいが、まだ確認しなきゃならん事が残ってる。


 転生前の俺の魔法だ。

 そこまで苦労して手に入れたわけじゃ無いがかなり便利な能力だった。

 手放すのは惜しい。


 ベッドに横たわりながらイメージする。

 •••反応なし。


 おわた。

 スキルは全て無くなっているし、想像以上に身体能力が低そうだ。

 諦めて商人の親玉として生きよう。


 幸いなことに知識は残っているし、貴族の生まれなのだからそれなりの生活が約束されている。


「ハク様、夕食の準備が整いました」


 じいさんが呼びに来た。

 ベッドから飛び起き張り切って夕食に向かう。

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