44話 Re.
目が覚めると見覚えのある光景が広がっていた。
俺とパックは死んだのか?
「目覚めたか?」
聞き覚えなある声だ。
「誰?」
周辺を見渡すと誰もいない。
「我を忘れたか?」
「レイか?なんで?
俺は死んだんじゃないのか?」
「説明する為に今全力でそちらに向かっておる。
そこを動くなよ?」
そう言って念話を切った。
俺は言われた通り動かず待った。
1時間程して目の前にレイが現れた。
「いきなり現れるんだな。
それにレイが1時間もかかるなんて相当遠くにいたのか?」
「遠くと言えば遠くだな。
この世界はどんな速度で走り続けても決して端に着くことはない。
それだけ広大な地で見つけてやったんだ。
感謝せい」
「あざぁーす。
それより何で俺はレイの居る世界に来たんだ?」
「ここは死後の世界だと説明しただろ?」
そう言えば前に来た時もそんな事言ってたな。
俺とパックはあのダンジョン?で死んだのか。
「•••パック?」
パックが見当たらない。
一緒に死んだのなら俺と同じ様にこの世界に来ている筈だ。
「レイ!
俺の他にこの世界に来た奴はいないのか!?」
「ハクよ、主は死んでいない」
それは無いだろ。
完全に死ぬ流れだったぞ?
パックと2人で最後を迎える約束をしていたのに俺だけ裏切ったパターンは世間的にどうなんだろう。
「それと主と共にいた大地の神も無事だ」
「ん?今神って言った?」
「なんだ気付いてなかったのか?
主と共に行動していたのは我とは少し違うが存在自体が神だぞ?」
神様ってかなりフランクな性格をしているんだなと思った。
最初はパックと可愛かったが途中からサディストと化していたのは、神としての威厳でも保ちたかったのか?
頭が追い付きそうにない俺を他所に、そこからレイは今の現状を淡々と答えてくれた。
俺がこの世界に来てから閉じ込められていたダンジョンは消滅し、世界中で災害のオンパレード。
大地の神であるパックを失った世界は天変地異を起こした。
存在している生物を世界が無かったものとするかの如く天災にによる虐殺が一昼夜続いた。
ほぼ全ての生物を駆逐した世界は崩壊し、1から再構築を始めるらしい。
「待ってくれよ。パックは死んでないんだよな?
ならなぜ世界はリセットする必要があるんだ?」
「神は元々死という概念が存在しない。
再構築される度に世界も新たに再構築されるだけだ」
話の流れでは死んでると思うが、要は輪廻転生的なあれだな?
それなら死んでない事になるのか?
「まぁ話の流れは何となくだが理解した。
でも俺は俺の関わった人間を生き返らせたい。
その場合はパックを蘇生出来れば叶うのか?」
俺の問いにレイ顔が
何を言っているんだ?こいつは馬鹿なのか?
みたいな顔をしていた。
その後、レイは少し考えて
「無理だ」
バッサリ言われた。
「大地の神を蘇生しても時間は戻らない。
時間が戻ったとしても破滅の流れは変えられないだろう」
俺は考えた。
タイムリープって確か過去を変えて未来を変える事が出来る。
前は死後の世界から現世に戻るとき時間が進んだなら戻ることも出来ないのだろうか?
「レイ、俺を向こうの世界に戻してくれ」
「•••主が望む結果にはならんぞ?」
コイツにも俺の考えが見透かされているのか?
俺の思考セキュリティはガバガバだな。
「まぁ駄目ならその時は諦めるよ。
今は兎にも角にも行動第一だ」
前の俺ならあり得ない発言だ。
人間一度死を覚悟すると結構行動的になれるとは驚きだ。
レイは静かに頷き俺はレイの背中に乗って元の世界に飛ぶ。
2度目となると驚くこともなく普通に戻ることが出来た。
帰ってきた世界は一変していて俺は呆然と立ち尽くした。
目の前に広がる光景に緑はなく、海は完全に枯れていた。
「送ってくれてありがとう。
レイはもう帰ってくれ」
俺の心中を察したのか、レイは静かに死後の世界に帰っていった。
多分これからやろうとしていることがレイにも無謀だと分かった上で、何も言わずに連れてきてくれたんだろう。
感謝です。無謀でも挑戦することに意味がある様な気がする。
「ふぅぅ、やってみるか」
一呼吸してイメージする。
この荒れ果てた地を全てを元に戻す。
海も植物も人間も昨日と同じようにする。
今までにない程膨大な魔力を使用しているのが実感出来る。
頭痛に吐き気が半端ない。
途中で諦めたくなるほどだが、俺は諦めずイメージを続けた。
出現した魔法陣のサイズは既に端が見えない位デカい。
あとは魔法を発動するだけだ。
「戻ってくれ!!」
発動した魔法陣は俺の身体を取り込みながら発動した。
俺は肉体を失い意識だけがギリギリでそこに取り残されたが長くは持ちそうもない。
薄れゆく意識の中、立っていた場所から微かに大地の再生を確認出来た。
成功したのか?でももう無理。
眠い•••
————————————
「——ハク様—ハク様、大丈夫ですか?」
誰?
目が覚めると知らない老人が目の前にいる。
「あれ?ここは」
目の前の光景に呆然としていた。
立派な寝室だ。想像の中にある中世の貴族かと思うほど豪華な装飾。
俺は何故にこんな所で寝たいたのか?
てか、じいさん誰?
白髪のオールバックにガッチリした体つき。
タキシードを着ている60代、その姿は執事を想像して絵に描けば大体こんな感じになるだろう。
「とてもうなされていました故、心配になり起こさせていただきました」
「あぁ、夢か」
「左様でございます」
「••••」
俺とじいさんは少し見つめ合って固まった。
会話が噛み合っていないのは何と無く理解出来た。
違和感を感じた俺は窓を開ける為にベッドから立ち上がろうとする。
じいさんはサッと動き窓を開ける。
おいおい悟りか?
何で俺の行動が読めた?
「いつもの日課でございます」
じいさんはニコリと笑った。
完全に悟りだ。
「左様でございますか」
本意ではない言葉がでてしまった。
「違う違う!そうじゃ無くて一体ここは何だ!?
何で俺は寝ていた!?生きてる!?
つぅかじいさん誰!?」
いつもの如くテンパった。
俺は死んだよな?
世界は元に戻ったのか?
記憶はあるよな?何が起きた?
フリーズした俺を見てじいさんは少し心配した顔をしている。
「私はハク様の執事のザンです」
急に何?
じいさんは続けた。
「ハク様はこの屋敷の家主で、この屋敷には30人の従者がいます。
記憶にございますか?」
「御座いません」
「なるほど•••記憶を失った•••いや、さっきまでとは明らかに違う。
幾つか質問してもよろしいですか?」
ザンを名乗るじいさんは少し目つきを変えて俺に聞いてきた。
ブツブツと言っていた小言は疑っているって事だろうし、俺も色々と聞きたいことがある。
「質問しても良いけど俺も聞きたいことがあるんだ。
先に聞いて良いかな?」
じいさんは快く受けてくれたので俺は日本から転移して数週間の出来事を洗いざらい話した。
と言っても、俺がやって来た事なんてそんなに多くはない。
世界の破滅を防ごうとして結局最後まで見届けられなかった訳だし。
一方的に話だがじいさんは何も言わず聞いてくれた。
そして話を聞いて何かを納得した様にも見える。
「それならハク様はハク様ですね。
左手の紋章が全てを物語っています」
テンパってたから気付かなかった。
確かに俺の左手には薄らと何か模様が入っている。
前のとは少し形が違う気がする。
「その紋章は20年前にハク様が生まれてからずっとありますよ。
神の左手として領地民や貴族、王族まで讃えている程ですから」
「そうなん・・・ん?
20年前?」
「そうです。
私はハク様が生まれてからずっと仕えていますから」
俺は28歳だぞ?
部屋の隅にあった鏡の前に走る。
「イケメンだな」
思わず声が出てしまった。
若く元の姿を微塵も感じないほど整った顔。
これは誰?じいさんはハク様って呼んでたよな?
俺は鏡の前で固まった。
「私が状況を整理したところアナタ様は伝説の英雄ハクレイ様ですね?」
伝説の英雄ハクレイ様?
ハクレイは合ってるが世界を救えなかったから伝説にはなっていないぞ?
「混乱されていますね。
ならば、この国のに伝わる伝説の英雄の話をしましょう。
きっとハク様なら納得出来るでしょう」
じいさんは窓の外を見ながら話し始めた。




