43話 討論の末
何とかして気持ちを前向きにしながら教会に向かう。
「ハクレイ様!急ぎましょう!!」
アモは元気だな。
俺はやる気がないと言うより体がダルい。
前に本で得た知識だと魔力が残り少ないのかもしれないな。
「ハクレイ様!教会が見えました!」
教会が見える?飲み込まれたって聞いたけど変だな。
正面には確かに教会が見えた
パックは何で嘘をついたんだ?
ダンジョンなんて何処にも見当たらない。
「取り敢えず警戒してくれ。
魔獣が出てくるかもしれないから戦闘準備だ」
教会の入り口からは黒い凶々しいオーラが見える。
教会に入ると前の形は見る影も無く、ジメジメとした暗い階段が下に向かって続いている。
「ダンジョンって建屋の中にできるものなのか?
神聖な教会なんて災害から最も遠い存在だと思うんだが」
「私もそう思います」
階段を進むか迷っていると部屋の隅に横たわる冒険者風の男がいた。
気を失っているのかピクリとも動かない。
俺たちは急いで駆け寄り男を起こす。
「あっ、あんた達は冒険者か?」
よく見ると切り傷だらけだった。回復ポーションを与え落ち着いたところで何が起きたのかを聞くと、
「聖女様が•••」
男はたった一言話しただけで亡くなった。
ポーションは確かに効いていた。
外傷は綺麗さっぱり無くなっているのになんでだ?
ここは完全復活して感謝してから何が起きたか教えて俺たちが助けるってのがテンプレじゃないのか?
「くっハクレイ様•••ここは••」
——バタン——
おおぉい!!何でアモが倒れてるんだよ!!
微かだが息はある。
アモを抱えて俺は外に出た。
教会から少し離れた所でポーションを与えるが変化がない。
外傷も無いし、その場に俺も立っていたのになぜアモだけが?
少し考えてからアモの身体を解析した。
身体全体が黒い煙のようなモノに包まれている。
どうすればいいのか悩んでいると目の前にパックが現れる。
「パァァック!!
アモが死にそうだ!!どうしよう!!」
「落ち着けって。
これは呪いの類いだからポーションは効かない。
解呪するには元凶を叩かなきゃダメだ」
元凶ってまだ何も出会ってない。
ダンジョンに入って速攻呪われるって異常事態過ぎるだろ?
「モアナが居れば何とかなるんだが、救出出来なかったのか?」
「いや、まだ入り口に入っただけなんだ」
「それでこれは相当厄介だ。
•••仕方ない。一緒に行くから早く立て」
そう言ってパックは人の姿から可愛らいしペットに戻った。
「この姿になるのは久しぶりだな」
「何でその姿?
何と無くだが人の姿の方が頼りになりそうで安心だったのに」
ペットの姿は少し頼りないし、戦闘に参加する気は無いと意思表示されている気がする。
「この姿をしていないとハクと上手く連携が取れないだろ?
高速で移動されたら一般的な肉体じゃ身体が保持出来ないんだよ」
巧妙に言い訳をしているな?
それでも1人で突撃しなくて良くなったから許してやるか。
パックは俺の肩に乗り小さな声で
「さぁ行こうか」
•••カッコいいな。どっちが従者なのか分からなくなりそうだ。
教会の中に入りパックはキョロキョロと周囲を見渡すと少し苦しそうな顔をした
「どした?」
「エグいな。
ハクは何でも無いのか?」
「何でも無いかって言われてもなぁ。
逆にここって何かあるの?」
パックは少し引いた顔で俺見ながらため息をつく。
「奥から呪いのオーラが溢れ出ているのは理解できるな?」
「おっす。黒い霧みたいなやつな?」
多分あってるよな?
余り頼りすぎても蔑まれた目で見られる可能性がある。
最近のパックは冷たいし、
間違ってても恥ずかしいから知った体で話を進めよう。
「霧?なる程、ハクにはそう見えてるのか。
・・・まぁいい。その霧を吸い込みすぎると普通の人間は身体の内側から呪いが広がって・・・
バタン!だ」
「・・ん?最後は適当だな。
要するに黒い霧を吸ったらバタン!なんだな?
何で俺はバタン!しないんだ?」
「知らん。
逆にコッチが聞きたいぐらいだ」
「あぁ!逆にね!
んん~俺は不思議な力で~的な?
ある種選ばれた一握りのみたいな?」
「馬鹿にしてるな?
さっさと奥に進むぞ」
「さーせん」
俺とパックは奥に向かって歩き出す。
光も無く、暗い階段の様な坂を一心不乱に歩き続けた。
1時間程歩くと暗すぎて全く前が見えない。
ポーチからライトを取り出し点灯する。
光が全て吸収されているらしく明るくならない。
「どうする!?」
テンパった。
「ここからは魔力を広範囲に広げて脳内にマップを作って進むしか無いな」
これが結構面倒臭い作業だった。
魔力が霧に邪魔されて半径50メートル程しか広がらない。
少し進んでは広げてを繰り返す。
数えるのも忘れる頃に広い場所にようやく辿り着く事ができた。
「パックさんパックさん。
魔力感知を使っても何も反応が無いんですけど」
その場所はただ広いだけで何も無い。
抜け道も無ければ誰かが居る訳でも無い。
「ハメられたな。
多分これは罠だ」
贅沢な罠だな。
ここまで豪快に出来るなんて人間の仕業じゃ無いだろう。
「で、結局俺達はどうしたらいいんだ?」
「1度地上に戻ろう。
心配事が増えてきた」
来た道を戻ると行き止まりになっていた。
「あれ?一本道だったよな?」
「フッ閉じ込められたな」
•••はいピンチです。
地上に出れません。
「おぉぉぉい!
「フッ閉じ込められたな」じゃねぇよ!!
どうする!?どうしたらいい!?」
「落ち着け。
ここまで巧妙に、そして豪快に罠を仕掛けるなんて普通の人間の仕業じゃない」
「でしょうね!
俺も気付いてました!!」
「うるさいな!
私だって罠にかかることぐらいあるわ!!」
おぉう。
珍しく声を張って言われたので冷静になることが出来た。
パックは深呼吸をして一旦落ち着いてから冷静に現状を理解していく。
「目的はなんだ?
ハクを閉じ込めることか?なら何故教会なんだ?
本当はもあな?いや、もしかしたらシャネの•••」
ブツブツと肩の上で小言を言い始めた。
少し耳障りだが推理系はパックに任せて俺は出口を探す。
ドーム型をしたこの空間は地下であってるよな?
なら真上を掘ってけば最終的に地上に出る事が出来るんじゃないか?
「よし!取り敢えず掘ろう!!」
空中浮遊で真上に飛ぶが天井に到達できない。
「天井遠くね?」
「ここは多分異空間に飛ばされてるんだよ。
空間が縦、横、斜めにランダムで回転してる。
今ハクが向かってる方向は上じゃ無くて横だ」
天井に到達できないなら掘るのは無理か。
なら光子化すれば出れるかな?
やってみたが空間が俺と一緒に動いているから結局無理。
「レイ!ヘルプ!!」
反応無し。
「あぁあ!!どうしたらいいんだ!?」
毎回テンパる俺を簡単に宥めながら解決策を出すパックもずっとモゾモゾ独り言状態が続く。
「あぁぁぁあぁあ」
声を出してないと気が狂いそうだ。
「ねぇパック、一つ聞きたい事があるんだけどよろし?」
「%&#$%$#*¥#”」
視界は悪いし、パックの独り言は呪文に聞こえてくるし最悪だ。
疲れた。
少し休憩の為に横になる。
目を軽く瞑りどうすればいいか考えていると段々パックの呪文が子守歌に聞こえてきた。
俺は気付かぬ間に眠りに落ちていた。
目が覚めるとパックが居ない。
てか俺はこの状況でよく寝れたな。
周囲を見渡しても相変わらず視界最悪。
「パック~どこだ~」
閉じ込められているからその辺にいるよな?
魔力感知を発動しながらウロウロしていると何かがそこにある。
俺は恐る恐る近付くとパックが寝ていた。
「呪文は終わったのか?」
「・・・・」
「お?シカトか?
そんなんいいから脱出方法わかったなら教えてくれよ」
「・・・・・」
これやばいやつ?
「おいパック!!大丈夫か!?」
「・・・・ハクか。
駄目だ。色々考えたがここから出れない」
パックが色々考えて駄目なら駄目だろう。
「はぁぁ。最後がこんな場所で死ぬなんて想像も出来なかったなぁ」
俺の発言にパックが驚いた表情をしているように見えた。
「ハクにしては落ち着いてるな」
「落ち着いてるってパックが考えに考えた結果無理なんだろ?
それは足掻いても意味ないだろ」
「・・・・・一つだけ方法はある」
何時になく真剣な眼差しを向けてくるパック。
「方法があるのにここまで引っ張るってことはなんかあるな?」
「ハクにはお見通しか。
長いつきあいだもんな」
いや、長くはない。
ぶっちゃけ数日か数十日程度だ。
場の雰囲気を壊さないようなそこは合わせた。
「正直に話そう。
私とハクの力を合わせてハクだけ未来に転生させればお前だけ生きることは出来る」
「は?転移の次は転生!?
生きれるのは嬉しいけど正直クドいな」
今の話だと俺しか生きれない。
パックを犠牲に生きるのは罪悪感ハンパない。
「却下です」
俺は即答した。
他人の人生を背負ってまで行きたくはない。
俺の分も生きてくれ的なのは勘弁だ。
「ハクは2人このまま仲良く静かに眠るでいいのか?
片方でも生きれるならその方が良くないか?」
コイツは俺だけ生きろって言いたいらしい。
「無理です!ダメです!
片方だけならお前が生きろ!!」
俺は叫んだ。
「俺よりパックの方が知識も豊富でみんなの役に立つだろ!?」
俺はパックに生きるように30分程説得したが、パックの肉体は崩壊を始めているらしく、今会話してるだけでも結構ギリギリらしい。
今の状態で転生しても未来の肉体には魂が定着せず、そのまま失敗に終わるから意味ないと説得された。
困った。転生したくない俺と、何とかして俺を転生したいパック。
そこから1時間程討論した末に
「ハクは強情だな。
・・・転生は諦めるよ」
パックが折れた。
俺とパックは2人でこの異空間で死ぬことを決意した。




