42話 夕食
アモの父親の研究書を手に取り粉にした俺。
父親の物を勝手に粉にしてしまった俺はきっと責任を問われるだろう。
まぁいざとなったら金貨で解決すれば良いか?
それより内容だ。
俺が使用していた鉄生成について記されていた。
鉄生成は地中から鉄を生み出すことが出来るが、それが出来ることによって理論上金やプラチナなどのレアメタルまで生成が可能らしい。
必要とされるのは基本魔力だけだが、同じ要領で金などを生成すると代価として寿命が減る事があるらしく、
自分に合った量や質を上回るモノでも同じことになると書いてあった。
本に記された鉄生成の魔法陣は俺の使用している魔法陣とは比べ物にならないほど粗い。
魔法陣がギリギリ発動出来るレベルだから命を取られる訳だ。
戦争は消耗戦だ。
武器や防具は鉄を使うことが多い。
言い方は悪いが海に囲まれたこの地で長期的な戦争は補給がかなりキツいはずだ。
今思えば王国を相手に補給が間に合うはずがないのに勝つことは不可能だ。
友好国があれば話は別だが、どうやって一ヶ月近くも武器や防具を集めたのか疑問だ。
だが、これなら理解できる。
たぶんアモの父親がこの魔法陣を使って不足した鉄を補って他の鍛治職人が武器や防具を作っていたのだろう。
本には魔法陣の書き方が記されているが寿命を減らす危険がある為乱用は禁止とされている。
そりゃ命を削る魔法なんて禁止するべきだ。
これは近いうちにオドから聞き出すとしよう。
他に読んでみたい本は沢山あるが、その都度粉にして怒られたくないな。
本を読むことを我慢してベッドに飛び込みゴロゴロして時間を潰す。
こんな風にのんびりと過ごしながら日々を過ごすのも良いものだ。
ゴロゴロしていると急に大きな耳鳴りがし出す。
何やら変な殺気も感じるが俺に向けられたモノではない。
俺は飛び起きて窓越しに下を見渡す。
家の外には全身を黒いローブで覆った4人がこの家に両手を向けて何かしようとしている。
また王国の暗殺部隊的な奴か?
理由は不明だがアモとアドが危ない事を何となく察知した。
俺は窓を開け急いで4人の元へ飛び出そうとしたが、身体が思うように動かない。
なにが起きた?冷静さを取り戻すのに数秒かかった。
冷静になり辺りを見渡すと正面の家の屋根にはローブ姿の2人が俺に両手を向けて詠唱している。
完全に動きを封じ込められているっぽい。
危険を二人に知らせなきゃと思い叫ぶ。
「アモ!!アド!!逃げろ!!」
叫び声は確かに響いたが、自分の耳元で聞こえただけで反響した感じはしなかった。
「レイ!!2人を助けてやってくれ!!」
左手は完全に沈黙。
どうすれば良いんだ?
俺は必死に頭を回す。
考えろ考えろ考えろ!!
ーードンドン!ーー
「ハクさん!よろしいですか!?」
「・・・・・んん~ぁい?」
夢だったか?俺は寝てしまっていたらしい。
そう言えば夕食の支度をしていたんだったな。
「ハクさん!お姉ちゃんが!」
俺は飛び起きた。
アドの強い言葉は何かあったに違いない。
ベッドから飛び起きキッチンに走る。
「アモ!どうした!?」
「早く食べないと夕食が冷めてしまいます!」
あれ?
「ハクさん申し訳ありません!
お姉ちゃんが早く呼んでこないと料理が冷めてしまうって怒るから・・・」
なんて人騒がせだな。
それにしても変な夢だったな。
「悪い。夕食の前に少し外で風に当たってくる」
俺は外に出て周りを見渡した。
やはり誰も居なかった。
「・・取り越し苦労だったか?
レイ聞こえるか?」
「なんだ?」
左手が光り出し普通にレイと話せた。
「いや、聞こえているなら別にいいや。
特に何かあった訳じゃないが・・・」
「そうか。
それより周囲に防御結界を張っておけ。
ほんの一瞬だったがハクとの繋がりが切れたぞ?
何やらいやな感じがするから気をつけておけ」
そう言って左手は沈黙した。
夢じゃなかったのか?
それなら一体なんだったんだろうか。
少し考えたが2人が無事なら良い。
俺は家に入りレイの言葉通り防御結界を張った。
用心に越した事はない。
「ハクレイ様!!
早く席についてください!!
折角の料理が冷めて台無しになってしまいます」
テーブルを見ると料理が所狭しと並べられている。
「これ全部食べるのか?」
「はい!!でも早く食べないとアドがいるのですぐ終わっちゃいますよ?」
バイキングみたいな量だ。
コレを全部食べてアドは普通に体型を維持しているのか?
相当燃費が悪いんだろう。
俺は席について料理を嗜む。
料理のクオリティは高いが量に圧倒されて食が進まない。
一時間程で全てを平らげ食後のコーヒーを飲みながら俺は2人に本の事を謝罪した。
「申し訳ない。
本を一冊駄目にしてしまった。
俺は本を手にすると本が粉になってしまうのを忘れていたんだ」
2人はぽかんとした顔で俺を見て笑いながら
「あぁ、別にいいですよ。
あの本は誰が読んでも理解出来ませんし、汚れていて売ることも出来ませんでしたから」
え?父親の荷物を勝手に売ろうとしていたのか?
結構薄情というか対応がドライ過ぎるな。
「それに私達の父は研究熱心でしたけど弟子も居ませんでしたし、
家族より仕事ばっかで父親との思い出も特にありませんから」
どこの世界でも父親って少し寂しい存在なんだな。
本についてはお咎め無しになってよかった。
「ハク!今どこだ!?」
「パックか?
今アモの家で夕食を頂いてるところだ」
「緊急事態だ!
直ぐにアモを連れて教会に向かってくれ!」
「一方的に要件だけ言われても困るな。
明日じゃダメなのか?」
「ダメだ!
教会がダンジョンに飲み込まれた!
至急モアナを救出してこい!!」
マジ?
確かに緊急だけど飲み込まれたなら今も明日
も同じだと思うが・・取り敢えず向かうか
「アモ、今から仕事だ」
「今からですか!?」
今明らかにいやな顔をしたな。
わかるぞ!風呂に入って寝たい気持ちは十分わかる!
アドに至っては片付け終わってほぼスリープモードだ。
「教会がダンジョンに飲み込まれるって訳の分からない状態らしいから急ぐぞ」
「教会が!?
急ぎましょう!!」
なんだかんだで真面目だな。
俺とアモは直ぐに家を出て教会に向かった。




