41話 親
パック邸を出て2時間歩くと住宅街に入る。
いつも豪華な家を見ていたが、住宅街は小さい石造りの平屋がたくさん並んでいる。
「ハクレイ様!あそこが私の実家です!」
見るとアモの家は二階建てだった。
意外にお嬢?情緒不安定だったり頭のネジが外れてるのは世間知らずだからなのか?
それにしても実家か。
年頃の娘が男を連れて来たら親は微妙な反応をするんだろうな。
アモに連れられて入口の扉の前に立つ。
「ここで少し待っていてください!」
そう言って一人で家の中に入っていった。
玄関で1人取り残されてしまった。
待つこと三十分。
流石に遅くないか?この場合待っても五分位だろ?
そう考えていると扉が開く。
現れたのは汗まみれのアモだ。
「お待たせして申し訳ございません。
さぁ入ってください」
言われるまま中に入る。
玄関を見て感じた事は外観通りというか、思ったより簡素だった。
絵やら壺的なものはなく、必要最低限のモノが揃っているだけに見える。
リビングにはアモと同様に汗まみれでイスに座ってテーブルにペトーンとしている妹がいた。
リビングはテーブルにキッチンだけで無駄がない。
「アド!ハクレイ様に挨拶して!」
ヘロヘロになりながら妹が立ち上がる。
「妹のアドです!
姉のアモがお世話になっています!
お店の時は失礼しました!」
なんか似てるな。
元気いっぱいで挨拶されたが、顔は疲労を隠せていない。
「なんで2人は汗だくなんだ?」
「お姉ちゃんが片付けと掃除をしろって迫って来て必死にやったからですかね?」
「言わないでよ!!」
なる程。俺が外で待っていたから必死に掃除した訳か。
見た目はマイペースそうな妹だが、案外姉がポンコツだからしっかりしているのかな?
部屋を見渡すと椅子や食器は3つしかない。
「母親はいないのか?泊めてもらうんだから挨拶ぐらいしておきたいんだけど」
「母は仕事なんですよ。
今日と明日は泊まりですので自分の家のようにくつろいでください。
それと今から夕飯の買い物に行きますが、必要のなものがあれば一緒に買って来ます」
「泊めてもらえるだけで十分だよ。
変に気を使わなくて良いから」
「わかりました。
アド!私は買い出しに行ってくるからくれぐれも失礼の無いようにね!!」
そういってアモは買い出しに出かけて行った。
俺は妹のアドと2人で留守番らしい。
あまり知った仲じゃないので俺は少し気まずいが、妹アドは俺の顔を珍しいものを見ているかのように凝視してくる。
「••••ハクレイ様はお姉ちゃんのこと好きですか?」
「唐突過ぎるな。
急にどうした?」
「なんかお姉ちゃん少し変わったんですよねぇ」
「変わったのか?正直俺は今回で会うのは3回目だからアモの事はほとんど知らないんだよ」
「そうだったんですか!?
いや、前から少しポンコツだったんですけど、規則に従順で口煩くてカッチリした性格だったんですよ。
明るくなったから私は今の方が好きですけどね」
妹にポンコツ呼ばわりか。
少し抜けてるとこはあるが確かに1回目に会ったときと2回目じゃかなり違ったな。
「性格が変わったのと俺が好きかって根拠は何なんだ?
仮に好きだとしても、性格ってコロコロ変わるものなの」
「•••••ハクレイ様も残念な人だったんですね」
結構失礼な奴だな。嫌いじゃ無い。
まぁ前の世界と違ってこの世界で関わりのある奴らに嫌いな奴はいない。
「それより様付けはやめてくれないか?
アモにも言ったんだが、俺はそんなに凄い奴じゃ無いし、もっとラフに付き合える方が正直楽なんだよ」
アドは腕を組んでなやんでいる。
俺は悩むほどの事を言ってないぞ?
「自分の偉業に自覚無しか。
わかりました!
これからはハクさんって呼びますね!!
そしてお姉ちゃんとの距離縮めて新たな恋を成就させます!!」
この小娘は一体何言ってるんだ?
馬鹿が1人増えたが様付けが1人減ったからいいか。
「それより聞きたいことがあるんだがいいか?」
「お!?早くもお姉ちゃんの事ですか!?
良いですよ!!何でも答えます!!」
「いや、申し訳ないが全然違う」
「どうぞぉ〜」
明らかに態度が悪くなったな。
テーブルに伏せるように座り出すアド。
年頃の娘は興味の無い話は聞く気がないのか?
仕方ない。アモの話だ軽く盛り上げておくか。
「全然じゃないな。
両親の話とかも聞きたいんだよ」
「何でもお話しします!」
ガバッと起き上がり、目を輝かせてこっちを見てくる。
分かり易いな。単純な性格は姉譲りか?
「母親は出稼ぎに行ってるらしいが何の仕事をしているんだ?
年頃の女の子を残して2日も3日も帰ってこないなんて普通じゃない気がするんだが」
「あぁ〜お母さんですか。
お姉ちゃんも私も何の仕事をしているのかよく分からないんですよ。
そう言えばお父さんが居なくなったから結構家を空ける事が増えましたねぇ」
お父さんが居なくなった?
サラッと凄い事ぶっ込んできたな。
聞いて良いのか悩んでいるとそれを察したのか、アドから話し出してくれた。
「5年前の戦争で居なくなっちゃったんですよ。
お父さんは鍛治職人で補給や防具や武器の修理担当だったんです。
前線にいた訳じゃないのに不思議ですよね」
「その戦争ってのはそんなに凄い規模だったのか?
その時の事を俺は良く知らないんだ」
「•••そう言えばハクさんは凄い魔物と激しく戦った末に相討ちになったんですよね?
あれ?ん?ハクさん足ありますか?」
後半は震えながら俺を見ながら聞いてきた。
今更何を言っているんだ?
「俺は死んでないんだよ!
言い伝えと違って——封印?されてたんだよ!」
疑うように俺の足を見てホッと溜息をして一安心するアド。
「驚かさないでくださいよ!
霊体かと思って冷や汗が出たじゃないですか!」
「さーせん。
それでその戦争ってどんなだったんだ?」
「そんなに詳しく憶えてないんですけど•••
街の魔道具屋も鍛治師も殆ど参加していて凄くピリピリしてましたね。
冒険者の方達は逃げ出して戦える人が少なくて相当大変だったらしいです」
前にオドに聞いたが実際の非戦闘員の話は少し違うな。
逃げ出す奴の話なんて出て来なかったし、非戦闘員を戦闘に参加させるなんて相当酷い状況だったってことか。
この場の雰囲気も悪くなりそうだからあまり長くこの話はしない方がいいな。
「それよりアモは何で戦士になったんだ?
職種はそれなりに選べただろ?」
「お姉ちゃんは正義感が強いってのもありますが、思い込みの激しい性格なので。
お父さんが居なくなってから私達家族を守るって始まって、それが段々膨らんで街を守るになったゃったんですよね」
膨らむって限度があると思うが、アモの性格ならまぁ納得だ。
初めて会った時も人の話を聞かない奴だった。
一度疑いだすと止まらないからな。
それでも人の上に立つ程の才能、それなりに剣を上手く操る才能があってよかった。
一歩間違えれば死んでいてもおかしくない立場だったからな。
小一時間程アドと話しているとアモが買い物から帰ってきた。
大量の食品を抱えて前が見えないほどだ。
「只今戻りました!」
「買いすぎだろ!?
お前は何人分つくるんだよ!?」
「え?買い物は毎回この位買い込んでますが?」
「それは嘘だろ?
量からして10人分は余裕であるぞ?」
「・・・ハクさん
私が大食いなんですよ・・」
耳を疑った。
若いから食欲があるのは良いことだが10人分は過食症って病気じゃないのか?
アドの全身を眺めてみる。
・・・いや、入らないだろ?
スラッと細い体のラインをみる限り無理だ。
「じゃあ私とアドは3人分の料理を作るのでハクレイ様はお父さんの部屋でくつろいでいてください。
部屋は二階の一番奥の部屋です。
本が沢山ありますからハクレイ様なら自由に読んで頂いて構いません。
私たちなにが書いてあるのかさっぱりなんで。
アド!アンタが一番食べるんだから手伝って!!」
「はぁい」
アドはヤル気のない返事をしながらもキッチンについて手伝いを始めた。
言われたとおり俺は父親の部屋で夕飯が出来るまで待つことにしよう。
二階に上がり奥の部屋に向かう。
ドアを開けると10畳ほどの部屋の壁一面に本がギッシリ詰まっている。
他はベッドと勉強机しかない。
相当な読書好きだったのかな?
タキトルを見ると伝説の金属生成法や武器、防具の作り方などがある。
鍛治職人だったっけ?
相当勉強熱心だな。
本棚全体を眺めていると、少し古い革で出来たタイトルの無い本が目に入った。
なんとなくタイトルが気になって手が伸びる。
本を持つと瞬く間に粉々になってしまった。
「やっちまった」
思わず声がでる。
能力が勝手に発動してしまうのを忘れていた。
しかし内容は全て理解した。
アモの父親は金属の研究をしていたようだ。
他の本も読みたいけど粉々になってしまうので一旦保留にした。
本でアドの父親が長年の末辿り着いた研究成果が理解できた。
しかし俺はその内容に驚いた。




