39話 レイ
料理は任せろと相当気合の入っているアモ。
女子力高めの奴ほど料理が下手ってのがオチだ。
しかしアモは戦士!
なら料理が上手いって事になるで良いのかな?
備え付けの冷蔵庫から材料を取り出し調理が開始される。
包丁捌きもフライパンの煽りも上手い。
調味料は味見しながら選んでいるし、何より見ていて効率が良い。
これなら料理の期待大!
「ハクレイ様、1つ伺ってもよろしいですか?」
神妙な面もちで話し出すアモ。
俺に好き嫌いは無いぞ?
「良いけど料理に支障の無いように会話してくれよ?」
急に真顔になるアモ
「ハクレイ様とパック様はどんな関係なのですか!?」
それって今この状況で必要な事か?
かなり面倒だし適当に流そうとしたが、アモは真剣な眼差しで俺を見つめている。
確かに今更だが、よく考えたことは無かった。
「アモから見て俺とパックはどんな感じに見えるんだ?」
「正直申しますと・・・生涯を共にする伴侶に見えます」
無い無い無い無い!!
それは妄想入りすぎだろ!?
貴重な意見として聞きたかったがまさかの返答に多少動揺する。
動揺している事を悟られないように落ち着いて聞き返す。
「なんで夫婦に見えるんだ?
俺とパックが話す場を見たのは今日が初めてだろ?」
料理の手が止まり小声で話し出すアモ
「そうなんですけど・・・
同じ家に住んでいるし、パック様はハクレイ様の事をハクって呼んでいました。
お二方が話している様は長年連れ添った仲の良いやり取りに見えたものですから・・・」
なる程、確かに誤解を与えるのかもしれない。
最近は人の姿をしているから本当のパックの姿を知らない奴なら尚更だ。
「誤解をしている様だから教えておくが、アモの想像とは全く異なる関係だ。
それに俺はパックの名付け親だぞ?
夫婦っていうより親子だな」
嘘は言って無い。説明が面倒だから納得してくれると助かるが•••
「そうだったんですか?
確かに親子なら一緒の家に住んでいても何ら不思議では無いですもんね!」
納得出来たのか?アモが単純で助かった。
それならそれで別にいいが、やはり1人だけ特別に見えるのは良くないんだな。
ならば、
「アモも俺のことハクレイ様じゃなくて適当に呼びやすい名で呼んでくれても構わないぞ?
別に様を付けるほど立派な人間じゃないし、オドだって様は付けてないだろ?」
これなら特別なのはパックだけじゃなくなる。
「なっっ何を言っているんですか!?
ハクレイ様は我々のような平凡な人間では決してありません!!
貴方のような人こそ英雄として崇められるべきです!!
そもそも我々は魔法と剣技の両立は—————」
何か変なスイッチを押してしまったらしい。
そこから1時間位アモの話は止まらなかった。
「わかったわかった。
アモが俺を称えてくれてるのは十分理解した。
そろそろ夕飯を作らないか?」
顔を赤くして申し訳なさそうに料理を再開するアモ
すると何か嫌な気配が近付いて来るのを感じる。
俺は立ち上がり外に出る
「どうされたんですか!?」
包丁を持ちながらついて来るアモ
周囲を鉄の壁で覆っているから攻撃を開ける事は無いと思うが、嫌な予感は確実に俺たちの元に近付いて来ている。
「アモは車の中で待機だ」
そう言って俺は刀を構える。
構えた数秒後、魔獣の雄叫びらしき声と同時に鉄壁が熱を帯びて赤くなり溶け出した。
鉄壁は数秒で溶け、開いた穴からは黒っぽい魔獣が確認出来る。
俺は穴からは出て魔獣と対峙した。
黒と赤の毛をした•••狼?
縞模様の毛は普通に見たら病気に見えるほど不気味だ。
「アモ!!
黒と赤の毛をした魔獣ってなんだ!?」
「わかりません!!」
マジか。
しかし対峙したは良いけど襲って来る気配はない。
何か意味があるのか?
「主は何者だ?
ここに何をしに来た?」
喋った?
「アモ!!
魔獣って喋る奴いるのか!?」
「わかりません!!」
即答された。
テンパって考えるのをやめたな。
話し合いが出来るならそれに越した事は無い。
「俺の名はハクレイ。
この洞窟ダンジョンを調査しに来ただけだなんだけど、お前はこの洞窟の主か?」
「•••••主は居ない。
ここは神が創生した神聖な場所だ。
人間如きが入って良い場所では無い。
見張の魔物達は主が倒したのか?」
「見張の魔物?
まだ1匹も会ってないぞ?」
「それはあり得ない。
この階層まで500は居たはずだぞ?」
話がよく分からない。
俺たちが入って来る前に駆逐されたのか?
「話し合いが出来るならこの洞窟の詳細な事を教えてくれないか?
それなら直ぐに出て行くんだかど」
これならお互いに迷惑を掛けずにか済む。
俺、ナイス!
「ならん!!」
えぇぇえぇ!?
「たかが人間に、この地の事を教える事は出来ん!!
この先に進むこともな!!」
なんか怒りだしたぞ?情緒不安定な奴だな。
これは戦わなきゃダメなパターンだな。
俺は戦闘態勢に入る。
「ハクレイ待て!」
「ん?レイか?」
左手が光出す
光る左手を見て魔獣は後退りしている。
確かに周囲が暗すぎて後退りしたくなる程眩しい。
光る左手からレイが現れた。
「ハクレイよ、此奴の相手は我がする」
「別に構わないけど急にどうした?」
「この世界の霊体と一度手合わせしたくなっただけだ」
この狼は霊体だったのか。
霊体じゃ刀攻撃は効かないだろうし丁度よかった。
「よし!レイ!行ってこい!!」
自分で言ってて笑えてきたが、ポ○モンみたいだな。
「さて、ウォーウルフよ。
其方の相手はこのレイがする事になった。
いつでも良いぞ?」
この狼はウォーウルフって種族だったのか。
ウォーって戦争って意味だよな?強そうだ。
パックと同じでレイも博識だな。
レイと対峙した途端に後退りしていた狼は戦闘態勢に入る。
地面すれすれの低い構えで飛び掛かるタイミングを狙っているのか?
俺からしたらレイはスキだらけに見えるけど、対峙した当人同士にしかわからない何かがあるのか?
「実力差が理解出来ない程のバカではないらしいが、仕掛けて来ないならこちらから行くぞ」
そう言うとレイの体からオレンジ色のビー玉が大量に出てくる。
何かを察したのか、狼はレイに向かって突進して行く。
【雷撃】
オレンジの球からレイを囲む様に雷が放出された。
狼は雷撃とやらを喰らい痙攣しながら倒れた
「なんだこんなものなのか?
つまらん」
そこまで言い切るか?
レイの戦闘は見た事ないから少し楽しみだったが圧倒的な強さだった
「苦しんで死ぬより楽に死なせてやろう。
これで終わりだ。
ハクレイ、神の咆哮の威力よく見ておけ」
そう言ってレイは口に魔力を集めた。
地響きを起こし、空間が歪んでいる様に見える
———【神の咆哮】———
物凄い爆音と共にレイの口から圧縮された空気の様なモノが放出される。
ドン引くほど強力で、3時間かけて調査した5階層のマップを全て白紙にする程の威力だった。
やってやったぜ!的な感じでレイは気分良くしちゃっているが、正直な感想は勘弁してほしい。
明日は5階層の再調査になってしまった。




