34話 地下
シャネ救出の準備に取り掛かる。
昨日はどこで寝たかって?
それはパックの豪邸だ。
サーモファルス王国で最大の規模を誇るジェック商会。
その会長であるパックの家はシャネの邸宅を遥かに凌駕したものだった。
執事にメイド、専門シェフに運転手まで雇っていた。
何故か俺はパックの豪邸で主人扱いをされている。
残念な事に寝室がパックと同室だった。アイツは俺を魔力補給ポーションと勘違いしているらしい。
そしてパックの豪邸は俺専用の地下室が用意されていた。
好き放題に魔法の実験が出来る位の強度があり、広さもかなりあるらしい。
魔法の実験をしたいが、寝てる間にパックに相当な量の魔力を吸い取られてヘロヘロだ。
パックは
「あと1日しか無いから頑張ってくれよ」
と、一言だけ言って仕事に行ってしまった。
んん~なんて酷い奴だ。
魔力が回復したら俺は必要ないのか?
そして俺は何時になったら休めるのか?
この世界に来てから結構働き詰めの気がする。有給もない。休みたい。
・・いや、馬鹿な事を考える前に空間移動の魔法を完成させなければシャネの命が危ないんだった。
よく考えてみると空間移動ってのはどんなイメージをすればいいんだ?
現在地から目的地までの距離を無くすでいいのか?
壁とかの障害物はすり抜けるイメージでいいのか?
良いイメージが湧いてこない。
考え込んでいると左手の甲が光り出す。
「ハクレイはなにを悩んでいるんだ?」
レイが話しかけてきた。
「レイには俺が悩んでいたことが伝わったのか?」
「伝わったというか気にかけていたからなぁ。
で、何を悩んでいる?」
俺は空間移動の事を話した。
「簡単な事じゃないか。
ハクレイは死後の世界から移動できたのは何故だか覚えていないのか?」
言われてみると確かにそうだ。
光子化した事で空間を飛び越えることができたんだった。
でもレイの背中に乗って来たから自分で移動はしていない。
「そんなに悩むなら我の技をハクレイに授けよう。
それなら空間移動も出来るだろう」
助かる!
これなら無駄に魔力を消費せずに空間移動ができるじゃないか!
【光子化獲得】
【空間移動獲得】
【異空間移動獲得】
【神の咆哮獲得】
【威圧獲得】
【念話獲得】
「••なんか色々獲得したけど神の咆哮とかなんなの?」
「お前がやろうとしている事は何となく分かっているからな。
人を殺したくないなら使うと良い」
そう言ってレイは念話を切った。
パックもレイも俺の中を覗きすぎだ。プライベート無し!
空間移動を身に付けたのでシャネの元に移動してみる。
キャンピングカーの中に移動すれば良いのかな?
よし、やってみよぉぉ!!
やり方を知らないので目的地をイメージして
【空間移動】
•••何も起きない。
「レイさんレイさんいいですか?」
左手の甲に話しかける。
「•••」
シカトされた。
パックに聞いてみよう。丁度念話を手に入ったし、これなら長距離でも普通に会話出来るから楽だろう。
【念話】
「おーい。パック聞こえるか?」
「•••」
おかしくない?なんでみんなシカトするの?
嫌われる事は何もしていない筈だ。
嫌な予感がしたので一度地下室を出る
階段を登っていと壁っぽい何かにぶつかった。
よく見ると結界が張られているっぽいな。
「おーい!!
誰かいませんかぁぁ!!?」
はいシカト。
•••どうやら俺は知らない間に閉じ込められていたらしい。
多分出るには結界を突破しなきゃダメなのだろう。
どうする?てかなんで身内に閉じ込められなきゃなんないの?
考えてもしょうがないので結界を突破する為に結界を解析してみた。
【隔離結界—怨—】
えぇ!?いったい俺がなにをした!?
「解呪解呪!!」
【解呪獲得】
【解呪完了—隔離結界解除】
やられた。身内に王国のスパイが居るらしい。
探し出さないと面倒な事になりそうだ。
結界を破壊し、そのまま外にでる。
辺りを見渡しても誰も見当たらない。
どうしたものか。パックに報告するか
【念話】
「パック聞こえるか?」
「ハクか?どした?」
「地下室で空間移動の練習してたら隔離結界-怨-ってので閉じ込められたんだけど、お前の屋敷治安悪くない?」
「あぁ、多分ヴェルだな。
シャネを取り戻させない為だろう」
「ん?ヴェルって執事のヴェルさん?
あれ?シャネの執事だよな?
助けたいのが普通じゃないのか?」
「言ってなかったっけ?
ヴェルは王国側の人間だ。シャネを監視して家を焼いたりしたのはヴェルの仕業だったんだ」
「はい?」
「多分シャネの死を望んでいるのはヴェルだろう。
これはシャネ本人には言ってないから連れ出したときも言わないでくれ。
ヴェルも使い道は山ほどあるからな」
聞かなきゃよかった。
本当にこの世界は恐ろしい
なんでもしてくれる相棒は完全な敵だったなんて信じたくないな。
でもパックの話を聞くと思い当たる節がなくもないな。
ヴェルさんは家が焼かれたときも落ち着いてたし、
組合が襲われたときも俺を避難させようとしていた。
火災に慣れたんじゃなくて知っていたとか?
避難させようとしたのは魔獣を倒されたくなかったから?
疑い出すとキリがない。
俺は自分の仕事を終わらせるか。
【念話】
「おいシャネ、聞こえるか?」
「・・・ハクレイか?」
「当たり前だ。
それよりおまえの周囲に人の気配はあるか?」
「お前ハクレイなのか?
生きてたんだな。五年以上もどこで何をやっていたんだ?」
なんかテンション低いな
「さーせんした。
話は後だ。その感じだと人の気配は無さそうだな?よしっ!!」
【空間移動】
一瞬で車の中に移動出来た。
これあると瞬歩いらないな。
突然現れたのに特に反応しないシャネ。
5年も経たのにシャネは髪が伸びた位で全然変化を感じられない。
ただ少し痩せたか?気力も感じられない。
よし!久しぶりの再会だし、一発かましてやりますか!?
シャネに助ける事を伝えて元気になって頂きましょう!
「おっす!オラ地球生まれのハクレイだ!
助けにきたぞ!!
って言っても明日連れ出す予定なんだよな?」
シャネは暗い顔をして下を向いてしまった。
元気ないから明日じゃなくて今連れ出した方がいい気がする。
「ハクレイ・・」
「はい?」
「死刑の日は助けようなんて思わないでくれ。
これは王国の人間の問題だ。
それにパックにもモアナにも言ってなかったが、
・・・死刑執行は今日なんだ」
「・・・マジ?いつ?」
「ここまできて嘘は言わないよ。
あと3時間程の命だ。
最後にハクレイの元気な姿を見れてよかった」
暗いよ。てかコイツ死ぬ気満々だな。
なんとかして助けてやりたいがどうする?
【念話】
「パックさんパックさん緊急事態です!
死刑執行日は今日らしいんだけど連れて帰っていいか?」
「そうきたか。
モアナが明日の死刑執行を邪魔すると見抜いて日程を早めた訳だ。
段取りはモアナと相談して指示するから少し待機しててくれ」
一方的に念話を切られた。
そうしている間にパックの死刑執行時間は近づいている。
あと3時間。どうする?




