33話 流れ
サラッととんでもない事を言われてしまった。
無職からいきなりの社長就任なんて普通の世界なら考えられないだろう。
「そもそもなんで商社なんて立ち上げたんだ?」
「それなら私が奥で話そう。
ハクにも5年以上前の事を色々と説明しなきゃならないからな。
ジェイド、店番を頼む」
そう言って商談室の奥にあるVIPルーム的な所に案内された。
どうでもいいけど、この建物は一体どれだけの費用をかけて改装したんだろう。
VIPルーム的な部屋のソファーに腰掛けると神妙な面持ちでパックは話し出した。
「色々とオドから聞いているだろうが、真相を話す。
私はハクが居なくなったあの瞬間から背筋が凍る程嫌な感じがしてな。
色々と調べてみたら王国の奴らがハクを封印したって騒いでいたんだ」
どうやら俺が死後の世界に飛ばされたのは王国の奴らの仕業だったらしい。
異変に気付いたパックは俺を探したが、封印されたであろう壺的なやつは探し出す事はできなかった。
王国の奴らは俺を封印した後、暗殺部隊の連中を悪魔召喚の生け贄に捧げた。
そしてその悪魔達にレックロームの襲撃を命じた。
暴れ出す悪魔を倒すため、そして封印は失敗したと思わせるためにパックが俺に成りすまして悪魔の討伐に出た。
悪魔を倒している最中に魔獣を召喚され、仕方なく分身体で応戦していた。
残りの魔力もあまり残って居なかったが、なんとか悪魔将軍を倒すことは出来た。
「オドの話だと悪魔将軍と相討ちになって俺が死んだことになっていたぞ?」
「そう見せただけだ。
そこらに転がっていた死体をハクに似せて放置したからな」
死体に細工して俺が死んだことにしたのか。
「そしたら俺が死んで王国の奴らは相当喜んだんだろうな。
暗殺しようとしたり封印しようとしたり、結局そいつ等は何がしたいんだ?」
「お前の圧倒的な力に怯えているのさ。
怒らせたりして王国を潰しに来るかもしれない不安が今回の騒動の原因の一つだ」
俺の評価は王国で相当凄いことになっているってことらしい。
「そういやさっきからパックの魔力をあまり感じられないのは何でだ?」
「お前からの魔力供給を5年以上も得られなかったからな。
魔力の殆どを戦闘で使ってしまった私は、普通の人間と変わらない。
むしろ自分の力で魔力を回復出来ないから人間以下だな」
なんでも知っているパックは俺が居ないと思いの外ポンコツらしい。
完璧に思えた存在にも意外な欠点があった
「ハクが生きているのは知っていたが、生活が苦しくてな。
なんとかして生き延びるためにこのジェックをジェイドと一緒に立ち上げたんだ」
簡単に立ち上げたなんて言ってはいるが、実際起業するってことは相当大変だったのだろう。
普段通りに振る舞ってはいるが、この話を聞いた後だとパックはかなり疲れているように見えなくもない。
「パックには苦労かけたな。
こっからの業務は俺も手伝うから安心してくれ。
社長ってのは何をすればいいんだ?」
「ぶっちゃけハクは何もしなくて良い。
せっかく死んだ事になったのに生きてるアピールしてどうするんだ?
また王国から刺客が送られてくるのは面倒だろ?」
それもそうだ。けど、何もせず金だけもらってもなんか気が引ける。
元々何もやらせる気はないのか?
「やることが無いなら何故俺は社長の座に付いているんだ?」
「お前の名前が王国の上の奴等に知れ渡っているからだ。
名誉あるハクレイ様が社長を勤める会社に手を出しにくい状況を作りたかっただけだ。
王国はハクが死んだのは会社を立ち上げた後ってことになってるからな」
嘘も方便だな。
「ハクを英雄に仕立てる。
英雄の死を利用してレックロームをヘイル王国から独立させて国を作る。
その英雄が使っていた道具類はジェックで買える。
ここまでの流れを造るのに1年費やしたんだぞ?」
並々ならぬ努力をしたんだな。
途中から私利私欲が少し入っているが仕方なかったのだろう。
食うためには稼がなきゃならん訳だ。
「パックの努力も拝領も素晴らしいの一言じゃ到底表しきれないな。
俺のことも考えての行動だったんだ。
感謝しかないよ。ありがとうな」
礼を言ったらパックの口角が一瞬上がった。
照れ隠しをしなくても普通に喜んでくれて良いのに、クールな奴は本当に大変だ。
一通りの流れは理解した
王国は俺が相当嫌い。
俺を殺す為なら町に被害がな出ることも全く気にしない王国が俺は嫌いだ。
シャネが嫌う気持ちが理解出来る。
「そうだ!
パックはシャネが王国につかまっているのは知ってるよな!?
地下牢に閉じ込められているらしいが、アイツを救ってやらなくて良いのか?」
「問題ない。
シャネはキャンピングカーに乗ったまま閉じ込められているから王国のヘタレ戦士じゃ手も足も出ないよ。
あの車を破壊できるのはこの世界でハクしかいないからな」
キャンピングカーを盗んだ犯人はシャネだったのか。
俺の寝床をそんな風に使うなんて何を考えているのやら。
「それとハクには空間移動の魔法を身につけて欲しい。
それさえ出来ればシャネはキャンピングカーとこの国を自由に出入り出来るからな。
最終的には死刑の決行日にキャンピングカーとシャネを丸ごと救い出す計画だ」
「シャネを脱走させたら大変な騒ぎにならないか?」
「その点は問題無い。
シャネが捕まってから死刑決行日まで面会すら出来ない取り決めだが、
当日に脱走すれば問題ないだろ?
それに今のこの国を仕切っているのは聖女モアナだ。
あの聖女が親友の死刑を黙って許すはずがないだろ?」
確かにモアナなら国を任せても頼りになりそうだが、シャネの脱走は話が違う気がするな。
「所々話が飛躍してて理解出来ないけど今はいいや。
とりあえずシャネの脱走を手伝えばいいんだろ?
死刑の日はどの位先なんだ?」
俺の質問にパックはニヤリと笑って答える。
「死刑決行日は明後日だ」
「・・・えぇぇぇえぇ!?」
何故笑ったのか理解できない。
5年の歳月を経て性格が少し歪んだのか?
兎にも角にも実質明日で全ての準備を余儀なくされた訳だ。
・・・頑張ります。




