29話 伝説のアレ
数少ない読者様、遅くなって申し訳無いです。
組合を出て数分後、俺は周囲を見渡す。
シャネを連れて空を飛んでいる時の視線はない。
そもそもここ最近の騒動は色々とおかしなことになっている。
結局誰が狙われているんだ?
暗殺部隊の親玉はミノスを倒した事になってるジェイドを狙っていた。
同じ奴が指揮しているならなぜシャネの邸宅が狙われたのか?
シャネを狙っているのがゲルで、ジェイドを狙っているのがカインだ。
ジェイドが狙われた理由はともかく、シャネが狙われる理由がよくわからん。
考えながら歩いていると全く知らない場所を歩いていた。
迷った?いやあり得ない。
組合からシャネ邸までは一本道の筈だ。
段々霧に覆われてきた。
今までの俺ならビビって闇雲に走っただろう。
しかし!今の俺には無重力浮遊がある!
空に飛び上がる
全然知らない森が続く。
はい、ピンチです。予想を超えて時空まで超えたか?少し周囲を飛んでみたがレックロームではない。
一体ここはどこだ?パックも居ないから心細い。
森全体が薄い霧に覆われているが、少し先は霧に覆われていない。
そこに向かってみる。
霧に覆われていない所は湖らしく少し暖かい。
昼寝するには最高の場所だ。
湖の中央にポツンと浮島があり、変な生き物が昼寝している。
なぜだろう。
その生き物に惹かれる。
気が付くとその生き物の近くに降りていた。
見たこともない風体だ。
知っている生き物に例えるなら鹿かな?
サイズと角は鹿でいいが、尻尾や足などは違う。
麒麟か?伝説の麒麟なのか?
恐る恐る近付いてみる。
「何者だ?」
喋った!?こえぇぇえ!!
その生き物の声は低い男性のようだった。
睨むその赤い瞳は威圧感がハンパない。
こえぇぇえ!
「えぇっと・・名前はハクレイ。
歩いてたらこの森に迷い込んだらしくて困ってるんだよ」
「それはありえない。
この空間は普通の人間には到達出来ない筈だ。
お前は人では無いな?」
「ガッツリ人間です!
元の世界に帰りたいんだけど、どうすればいい?」
「帰るのは簡単だ。
向こうの世界で生き返ればいい」
コイツは何を言っている?
「意味がわからんか?
ここは死後の世界だ」
「・・・死後の世界?
え!?俺死んだの!?いつ!?」
取り乱す俺をみてソイツは笑いながら話してきた
「面白い奴だ!気に入った!
時が来るまで話し相手になってやろう!
質問があれば全て答えてやろう」
何を気に入った?楽しそうにしてるけど俺は全然楽しくないよ?
「えぇっと・・・名前はある?
あるなら聞いておきたいんだけど」
「我に名はない
お前たちの世界・・人の生きる世界では神獣とか神霊と言われているらしいがな」
ん?前にシャネが言ってたやつか?
確か目撃者ほぼ0の伝説的なあれか?
「神霊と神獣は同じだったのか?」
「多分我のことだろう。
800年以上前に一度そちらの世界に行った時そう呼ばれた気がしたぞ」
おぉぉ!!俺は凄い奴と話しているんだな!!
興奮が収まらない俺をみて、神獣は嬉しそうにしている。
良い奴なんだな。
「えぇっと、さっき言っていた時が来るまでって何の事?」
「死後の世界は魂の浄化と過去の清算が起こる場所だ。
心残りである感情、恨みや悲しみなどの感情はここで全て清算される。
清算が終わると浄化し無に帰す訳だ」
「無に帰すって何も残らないってこと?」
「そうだ。
生を受けた瞬間、人間は全て平等だ。
死んだ後も全て平等でなければならないからな」
平等は嘘だ。
金持ちやイケメンなどは人生を謳歌できるが、凡人の俺は決して楽ではなかった。
「お主は不満そうだな」
「それはそうさ。
人間は全て平等じゃないからな。
平等ならなぜ人には差別が起こる?
なぜ戦争が起こる?戦争は強者が生き残り弱者が死ぬんだぞ?」
不満をぶちまけた。俺は偽善が大嫌いだ。
「なら聞こう。
人間の命は幾つだ?」
「それは一つしかないだろ?
死んだら全て終わりなんだから」
「そうだ。
命という掛け替えのないモノを平等に1つ貰っているだろ?
2つもらっている奴はいない筈だ」
あぁ、その規模の話か。
なら俺には理解できないな。
当たり前に生きている命が1つ=平等は屁理屈だ。
多分水掛け論になるから話し合いにならないだろう。
次の質問をする
「この世界で生き物は居ないのか?」
「この死後の世界で自由に過ごす事が出来るのは実体のない精霊だけだ。
精霊は本来、魂だけの存在だ。
そしてその頂点が我になる」
「頂点ってことは王様ってことだな。
じゃあ俺はなぜ死んでいないのにここにいるんだ?」
「本当に死んだ自覚がないようだな。
どれ、少し人間の世界をみてやる」
神獣は目を閉じて何かをしている。
俺が死んだか確認しているようだ。
「おかしいな。確かに死んでいない。
そもそも死体が無い。
しかし実体のままこの世界に来れる筈が無いのだが・・・
貴重な人間もいるんだな」
よし!!死んでないなら直ぐに戻ってシャネ達の事をパックに相談しよう!
「頼む!俺元の世界に戻してくれ!
俺はあの世界で守らなきゃならない奴らがいるんだ!」
「・・・そうか。
でも残念だがそれは叶わぬ願いだ。
この世界の行き来は実体がある状態では不可能だ」
なら俺はどうやってここに来たんだ?
頭をフル稼働させる。
が、全然わからない。んん~どうすればいい?
「主は今なにをやっている?」
「ん?単純に帰る方法を考えてるだけだよ?」
神獣は驚いた顔をして俺を見ている。
「なる程。
多分帰れるぞ」
「急にどした!?」
「そうか実感が無いんだな。不思議な奴だ。
今分かり易く説明してやろう。
今お前が必死になって考えているとき肉体が光子化していた」
「光子?光の粒子ってことか?
そんなのありえないだろ」
全く実感がなかった。俺はいつから光になったの?
「確かにありえない。
生きている人間が光子になることは聞いた事が無いな。
人間は死んで初めて光子化するんだからな」
なるほど、死んだ肉体から出てくる魂が光子ってことか。
「光子を実体の形に留めることが出来るのは精霊たけだ。
自らの意志で光子になる事が出来るから精霊は人間の世界に行くことができるのだよ」
「なら光子になれる俺は帰れるってことだな!?」
「理論上はそうなるな。
上手く出来るか分からんが我が乗せて人間の世界に送ってやろう。
背中に乗れ」
おぉぉ!!それは有り難い!
「じゃあ、おなしゃす!!」
俺は神獣の背中に乗った。
神獣は立ち上がり歩き出す。
「目を閉じて頭で帰る方法を考えろ。
光子化したら一気に空間を飛び越える」
言われると難しいな。
頑張って頭をフル稼働させる。
「光子化が成功したな。
一気に駆け抜ける!しっかり捕まっていろ!」
言われた通りしがみつく。
「着いたぞ」
なぬ?しがみついただけで何も感じなかったぞ?
周りを見渡すと確かに見たことのある景色だ。
あまりに一瞬の出来事だったが、無事レックロームに到着した。
「本当にありがとう。
あまりに一瞬の出来事でまったく分かんなかったけど助かったよ」
「良い。
我もなかなか楽しい人間と出会えたからな。
人間も光子化すれば我々精霊と同じく光速移動も可能になる。
久しくいい勉強になった。感謝するぞ」
どうやら光子化すると光の速度で移動できるらしい。
縮地舜歩も同じ原理なのかな?
何はともあれ無事帰ってくることが出来て一安心した。




