17話 己の凄さ
昨日の今日だけど二人での夕食は少し会話に困りそうだな。
パックがいれば何とかなるのか?
下らない考えをしながら歩いているとパックが話し始めた。
「シャネはさすがだよね。
ハクの作ったカバンの価値をすぐに理解するなんてさ」
「確かにな。
シャネは鑑定とか解析のスキルを持っているのか?」
「アタシはスキルなんて持ってないよ。
ただし、物の価値とかの見極めに少し長けてるんだよ。
組合の長として判断をミスると重大な事故に繋がるからな」
コイツなりに結構修羅場をくぐってきたのか?
この若さで組合の長になったのは王家の人間ってだけじゃ務まらない事なのかな。
部屋につくと昨日のようなフルコース。
「おいパック!」
相当腹が減っていたのかパックは料理に向かって走り出した。
そういえばパックって何科になるんだ?
人の料理は動物的にアレルギーを起こすこともあるから気をつけないとな。
「さぁアタシ達も食べようか」
席につき料理に舌鼓をしていると、シャネが深刻そうな顔で話し始めた。
「昨日のことなんだが」
食事が止まる。
これはかなりしんどいな。
「すまなかった!
お前の気持ちも配慮するべきだったな」
「あぁそれなら気にしないでくれ。
俺も少し大人げなかったからな」
「ハクはそんなに大人じゃないけどね」
笑いながら食事ができてなによりだ。
あの後シャネは色々と考えてくれたようだ。
「自分のやりたいようにやってくれ。
もし、冒険者になりたかったらいつでも言ってくれれば組合長として歓迎するからさ」
「そん時はおなしゃす」
食事を済ませパックと二人で風呂に向かった。
「よかったねハク。
これで少しは気が休まるんじゃない?」
「まったくだよ。
これで心置きなく明日のジェイドの仕事ぶりを楽しめそうだ。
今日はゆっくりと風呂に浸かって明日に備えなきゃな」
大浴場に着くと俺は自分とパックの体を洗って湯船に向かう。
パックは思いっきりダイブ。
バシャバシャと風呂を泳ぎ回って楽しそうにしている。
「おいパック。
楽しんでいるとこ悪いんだけど少し聞いていいか?」
「なにぃ?」
「お前はこの世界で知らないことってないのか?
教会のモアナですら俺のスキルは知らなかったのになんでそんなに詳しいんだ?」
泳ぐのを止めて俺の横にきて答えた。
「わかんない。
でも生まれたときに知識を擦り込まれてたってのは話はしたよね?
ハクが生きるために必要だから神様がサポート役として呼んだんじゃないかな?」
「モアナが言ってたけど俺は何の職業でも大丈夫だってさ。
そこはパック的にどう解釈する?」
「んん~
正直言ってそもそもハクのスキルって別格なんだよね。
魔法をイメージで作ることって反則だと思わないか?
何か作れば国宝級伝説級の代物だし、肉体強化や魔法攻撃を生み出せば無敵だし。
やっぱこの世界において魔法を思い通りに扱えるのは最強だよね。
それに知識はこのパック様がいれば何の問題もない訳だしね。
明日の鍛治仕事も一度見学したら自分で作った方がいい物が出来るよ」
改めてパックはかなり凄いと思った。
そこまで考えてジェイドにお願いしていたのか。
仮に自分で武器を作っても売れないから自分で使うかしかない。
なんか冒険者をやるための装備を自分で揃えてる感じだ。
風呂から上がり車に戻る。
ポーチにも魔法陣を転写して今日は寝るか。
ここで一つ実験をしようと思う。
俺のスキルはイメージで魔法を作れる。
有り得ないこともイメージすればそれは魔法陣として成り立つのか?
やってみよぉぉ!!
イメージは・・・某猫型ロボットのポケットだ!!
ただし中は整理整頓出来るように無限に棚があるイメージだ。
勿論、耐水・耐火・耐汚もつけて、全ての衝撃を拒絶するイメージ・・・
難しい・・・・・
頭に浮かぶサークルは直径で2メートルは必要になりそうだ。
外の出てサークルを書いてみよう。
【自動書き込みを行使します】
これはなかなか凄いな。
一瞬でこれを書いた俺もなかなかだ。
よし!転写開始だ!
魔法陣を起動させると、最初転写した時とは比較にならない位眩しい。
それだけ凄いポーチができるってことか?
転写が終わり確認してみる。
相変わらずロゴはHの某高級ブランドだ。
解析してみると、
耐水・耐火・耐汚・耐衝撃・耐劣化・耐腐食・無限収納・自動陳列・時間停止による保存など色々な付与が出来ている。
これ凄くね?
これは伝説級でもおかしくないな。
30センチのポーチとナイフホルダーにも同じように付与しておけば完璧だ。
ナイフホルダーは耐水・耐火・耐汚・耐衝撃・耐劣化・耐腐食で良いからサークルもかなり小さくなった。
俺とパックが使うと効果を発揮するが、他の奴らが持ったり身に付けてもなにも起こらないようにした。
ロゴはHなのでハイブランドを身に付けている成金みたいだ。
今あるモノはこれですべてだ。
明日の鍛治仕事が楽しみだ。
ーーー翌日ーーー
パックと共にジェイドの店を訪れた。
「よぉお二人さん、待ってたぜ。
早速俺の工房に行こうか」
ジェイドの工房はとてもシンプルだ。
炉があり叩き台とハンマーが数種類。
なにに使うかわからない道具もいくつかある。
あと砥石が数種類ある程度だ。
意外なほど整理整頓されている。
見た目はチャラいが仕事はできるんだろう。
「じゃあ始めるぜ」
そう言って仕事にかかるジェイド。
仕事中のジェイドはまさに職人だった。
一切の言葉も笑顔もない。
炉で素材を溶かし、ハンマーで叩いて伸ばす。
これを繰り返し行って形を作っていく。
ーーー作業を開始して13時間ーーー
「後は砥石で微調整だけだが、ここまでが仕事の流れだ。
結構大変だろ?」
「これはハクには無理だね。
いい勉強をさせてもらったよ。ありがとジェイド」
「いいってことよ!
またなんか欲しいものがあれば言ってくれ。
俺が作れるものなら格安で請け負うぜ!」
「そうさせてもらうよ」
そう言って俺とパックは工房を後にした。
帰りの道中、パックが話し出す。
「ハクが作れば良いものが出来るけど、工房作るのに相当お金かかるね。
作っても売れないから意味なかったかな?」
「そんなことはないよ。
勉強になったし楽しかった。
ありがとなパック」
あっという間に夜になってしまった。
一つのナイフを作るのに俺はどの位で出来るんだろう。
「そう言えばジェイドが作ったナイフって属性とかあるのかな?」
「道具によってだけどハクには関係ないね。
オール属性だから好きな武器を使えばいいよ。
あと技か特技をつくれば冒険者は出来るけど、冒険者は嫌なんだろ?」
「パックは冒険者になるように仕向けてないか?」
「そんなことはないよ。
ハクの性格をよくわかってるから今聞いてみただけだよ。
ぶっちゃけ冒険者でもいいかなって思ってるくせに(笑)」
完全にバレてるな。
昨日の夜からそんな気はしてた。
むしろ選択肢は最初からなかったのかもしれない。パックと一緒なら何とかなるかな?
「今日はもう遅いし明日シャネに頼んでみるかな」
「そだね。
きっとシャネも喜ぶよ」
こうして俺は冒険者になることを決めた。




