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12話 心

 シャネ様のお屋敷に到着。


「ハクレイ!仲間なんだから夕飯はアタシの家で食っていけよ!!

 なんなら泊まっていいぞ!?仲間だからな!!」


 なんかシャネは仲間を強調するようになった。

 余程うれしかったのか?


「今日はご馳走になろうかな?

 屋台でもサンドしか食えなかったから腹減っててよぉ」


「よし決まりだ!

 ヴェルゥ!!客人だ!」


 そう叫ぶとゴツいおっさんが階段を下ってきた。


「お帰りなさいませシャネ様。

 私は執事のヴェルで御座います。

 失礼ですが、あなた様はハクレイ様でお間違えないですか?」

 

「そうだけどなぜ名前を?」


「昨日からシャネ様はハクレイ様の話ばかりでして、屋敷の皆が存じております。

 とても仲がよろしいようで」

  

 おっさんは笑顔で言った。

 シャネは顔を赤くして全力で否定する。


「そんなことはない!!」


 バカでかい声は耳鳴りがする程だった。

 そのバカでかい声で他の従者がゾロゾロと出てくる。

 

「シャネ様おかえり~」


 シャネ級の童顔娘がシャネにパタパタと近づいてくる。

 他にもメイドらしき女性8人が出迎えてきた。

 その内の1人強そうなおばさんが話し出す。


「私はメイド長のサティと申します。料理長を兼任しております故に、料理の好みは御座いますか?」


「特に好き嫌いは無いのでお任せします。」


「了解しました。

 すぐに調理しますので先にお風呂でもいかがですか?」


 それは有り難い。

 こっちにきてから一週間程入ってない。

 体拭きシートよりは風呂に入れば疲れもとれて、よく寝付けそうだ。


「お言葉に甘えてそうさせてもらいます」


 小さなガッツポーズが出るほど嬉しい。

 急いで車に戻り、下着とパジャマを持って風呂に向かう。

 風呂の扉を開けるとこれまたデカい!

 脱衣場から湯船まで5メートルはある。

 そして乗用車二台分はある浴槽。

 頭と身体をささっと洗って浸かってみると、座って胸ぐらいの深さしかない。

 シャネなら肩まで余裕で浸かれそうだな。

 にしても風呂の熱さが身体に染み渡る。

 脳みそが溶けてなくなりそうだ。

 あぁぁぁーーーー・・・


「・・ハクレイ様。

 そろそろ夕食の準備が整いますので、支度をお願いします。」


 ん?もうそんな時間か?

 時計をみると40分浸かっていた。寝てたか?

 風呂から出て食堂?に連れて行かれる。


 テーブル長!!

 3から4メートルはあるぞ?

 ここでいつも独りは辛いな。

 

「おいハクレイ早く座れ。

 なにボーーっと立ってるんだ?」


 テーブルの端と端は距離があった嫌だな。


「ヴェルさんいいですか?」


「どうかされましたか?」


「この食事と椅子を移動したいんですけど」


「よろしいですがどちらに?」


 シャネとヴェルさんに何を言ってるんだ?みたいな顔をされた。

 貴族の常識は知らんが、こんな距離で食事は寂しい。

 

「ここにしてください」


 シャネの近くを指差した。

 ヴェルさんは笑顔で移動してくれた。

 シャネは顔を赤くしながら

 

「なんでこんな近くに・・・・」とか言っている。


「俺はこんな端っこ同士で食べるより、近くで話しながら食いたい。

 駄目か?」


「別に・・・」


 エ○カ様?


「よし!食おう!!」


 こうして食事が始まった。

 サティさんの食事はそれは豪華だ。

 まるでオフランス様のフルコースだ。

 テーブルマナーはよくわからんけど旨い。

 シャネの使う道具をみながら俺も食事を進める。


「あんまジロジロみるなよ」

 

 恥ずかしいのだろう。すまん。

 でも最低限のマナーは盗み見させてくれ。

 食事を終えて、食後のコーヒーを嗜みながら今日の教会の話をした。


「ブフェっ、あのモアナがそんなことをいったのか!?」


「汚ねぇなぁ。なに吹き出してんだよ?

 俺が嘘を言う分けないだろ。

 のんびり暮らしたいから農家とかやりたいなぁ」

 

ーーバン!ガシャァン!

 

「どした!?」


 シャネがテーブルを思いっきり両手で叩いて立ち上がる。ティーカップが少しジャンプする。


「モアナがそこまで言ったなら冒険者をやるべきだ!」


「俺冒険者は嫌だなぁ~

 危なそうだし、大変そうだし。

 そもそも俺格闘術も知らないから、戦闘になったら無力だぜ?」


「それなら習えばいいだろ?

 ヴェル!サティ!」


「お呼びでしょうか?」

 

「ハクレイに格闘術をおしえてやってくれ!」


「お安い御用です」


「チョっ、待った待った!!

 勝手に話を進めないでくれよ!

 無理に冒険者にならなくてもい『よくない!!』話を聞け!」


 シャネが興奮マックスだ。

 そういえばコイツ組合のマスターだもんな。


「いいかシャネ、よく聞け。

 俺はおまえが思ってる程強くないし度胸もない。

 それにセカセカと働くのも好きじゃないんだよ。」


 シャネは納得しない。


「ハクレイは冒険者になれる素質があるってモアナが言ったんだろ!?

 冒険者になりたくてもなれない奴らもいるんだ!

 なれる奴がなるべきだ!!」


 なんでこんなにムキになるんだ?

 俺の選択権はどこに行った?

 何とかしてシャネを落ち着かせないと冒険者まっしぐらだ。


「そんな焦らなくてもじっくりと考えさせてくれよ。

 なにをそんなに焦ってるんだよ?」


「ハクレイは・・・わかってないよ」


 あれ?声が震えてるけど泣いてるのか?


ーーバン!!


 シャネは部屋を飛び出した。

 

「ハクレイ様申し訳ありません。

 シャネ様は部屋を出られてしまったので今日はお開きとさせもよろしいですかな?」


「えっ?はぁ」


 ヴェルさんも少し怒ってるのかな?

 まぁいいや。


「ごちそうさまでした」


 もやっとするが屋敷を後にする。

 軽く追い出された感じがする。

 泊まってもいいんじゃなかったのか?

 少し重い足取りで車に向かう。

 車からイスを出し、夜風に当たりながら夜空を見上げる。


 考える。シャネはなぜあそこまでムキになったのか。

 考える。自分がなにをしたいのか。

 考える。この世界でのこれからの事を。


 ・・・・・無理。

 俺はのんびり暮らしたい。リスクをかかえてお金を得る意味はない。

 ハイリスク・ハイリターンは性に合わない。 

 ローリスク・ローリターンでも生活できれば俺はそれでいい。


 正直日本に住んでいたときは当たり前だったが、この世界の生活を目の当たりにして感じることがある。


 日本は生きるために稼ぐでは無かった気がする。

 どちらかというと、金を稼ぐために生きていた。

 生活するために稼ぐのと、稼ぐために生活するのは何か違う。

 セドルの人々は生きるために稼いでいた。

 だから仕事も笑顔で出来るのではないか?


 この思考は日本でもたまにあったな。

 夜寝る前に、不安で心が安定してなかったり、変に寝付けない時の思考だ。


「はぁぁ・・寝るか。」


 最後の最後に疲れが一気に押し寄せてきた。

 下を向くと昨日の発芽した場所に目がいく。

 あれ?つぼみになってる?

 昨日まで雑草に見えたが、1日でこんなに成長するのか?

 よく見ると、七色をしたつぼみが今にも花を咲かせようとしてる・・ように見えなくもない。

 少し近付いたら光り出した。


「うわっ!?もぅ今日はなんて日だよ!」

 

 七色の花びらの中央に光る光源はゆっくりと、確実に宙に浮いてくる。


「・・やっとだね・・・」


「?!だれだ!?」


 何処からか声が聞こえる。

 光源はゆっくりとこちらに近付いてきて、手のばせばつかめる距離で止まった。

 無意識に手をさしのべる。 


 光源はそっと俺の右手の平に乗っかってきた。

 光が収まると、手のひらには小さなキツネのような生き物が現れた。


 こいつはいったいなんだ?


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