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11話 価値観の違い

 腹減ったな。

 昨日から三食は食べてない。


「俺ちょっと屋台でなんか食ってから帰るよ」

 

「一人で大丈夫か?

 案内ならするぞ?」


「あざっす。でものんびり歩きながら帰るから平気だ」

  

 そう言って馬車を降りた。

 教会で言われた職種も見てみたいし、いつまでもシャネに頼り続けるのも良くないしな。


 1人になって噴水の周りを見渡すと、

デートしてるであろう若いカップルが噴水に座って喋っていたり、子連れの親子が買い物袋を抱えながら歩いていたりする。


 日本に居たときは時間の流れが早く感じたが、

 この世界は同じはずなのにゆっくりに感じる。

 居心地がいいな。


 屋台の前に行くと俺より若い夫婦が笑顔で話ながら店を切り盛りしている。


「1つもらっていいですか?」


「はい。3HCです。」


 安くないか?銀の大硬貨一枚で100HCだったよな。

 パンにレタスみたいな葉っぱを挟んで、長さ20センチ程のベーコンをみたいな肉をタレで焼いて三つ折りにして突っ込む。

 旨そうだな。

 日本円だと300円から600円位と想像していた。HCの価値がわからん。


「じゃぁこれで」


 銀貨を渡す。


「お客さぁん。

 こんな硬貨じゃ釣り銭が出せないよ。

 せめて10HC位にしてくれないと」


 旦那の方が困った顔で言ってきた。

 10HC=小銀貨か。持ってない(泣)

 開始早々にこれはきつい。


「なにか揉め事か?」


 角刈りで色黒で身長は190を越えているであろうガチムチの男が唐突に現れた。

 

「オド隊長!!

 いや~このお客さんが100HCしか持ってないから釣り銭が出せなくて・・・」


 隊長?この町は組合と教会が守ってるんだよな?組合の隊長ってことか?


「見ない顔だな」


 そんな凄まなくてよくないか?


「昨日この町に着いたばかりなんだ」


「そうなのか?

 だが、どの町でも屋台で大銀貨を使うことはないはずだぞ?」


 そうなのか?それは聞いてない。


 「どこの余所者か知らんが一度組合に来て貰おうか?」


 おいおい、馬車を降りてまだ10分も経ってないぞ?

 早くも警察沙汰的なあれか?

 オド隊長とやらに連れられて、俺は組合に行くことになった。

 屋台の代金は隊長さんが払ってくれたらしい。


「あとでちゃんと返せよ」だそうです。


 のんびりと街並みを見ながら帰る予定だったのになぜこんなことになったんだ。

 シャネと一緒に行動すればよかったと後悔した。

 それから1時間ほどで組合に到着した。

 組合も城のような外観をしている。

 扉を開けると武装した人が十数人程いて、受付の前に並んでいたり紙の貼られたボードを眺めていたり。

 その横を通り過ぎ奥の部屋に通される。


「まぁとりあえず座れ。

 なんて名だ?」


 急に砕けたような態度になったぞ?


「名前はハクレイだ」


「ハクレイか。

 よしハクレイ、この町に入るには基本、門番が許可して入るもんだ。

 だが、稀に荷物に隠れて密入国する輩がいることもある」


 これは完全に疑われてる奴だな。

 

「俺は別に隠れて入ってないぞ。

 門番から許可を貰ってる」

 

「許可証はあるのか?

 住民以外は許可証がないと入れないのは知ってるか?」


 おっと初耳です。シャネに任せて入国したのがそもそも失敗だった。


「その様子じゃ知らなかったんだな。

 持ち物を全部出して、自分を証明できるものも一緒に提示してくれ」

 

 持ち物は大銀貨と時計しかない。それに財布があったとしても免許証は意味ないな。


「俺の持ち物はこれだけだ」


「お前みたいな奴が大銀貨をこんなにたくさん持ってるのも怪しいが、

 腕から外したそれはもっと怪しいな。

 なんだこれは?」


「時計のことか?時間を確認するために腕に着けるやつだ」


 やはりこの世界は時計がないのか?


「ははっ。 

 こんな小さいもので時間が刻めるわけないだろ?

 それにしてもなぜ動いてる?

 仕組みがよくわからん」


「全自動巻きだからな。

 使ってなきゃ止まっちゃうけど、基本着けてれば勝手に動き続ける仕組みなんだよ」


 理解は得られないようだ。

 結構高かったけど財産になるって聞いたから、苦しい思いをしても奮発して買った時計だ。

 今、その時計に再度苦しめられている。


「この大銀貨はお前のか?」


「シャネって知り合いが好きに使ってくれって渡してきた」


「シャネ?

 悪いがお前のような奴が知り合える程の御方では無いな。

 嘘はやめた方がいいぞ?」


「嘘は言ってない。

 てか、あいつはそんな偉いのか?」

  

 隊長さんはポカンとした顔をしている。

 そして豪快に笑いながら話し出した。


「お前ホントになにも知らないんだな。

 シャネ様はヘイル王国第二王女でこの組合のマスターだぞ?

 そんな方の事を偉いのかって」


「王女!?マスター!?

 それは確かに偉いんだろうが、聞いてない。

 でも王女がなんで組合のマスターなんだ?」


 隊長さんは笑うのをやめ、睨みながら俺の方を見て来る。

 なんか地雷踏んだのか?


「あの方のおかげでレックロームは救われたんだ。

 この町の皆がシャネ様に感謝している。

 だからシャネ様関係での嘘は、一番やっちゃぁならねぇんだよ」

 

 ダメだ。このおっさ・・隊長さんは完全に聞く気がない。


「シャネと連絡つかないかな?

 聞いた方が手っ取り早いんだけど」


「・・・まぁこの件もついでにシャネ様に報告するか。 

 少しここで待ってろ。」


 そう言って隊長さんは部屋から出ていった。


「あぁぁもう最悪だぁ」


 思わず声に出してしまった。

 なんか変な感じしてたんだよなぁ。

 ポンと高そうなコート買ってくれたし、そもそも門番に様付けされてたし。

 態度デカいし。

 事実上この町のトップだったか。


 2時間ほどして、隊長さんと受付にいた女性が部屋に入ってきた。

 女性は紅茶を2つテーブルに並べて退室した。

 

「確認が取れたぞ。

 確かにお前は知り合いだそうだ。

 迎えにいくからさっさと釈放しろとさ。

 まったく人騒がせな奴だ」

 

「こちらこそ申し訳無い。

 もう少しこの国のことを勉強してから出歩けばよかった。

 参考までにこの国の常識を教えてくれないか?」


 この隊長さんならマトモな話が出来そうだ。

 王女でマスターのシャネの常識は多分参考にならない。


「あぁいいぞ。

 なにから聞きたい?」

 

 根本的なことを聞いてみた。


 この世界の物とその値段だ。

 1日宿に泊まると大体12~30HC。

 食事は一食で3~10HC。

 冒険者の報酬額は難易度によって違うが、低い方は大体20~60HCになるそうだ。


 次に冒険者の装備品の値段だ。

 低い難易度を専門にしている冒険者の装備は大体500~1200HC程だそうだ。

 剣はピンキリで安いと150HCで手に入るらしい。

 俺は持ち合わせが今2000HCもあるし、コートに至っては9万5000HCだ。

 王女やべぇな。


ーーコンコン

 

「失礼します。

 ハクレイ様、お迎えが参られました」


 受付の美人さんが迎えの知らせを伝えにきた。

 

「隊長さん、色々教えてくれてありがとう。

 これで少しは俺も常識的になりそうだ」


「俺のことはオドでいい。

 それより疑って悪かったな。

 飯代は奢ってやるからさっきの悪態は水に流してくれると助かるよ」


 軽く握手をして笑いながら別れる。

 迎えにきた馬車にはシャネが乗っていた。


「ハクレイ!お帰り!!」


 笑顔で迎えられた。

 やっぱ王女でマスターに見えないよ。ただの童顔じゃないと思っていたが、ギャップが半端ないな。


「ただいま」


 馬車に乗り込み組合を後にする。


 道中でシャネが話し出す。


「色々黙ってて悪かった。

 ハクレイには気を使われたくなかったんだ」

 

「俺も驚いたよ。

 まさかシャネが王女でマスターだったなんてな」


 笑いながら話す俺と対照的に、シャネは少し落ち込んでいる。

 他の人はシャネには気を使うから少し寂しかったのかな?

 対等の立場でも王女なら気品よくしてなきゃならんのだろう。


「まぁお前が王女でマスターでも俺にはあんま関係無いからなぁ。

 これからも普通に接していくけど大丈夫か?」


 これを聞いたシャネに笑顔が戻る。


「それはしょうがないな!

 まぁアタシ達は仲間だから気なんて使う必要ないもんな!!」


 今日は教会と組合しか行けなかったけど、

 オドに出会えたし、シャネの事も少しは知れたから結果オーライだ。

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