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 王宮剣術で戦っていては、やはりあちらに軍配が上がる。その差を駆け引きで埋めるのにもそろそろ限界が来ていた。

 徐々に押し込まれていってる。守りに専念すれば耐えられるけど、どうせ長くは保たない。それに立ち合いとしても防戦一方は良くない。

 やめるか、王宮剣術。そもそもセバスさんなんて最初から自己流だ。剣術なんて気にしちゃいない。よしやめよう。今すぐやめよう。

 防戦一方になりかけている現状から自己流に持っていくのに一旦距離を取りたい。

 鍔迫り合いから、よし、離れられた。


「ふー、3年ぶりだな」


 王宮剣術の両手持ちの構えから片手持ちで居合いに似た構えに変える。冒険者時代の知り合いを真似たよく奇襲に使っていた技の構えだ。

 ユーリやセバスさんの前でも数え切れないほど見せた技。当然警戒され、対策も取られるだろう。

 ほら、セバスさんの雰囲気が変わった。


「いきます」


「いつでもどうぞ」


 3年前と同じ感覚で、文字通り"全力"で突っ込んだ。

 もちろん防がれたが、吹っ飛ばすことはできた。そして吹っ飛ばせたことに俺自身がとても驚いていた。

 ・・・この技なら大丈夫って確信があっての全力だったけど、ここまで威力が上がっていたのか。それよりマズイな、今のでバレたかもしれない。

 やり返しとばかりに突進して来たセバスさんの攻撃を防いで、反撃に転じる。この立ち合いが始まってから初めて俺が主導権を握れた。

 とはいえこちらの優勢は僅かなもの。見てる側は互角に見えてるはずだ。今ここでこの差が分かるのは精々グレンさん、王子、ユーリの3人だろう。

 横薙ぎ、からの上段と見せかけて左手で殴る。腕を掴まれたならその腕を蹴り上げて無理矢理離させる。僅かに怯んだところに間髪入れず刺突。斬り上げ、袈裟斬り、水平斬り。

 やっぱりほぼ互角じゃ埒があかないな。でも、もう終わらせないと。これ以上は俺の身体が保たない。

 再び居合いの構えを取り、突進。間合いに入る直前で急ブレーキ。俺の居合いのタイミングに合わせて攻撃を繰り出していたセバスさんは見事に空振りほぼ無防備に。首筋に剣先を突きつけ、立ち合いは終わった。


「お見事」


「・・・やっぱ気付かれてましたか」


「ええ、ですが今回はそれ抜きでやられましたよ」


「そういうことにしておきます」


「本当ですよ」


 嘘つけ。明らかに最後のは無防備すぎるだろうが。いくら老いたといっても、あんたがあんな無様なやられ方するわけないだろ。

 全く、追求されなかった上、気を遣われちゃこっちが折れるしかないじゃないか。

 主人の元に戻っていく大きすぎる背中に向けて深く頭を下げた。

 それはさておき、身体が痛い。呪いで全力出したらこうなるの分かってたのにやっちゃったから自業自得なんだけど。

 まあ、以前全力を出した時よりはマシだよな。前は文字通り死にそうになったんだから。いやほんと、この程度で済んで良かった。全力はあの技だけに限定したのが良かったのかもな。

 あの技は初速が命。初速さえどうにかなれば、後は勢いに任せてればそれなりの威力になる。

 ちなみに今回は最初は初速以降も全力で、最後のは初速のみが全力だった。だからこそ、尚更あんなに無防備になったのはおかしいのだ。


「お疲れさん。身体は?」


「少し痛むだけです。ていうか、よく分かりましたね」


「お前が王宮剣術を覚える前からの付き合いだからな」


「戦い方のほうじゃないです」


「ああ、身体の方か。そっちは何となくだよ」


「そっすか」


 こりゃ分かってて話逸らしてたな。多分セバスさんが立ち合いの相手になった時から、全力を出すと予想してたんだろう。その証拠に、居合い系統の技だったから分かりにくいはずなのに全力を出していたとバレていた。

 あーあ、とっとと治さないと色々面倒になりそうな気がしてきた。なんだかんだでユーリにもバレてそうだし。あいつには追求されそうで怖いんだけどなあ。

 立ち合いは順調に進み、半分くらい済んだ所で別の場所に移動する事になった。そして王子とアリシアが次に選んだ場所は、城で特別日当たりの良い場所に設けられた中庭だった。


「さて、ここならゆっくり話が出来るだろう。すぐにお茶とお菓子も来るはずだ」


「何か話したいことがあるのですか?」


「ああ、ユリシス殿の知っているユーゼンの事を話して欲しくてね」


「なるほど。では、私には王宮騎士としてのゼンの事を教えて頂けますか?」


「もちろん」


「え、待って。俺席外していいですか?」


「ダメだよ」「良いわけあるか」「側に居てね」


「ハイ。ワカリマシタ」


 ああ、せめて耳を塞ごう。うん、バッチリ聞こえるわ。意味ねーこれ。潔く諦めよう。


 地獄だった・・・。昔のこと目の前で暴露されるなんてどんな拷問だよ!冒険者時代の事なんて思い出したくないって。

 王宮騎士になってからも結構色々やらかしてるからちゃんと拷問だったし。ちゃんとユーリに笑われるし。


「ねえ、何か俺に恨みでもあんの?」


「「「ないけど?」」」


「じゃあこの拷問のような時間はなに?」


「なにって、ユーゼンの話だよ?」


「何で俺の前でするの?」


「・・・さあ?」


「じゃあ俺席外してよかったじゃん!」


「僕はユーゼンの悶える姿が見れて満足さ」


「私も音沙汰のなかったゼンの話が聞けて満足です」


 こいつら、今後この話で弄る気だな!?

 警戒しよう。すごく警戒しよう。ところ構わず変なこと言われちゃ溜まったモンじゃない。

 アリシア?苦笑いしてないであんたの兄貴どうにかしてくれない?意地の悪い笑い方してるよ?いや王子がその顔はダメでしょ。


「さてゼン。お前、何を隠してる?」


「何も隠してねーよ」


 このタイミングで聞くのか。友人とはいえ、他国の王女の護衛をやってるんだぞ。もうちょっとこそっと聞くとか駆け引きとかあるだろ。

 そもそも隠してることがあるにしても無いにしても、聞き方がストレートすぎる。


「嘘はよせ。さっきのセバスとの立ち合い、動きがぎこちなかっただろ」


「それはほら、昔散々戦った相手と馴染んでない王宮剣術で戦うのに違和感があったからだよ」


「・・・百歩譲ってそれもあったとしよう。だがそれ抜きでも動きがおかしかった」


 これはもう、言い逃れは難しいか。とはいえ話すのは躊躇われる。薄々勘付かれてそうだが、アリシアには呪いのことを話していない。

 できることならこのまま有耶無耶にしてサクッと呪いを解いてしまいたいんだけど。

 救いを求めて王子の方を見たら、好きにしなよと言いたげな目を向けてきている。

 俺の隠し事がバレたところで国としては何も問題ないってことか。まあ、確かに俺が居てもいなくても戦力的には対して変わらないか。


「はあ、降参だ。確かに俺は身体に異常がある。でも自力でどうにかなるモンじゃないのも分かって欲しい」


「自力でどうにかなるなら、とっくにやってるだろ」


「そりゃそうだ」


「ねぇユーゼン。私、聞いてないんだけど」


「言ったら怒るじゃん」


「言わなくても怒るよ」


 ごもっとも。まさに今言わなかったせいで怒ってるし。でも言わない方がマシだとおもったんだからしょうがないじゃん。

 もしかして、これ詳細言わないといけないやつ?あ、そっすよね。はい、言います。


「あの時のドラゴンの呪いに掛かってまして」


「ドラゴン!?!?」


「どういう呪いなの?」


「さあ?詳細は全く。ただ全力で戦うと死ぬほど身体が痛い。長時間全力を出したらまず間違いなく死ぬな」


「僕の推測だけど、その呪いは身体を蝕む類のものだ。それもごく短時間で蝕む呪いだろう」


「ちょ、ちょっと待ってくれないか。話について行けていない。まずどう言う経緯でドラゴンに呪いを掛けられたんだ?」


「たまたま遭遇して、こう、グサッと」


「そんな説明で納得できるわけないだろう!?」


 ですよね〜。しょうがない、少しだけ昔話をしようか。

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