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第十六話 初陣の成果

 ガリュウは夜が明けると、鳥を精神支配で捕まえた。捕まえた鳥を魔法の伝染病に感染させた。

 病気にした鳥を眷属化で操り、ケルト村に飛ばした。村に病気を蔓延させて、健康な男性を減らす作戦だった。


(村には高度な治癒魔法を使える人間はいない。魔法の病気は簡単には治せない。病気は確実に広まる)


 ガリュウの読みは当たった。最初は数人の感染者だった。だが、十人を超えると一気に広がり、村の大半の人間が病気になった。


 そこで、ガリュウは以前に奴隷にした冒険者を、村から呼びよせた。

 長い間、精神を支配された人間は精神支配の仮面を外しても、すぐにマインド・コントローラーの支配からは抜けられない。


 ただ、仮面を外していると懸かっている精神支配の効果が段々と弱くなる。最後には元に戻って我に返る。


 今回のように精神を支配した期間が二ヵ月くらいだと、精神支配から抜け出る時間は、一週間程度である。


 ガリュウは精神支配を施した奴隷冒険者に命じる。

「いいか、お前たちは外から来た冒険者を装って村に入るんだ。村に入った日の夜に村の裏門を開けろ。後は僕たちと一緒に村を制圧するんだ」


「はい、わかりました」と精神を支配された四人の冒険者は了承した。

 冒険者から仮面を外し「行け」と命じる。冒険者は村に向かって行った。


(ここまでは想定通り、後は村側の抵抗が、どの程度あるかだな)

 ガリュウは果たして今回の作戦が上手く行くか、心配だった。


 制圧した後の冒険者に装着させる仮面を準備しながら爺が告げる。

「心配なさるな、坊。いざとなれば、この爺、獅子奮迅の働きを見せて村を制圧してご覧に入れます」


 爺の顔には不安はなかった。それどころか自信さえ感じられ、とても頼もしかった。

「頼みにしているぞ、爺」


 夜、村の裏門が見張れる場所に隠れて待機していた。

 すると、見張り台から松明が左右に振られる合図があった。


 数分の後、裏門が開かれる。

(よし、裏門が開いた。突入だ)


 胸に()ぎる不安を抑え込んで、バジリスクに乗って裏門から突入した。

 裏門には倒れた冒険者が一人いるだけだった。


(見張りが一人しかいないのか? 拍子抜けだな)

 倒れていた見張りの冒険者に、爺が精神支配の魔道具を装着させた。


(よし、まずは一人)

 倒れていた冒険者を起こし、尋ねた。


「正門には何人の見張りがいる」

 冒険者は真剣な声で告げる。


「正門には二人の見張りがいます」

「二人だけか、嫌に少ないな」


 冒険者は主人であるガリュウに申告する。

「村では病気が蔓延しており、まともに動ける人間はもう少数なのです」


(病気を流行らせる策が、思いのほか効果を上げたな)

「わかった。なら、正門も制圧してしまおう」


 全員で正門にそろそろと向かう。

 正門には見張り台が一つあり、二人の人間が立っていた。


 爺とガリュウで、正門にいた人間二人に同時に触手を突き刺す。

 二人はすぐに静かになった。二人を見張り台から降ろし、精神支配の魔道を装着させる。


 ガリュウと爺は冒険者の寝ているテントを巡る。眠っている冒険者が起きないように精神支配の触手を刺す。安全を確保した上で、精神支配の魔道具を装着させた。


 朝までに十八人の冒険者全員に精神を支配する魔道具を装着させた。

 朝になると、村人が起き出してくる。


 バジリスクの乗るガリュウの姿を見ると、村人は怯えて、すぐに家の中に逃げ帰る。

 だいたい皆が起きた頃に、ガリュウは宣言して歩く。


「聞け、人間どもよ。このケルト村は今日よりマインド・コントローラーの支配下に入った。逆らう者は容赦なく殺す」


 ガリュウの宣言を聞いて家から出てくるものはいなかった。

 冒険者から村長宅の場所を聞き、村長宅を訪ねる。


 ガリュウは家のドアをノックする。おそるおそる家の扉が開いた。

 村長は四十歳くらいの痩せた男性だった。具合が悪いのか、顔色は良くなかった。


 村長は弱そうだったが、それでも話す時は緊張した。

 ガリュウは支配者らしく、強気で命じる。


「村は我々が制圧した。武器を持った主だった者も、我が支配下にある。我らに従え」

「わかりました」と村長が青い顔で答えると、ごほごほと咳をする。


(あっさり行ったな。抵抗されても困るんだけど)

 村長の態度に、少しばかり好感を持った。


「病気では苦しいだろう。どれ、治してやろう」

 ガリュウが魔法を掛けようとすると、村長は怯えた。


「こら、抵抗するな。上手く魔法が掛からないだろう」

 村長の動きが止まったので、病気治癒の魔法を掛ける。


「どうだ、楽になったか。楽になったのなら、お前が村の家を周れ。この村の支配者が変わった状況を伝えるのだ。いいな」


 村長は強張った顔をして、何度も頷いた。

 爺と合流する。


「村長には村が我らの支配下に入った事態を村人に説明するように命じた。これで占領は完了だよ。思ったより簡単に行ったな。あれこれと悩んだのが馬鹿のようだ」


 爺は真剣な顔で進言した。

「坊、でも、問題があります」


「なんだ、教えてくれ」

「病が思ったより拡がっています。この村を維持するとなれば、治療師と食料の支援が必要です」


「そんなに状況が悪いのか? わかった。父上に支援を要請してくる。今後の方針も聞くとしよう」

 ガリュウは余っている魔力で、三人の冒険者の病気を癒す。

 爺に村の占領を任せて、コースト村に急いだ。

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