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9 幹部候補生をGETしました。


そして、神になって503年。初めてやってきました神様市場。


「ご主人様、こっちこっち~!」


私の先導をするのはサンとコウ。


「主様、やはりあんな所ではなく向こうで美味しい物を食べましょう」


そして、何とか違う店へと誘導しようとしてるフォビナ。


何で私達が突然神様市場に来る事になったかというと……サンとコウの素晴らしい提案を実行するのに必要な、あるものを買いに来たからだ。


その『あるもの』というのが……


「ここですよぉ。闇落ち商」


闇落ち――闇に染まった神やそれに準ずる力を持った存在。


それが正規の神や勇者により捕らえられ世界から排除……売りに出されたものを買いに来たのだ。


サンとコウの話によると、フォビナのストッパーになり得る存在としては、同格として力を発揮する事が出来る神の使者か従属神――主神に従う神――の2つが考えられるらしい。


しかし、神の使者や従属神は存在自体の格が精霊達よりも上で、私がいくら指名しても精霊達ではなる事が出来ないのだという。


じゃあ、ストッパー役をどうやって手に入れれば良いのか?


その方法は大きく分けて2つ。


1つは私が創造の神としてのレベルを1000以上にして更に神力を溜めて、自力で創造する事。


もう1つは……神様市場で売りに出されているのを買ってくる事だそうだ。


ただ、神の使者にしても従属神にしてもまともな人は基本的に売りに出されないし、売りに出されていたとしても需要は高いのに供給は少ないからとてもお値段が張る。


とてもじゃないけど、私が買えるようなレベルではないらしい。


ここまでコウとサンが説明してくれた時点で、フォビナは「無理だから諦めましょう」と言ってきたが、そこは頼りになる精霊コンビ。打開策もちゃんと考えてくれていた。


それが、紫の上計画ならぬ、闇落ち更生計画。


闇落ちは悪しき存在である為、排除され売りに出される事が多く比較的安価で購入する事が出来る。


その上、更生させる事さえ出来れば格自体は高いものが多い為、神の使者や従属神にする事も可能。


しかもしかも、悪しき存在の更生というのは、神としての格を上げる行いとされている為、上手くいけば大幅なレベルアップも期待出来るというおまけ付き。


場合によっては、買った闇落ちを神の使者や従属神にしなくても、更生させる事で神レベルを上げれば神の使者や従属神を自分で作れる位レベルが上がる事もあるらしい。


心配事としては、闇落ちというだけあって性格に難があるものが多く扱いが難しかったり、危険が高かったりする事なんだけど……そこは買った段階で、主である神を傷つけたり、命令に逆らったりする事は出来ないように特別な契約をさせるから扱い方を気を付けてさえいれば問題ないらしい。


話を聞いていて、何となく小説とかでよくある犯罪奴隷を買うようなイメージに近い気がして、初めは少し抵抗を感じたんだけど、サンとコウの説明では動物型の闇落ちも多く、そういったものを選べば野生の動物をペットとして躾けるような感じで更生させる事も出来るらしくて、私の中のハードルも大分下がった。


ちなみに、見た目は動物型でも知性はそれなりに高く、意思の疎通や更生後に仕事を任せる事は十分可能らしい。


レベルの高い神は面倒くさい為、わざわざ闇落ちから更生させて……なんてやり方はしないようだが、初心者の神なんかは、自分の補佐をしてくれる存在を安価で手に入れる為によくやっている事だと教えてもらった。


「へぇ、結構綺麗な店構えだね。良い子いると良いんだけどなぁ」


奴隷商的なものをイメージしてた時にはちょっと怖いイメージだったけど、動物型もいると聞いてからはペットショップに行くような感覚が強くなり少しワクワクしている自分がいる。


「フフフ~、ご主人様ったら。ここにいるのは闇落ちばっかりだから良い子はいないよ~」


私の発言に可笑しそうにコウが笑う、


言われてみれば確かにそうだけど、事前に聞いた話によると生まれながらの闇落ちの中には『闇落ちとして生まれた』というだけで性格が比較的温厚で更生もすぐ出来る子もいるらしいから、ついつい期待したしまう。


それに、日本での私の後任となった子も元々は闇落ちに分類される存在だったから、彼女の様子をずっと見ていた私としては、ついつい「あんな良い子の闇落ちもいるんなら、いい出会いもあるかも」と思ってしまうのだ。


「ご主人様、くれぐれも言っておくけど、星の数が少ない闇落ちにしてね?星の数が多い闇落ちは業も深くて闇の度合いも強いから、今のご主人様には荷が重すぎるからね!」


店に入る直前、私の顔の前まで飛んできたサンが念を押すようにキッと目尻を上げて言う。


このサンが言ってる星というのは、各闇落ちの説明が書いてある札に書かれている更生のしやすさを分かりやすく表示したものらしい。


1番簡単なのが星1つ。最難関が星5つ。


更生が難しい子を更生させた方が神レベルも上がりやすいから、敢えて難易度が高いのに挑む神達もいるらしいけど、今回が初めての私はまずは難易度が低いものから選ぶように言われている。


私もその方が良いから、特に不満はない。


「わかってる。そこは気を付けるよ」


指先で妖精サイズのサンの頭を軽く撫でてあげると、サンは「もう、本当にわかってるの?」と頬を膨らませつつも、少し嬉しそうな顔で横に避けて道を開けてくれた。


後ろでは「やっぱり止めませんか?」とフォビナがまだごねているけど、もちろんここまで来て止める気は更々ない。


「いらっしゃいませ~」


暖簾を潜り、中に入るとすぐに黒髪に眼鏡を掛けた綺麗なお姉さんが笑顔で出迎えてくれた。


その両脇には、用心棒らしきガッシリとした肉体の男性2人が立っている。


男性の内1人は、何の動物かはよくわからないけれど獣人らしく、尻尾や頭に尖った耳が生えており、上半身の8割が毛で覆われている。


店内を見渡せば、いろんな姿形をした人達……否、神達がお姉さんのいるカウンターの背後に広がるいくつもの檻が並ぶ店内を自由に見て歩いている。


店内はやや照明が落してあり少し薄暗い印象だけど、不気味な感じというよりはお洒落な居酒屋のような雰囲気で印象はそんなに悪くない。


「店内は自由に見て頂いて結構です。ご入用の際は、売り場にもスタッフがおりますのでご遠慮なくお声掛け下さい」


入店後すぐに立ち止まってしまった私達に、お姉さんは促すように笑顔で声を掛けてくれる。


それに軽くお礼を言って、私達は売り場の方へと足を進めた。



「……何か凄いね」


何となく声を潜めて近くを飛んでいたコウに声を掛ける。


売り場は売られている闇落ちが騒いだり、見ている神達が話をしていたりする為、結構賑やかだ。


別に声を潜める必要なんてないのに、ついついそうしてしまったのは、目の前に広がる光景があまりに異様だったから。


いや、異様というのはもしかしたら正しくないかもしれない。


単純に初心者神の私がまだ見慣れていないだけで。


「いろんな世界の神様や闇落ちがいますからね~」


苦笑を浮かべたコウは、若干ビビっている私を落ち着かせるように私の肩に乗って「大丈夫ですよぉ」と声を掛けてくれる。


それを見て、サンも反対側の肩に乗ってくれた。


「主様、闇落ちが怖いなら今日は購入を見合わせて他の店を回りましょう」


そんな中、これ幸いと声を掛けて来たのがフォビナ。


その期待に満ちた瞳を見たら……何だかこんな所でビビっているわけにはいかない気がするよね。


何とかここで、更生してフォビナの暴走を止める手助けをしてくれる子を探さねば。


「よし、行こうか」

「……チッ」


そこからは店内をゆっくりと見て回る。


所々に、見た目が生理的に受け付けない闇落ちや、柄の悪い絡んでくる人型の闇落ち、明らかにいっちゃってる感じの闇落ちなんかもいて、そういうのが入っている檻の前だけは足早に通り過ぎた。


「何か、全体的に黒いね」


動物型の闇落ちが比較的多く集められているスペースに着いた時に最初に感じた私の感想はそんなものだった。


だって、檻の中にいるのが大小サイズの違いや毛並みの違いはあれど、黒い毛の動物ばっかりなんだもん。


「闇落ちは黒く染まる事が多いからぁ」


コウの言葉に「なるほど」と頷く。


まぁ、確かに『闇落ち』って呼ばれているのに、明るい色ってのも違和感があるか。


それからゆっくりと1つ1つの檻を覗き込んで、中にいる子達を見て歩いた。


パッと見は似ているように見えても、よくよく見るとその容姿や反応は全く異なる。


ウサギっぽい見た目のもの、狼っぽい見た目のもの、首が2つあるもの。


無言で睨み付けてくるもの、唸り声を上げて威嚇するもの、擦り寄ってくる物、檻に体当たりして露骨に敵意を表わすもの……本当に様々だ。


「見た目だけならそれなりに可愛い子もいるんだけど……何かこの子じゃないって感じがしちゃうんだよね」


徐々に動物型から人型が多いスペースに近付いていく。


種類ごとで明確にスペースが分かれているわけではないから、ここに買いたい子がいなくても他のスペースにいる可能性は否定できないけれど、やっぱり確率的には低くなる。


「もう、さっきのウサギ型の子に決めてしまいましょう。……あの子なら御せそうですから」


「それ、私が御せるって意味じゃなくて、フォビナが御せるって意味だよね?」


「何の事でしょうか?」


「ウサギ型の子は却下」


「……チッ」


私が何を言っても闇落ちを買う事を止めないだろうと察したフォビナは、今度は積極的に自分と相性の良さそうな子や自分が良いように言いくるめられそうな子を選んで私に勧めてくるようになった。


もちろん、その手には乗らない。


さて、どうしたものかと悩み始めた私の前に、それは現れた。


一目それを見た瞬間、私の足がピタッと止まる。



「……この子が良い」


目の前の檻にいるのは、黒曜石のような黒く輝く綺麗な鱗に包まれた塊。


まるで絡まった縄のようにとぐろを巻く胴体。


その頭はとぐろを巻いた胴体に隠れて見えないけれど、鱗の美しさからしてかなり美人さんだろう事が予想できる。


サイズはかなり大きく、胴体は私のウエスト位の太さ。


「これは!」と思って慌てて檻に付けられている紹介の札を見る。


『ジャシン  ★』


ジャシン……蛇神……やっぱり蛇だ。


しかも、星一つ。


「……主様、本当にこの子がよろしいんですか?」


「うん、この子が良い!!私、昔から蛇を買うのが夢だったの」


私の声に反応して、目の前の蛇の胴体が僅かに動く。


テレビで蛇を首に巻く人を見て、1度やってみたいと思ってた。


ファンタジー小説や映画に出てくる蛇の魔物や神様等をかっこいいと思ってた。


友達の中には蛇が怖いっていう子も多いけど、私はあのフォルムが凄く綺麗だと思う。


蛇、しかも大きい蛇なんて飼うのは無理だって諦めてたけど、その夢が叶うかもしれない。


そう思うと、胸がドキドキする。


「……ジャシンですよ?」


「蛇神だからいいんじゃない」


値段的にも、今私が持っている神力で足りる。


買う時に特別な契約をするから飲みこまれたり噛まれたりする危険性もない。


怖い思いをせずに存分に愛でられる。最高だ。


「一度買ってしまえば、もう撤回は出来ませんよ?」


「大丈夫」


やけに粘るフォビナに、しっかりと頷く。


「……わかりました。では、彼をお願いします」


フォビナが渋々といった雰囲気で、近くにいた店員さんに声を掛け、購入手続きをしてくれる。


「ご主人様、本当にジャシンで良いの?」


フォビナが店員さんとやり取りをしている間に、肩に乗っているサンが心配そうに私の顔を覗き込む。


「ジャシンは星1つでも結構更生させるのに時間が掛かって大変だよぉ」


コウも眉尻を下げて私の顔を覗き込んでくる。


そうか。蛇神は更生させるのが比較的大変な種族だから、皆こんな反応なのか。


そう言われると確かに心配だけど……。


視線を再び檻の中に向ける。


黒い鱗の塊は、未だに顔を見せてはくれないけれど、警戒してこちらの様子を窺っているのが気配で伝わってくる。


その少し臆病にも感じられる様子がまた可愛く思えて……やっぱりうちに来てもらうのはこの子しかいないって思った。


ある意味運命の出会いのようにも感じている。


「心配してくれているのに、ごめんね。それでもやっぱり私はこの子が良いの」


私の言葉に、再び目の前の蛇の体がビクッと震えた。


「そっかぁ。なら仕方ないね」


「ご主人様が決めたならそれが1番よぉ」


私の決意の固さを感じ取ってか、サンとコウが納得したように笑みを浮かべて頷いてくれる。


彼女達は私を心配してくれただけで、反対する気は元々なかったようだ。


「主様、契約の為に少し主様の血を下さい」


一通りの手続きと支払いを済ませた様子のフォビナが、針を片手に私を振り返る。


どうやら、闇落ちを買う時の契約には主となる神の血が必要らしい。


そういえば、主従契約には血が必要って王道の設定だなぁなんて思いながら、人差し指を差し出すと、フォビナが手早く手に持っていた針で刺し、血が出てきた事を確認して店員から手渡された透明な液体の入った盃のようなものに私の指を入れた。


盃の中の液体に私の血が波紋のように広がる。


それはすぐに液体と混ざり合い、色を失った。


「後はここにその指を押して下さい」


店員さんから出されたのは、契約内容やら購入証明についてやらが書かれた書類。


確認の為にサッと目を通して、最後にチラッとフォビナを見れば「大丈夫です」と頷いている。


普段はあてにならないフォビナも一応こういう時には問題なく働いてくれるから、きっとフォビナも問題ないと判断したんだろう。


盃に入っていた液体と更に滲み出てきた血で濡れている人差し指を指定された場所に押すと、書類に書かれた文字と私が押した拇印がパァッと一瞬光って、その光が一ヶ所に集まり1つの塊へと変化する。


光が収まると、そこには赤い直径5㎜程の小さな石が転がっていた。


店員さんは書類の上に転がっていたその石を摘んで私に差し出す。


「契約書の控えです。なくさないよう保管下さい」


「は、はい。有難うございます」


咄嗟に両手を差し出して、その石を受け取る。


あまりにも小さい物だから、「なくさないように」と言われてもなくしてしまいそうで怖い。


「アクセサリーにして持っていると良いよ!」


どうしようか悩んで固まっていると、サンが笑顔でアドバイスをくれる。


「有難う」


笑顔を返してから、手の中の石がピアスになるようにイメージして念じると、あっと言う間に手の中の石に石を傷付けないように小さなプラチナの土台がついてピアスになる。


うん。これなら常に身に付けておけるしなくさないね。


掌の上にあるピアスとつまみ上げ、右耳に装着する。


最期にキャッチの部分が外れなくなるようにすれば……完璧。


取りたい時は、土台を一度壊して作り直せばいいだけだし、こうしておけば落す心配もない。



「さぁ、お前の主が決まった。これを飲みなさい」


私がピアスを作ったり装着している間に、先程の店員さんは契約書本体の紙を他の店員さんに手渡し、先程の盃を手に蛇神の檻の中に入っていた。


「まだ契約が済んでないのに危なくないのかな?」とハラハラしながら見ていたら、フォビナに馬鹿にするような視線を向けられ、「契約が済むまでは店の命令に従うようになってます」と教えられた。


教えてくれるのは良いけど、いちいち言葉に棘を含ませなくても良いと思う。


そうこうしている内に、店員さんから逃げるように檻の隅へと移動していた絡まった縄……蛇神の体が、店員さんの命令に従って渋々といった感じで緩み中から白い手が……手が!?


「え!?ちょっ!?」


蛇の可愛らしい頭が出てくると思っていた私が戸惑っている間に、とぐろの中から長い黒髪に深紅の目を持つ、13~14歳位の美少年の上半身が出てきた。


頭が9個あるとかそういうのは想定内だったけど、上半身が人間だったのは想定外。


こんな蛇神も有りなのか?私的にはなしだ!!いや、小説では見た事あるけどね!!


オロオロとしている私の前で、盃を受け取った少年はチラッとこっちを見てからクイッと盃を飲み干した。


「まっ!!」


ろくに止める事も出来ずに盃の中の液体は蛇少年の中に。


同時に彼の心臓の真上辺りに拳位の大きさの白い印のようなものが浮かび上がり、私のピアスが僅かな熱と光を帯びる。



それは私が人身売買……神身売買に手を出してしまった瞬間だった。


「な、な、何で?だって、蛇神って……」


光と熱が収まって元通りになったその空間で、私は戸惑いの声を上げる。


別に目の前の少年が嫌なわけではないけれど……むしろ可愛らしい美少年だと思うけれど……上半身が人型ってだけで、私の中の罪悪感が半端ない。


そんな私の前に、フォンッと小さな音を立てて画面が開く。


『種族:邪神 名前:      年齢:1680歳  状態:調教中』


邪神……ジャシン……。


「『ヘビガミ』は大蛇の姿のものが多いですが、邪神の形態は様々で人型である事も多い種族です。しかも、名前に『邪』という言葉が付いてるだけあって本能的な邪悪さを持ち、その業は薄くてもしっかりと根付いている。星1つなら危険性は少ないですし、時間さえ掛ければ更生の可能性はありますが、種族特性的に調教には不向きな存在です。……だから、本当に良いのか確認したのですが?」


「いや、だって……」


見た感じが蛇だったから、頭の中で勝手に蛇神の方に変換されてたんだもん。


「ジャシンといえば普通は『邪神』の方を真っ先に考えるでしょう。……本当に(頭が)残念な神様ですね」


フォビナに憐れむような視線を向けられたけど……こいつ絶対に私の勘違いを知っていて敢えて言わなかったな。


自分の監視役を選ぶ私への意趣返しか何かのつもりか?


「返品は出来ませんが、処分しますか?……そうしたら、暫くは神力的に新しい闇落ちは買えませんけど」


フォビアの言葉にギョッとする。


よりにもよって「処分」って。……こいつ、相変わらずとんでもない事を言う。


ギッとフォビナを睨みつけてから、再び蛇の胴体を上半身に巻き付けて、その隙間からこちらを窺っている少年に目を向ける。


人身(神身)売買……胸に刺さる言葉ではあるけど……もうしてしまった事は仕方ない。


買ったからには精一杯の愛情を注いで更生できるように育てていくしか道はないだろう。




それに……。


胴体の隙間からこちらを見詰める少年と一瞬目が合う。


その瞳に潜む怯えと孤独さに、私の中の庇護欲が妙にかき立てられる。


彼を癒したい。彼は私が守らなくちゃ。


そんな気持ちが胸の中を不思議な程占めている。


『蛇』だと思っていた時とは全く異なる思いだけれど、やはり私は何処かで彼に運命を感じている。


「何を言ってるの。あの子は今日から私の家族になったのよ」


決意を固めて私が言い切ると、胴体の隙間から少しだけ見える彼の瞳が僅かに見開かれたような気がした。

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