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5 社員が増えました。


「……出来た」


自力での世界創造を早々に止めて、先人……先神の残した偉大な道具、創造神基本セットに縋る事にした私は、その後たったの2時間程度で世界の基盤となる設定を作り上げる事が出来た。


後は、『実行しますか?』の問いに『YES』と答えれば、設定したものが全てがこの世界に反映されるはず。


1時間掛けて、基礎の『基』すら完成させられなかった時とは大違いだ。


「創造神基本セット、偉大だ。あんなに大変で先が見えなかった作業がこんなに早く終わるなんて!!」


やってもやっても終わる兆しすら見えずに絶望していたのが嘘のよう。


感動で涙が出そうだ。


私は本気で創造神基本セットを作成した神様達を崇めたくなった。


というか、むしろこの世界の主神、私じゃないくて先神様で良いんじゃないかと思う。


……やっぱり、どう考えても私、神様には向いてないし。


「一気に全部やろうとするから大変なんですよ。まずはこうやって住み家だけ整えて、後は少しずつゆっくりとやれば良かったのです」


フォビナの強い要望により、初めに創る事になった私達の住み家。


空に浮かぶ巨大な宮殿(森という名の庭付き)。


いや、見た目からしても私が神である事からしても、宮殿より神殿と言った方が正しい気がする。


とにかく、その住み家の一室……丁度中央辺りにある私の居住空間に設置された大きなソファーに寝そべり、フォビナが呆れた様子で呟く。


ちなみに、私がこの世界の基本設定を創造神基本セットを使って行っている間、フォビナは自分の要望をいうだけで、ずっと1人で寛いでいた。


さすがにイラッと来たけれど、フォビナに何を言っても暖簾に腕押し状態なのはこの数時間で痛い程わかったから、もう敢えて何も触れない。


どんなにイラついても触れない。


……触れても疲れるだけだから。


ただ、願わくばいつか小さな報復だけはしたいと思う。


「あ~、ドキドキする。どんなに感じになるのかな?」


自分達の住み家であるこの空に浮かぶ神殿の設定を行い実行して以来、設定する事を優先して実行する事はなかったから、この『実行』で全てが一気に変わる事になる。


目の前の画面には、中央に小さな円。その周りを大きな円が囲み、中の円と外の円を繋ぐように4つの線が伸びている図が表示されている。


私が設定した新しい世界の地図だ。


フォビナ曰く、そこに住む者達の私への信仰心が高ければ高い程、神様レベルはアップしていくらしく、それを高めやすくする為にちょっと特別な……神聖な土地を作っておいた方が良いらしい。


その理由が、「(フォビナが)買い物を色々したから、神力の上昇率を上げて欲しい」というものだったのは少し引っ掛かるけれど、信仰の有無が私の神としての力に影響するなら、少しでも高められるようにはしておいた方が良いだろうと思って、中央に聖域的なものを配置し、そこに行き来出来るよう通路を四方に配置する形にする事にした。


神の住み家を地上に設定する場合、この聖域的なものはそのままそこになる事が多く、拝む対象も神自身になるらしいけれど、流石に四六時中いろんな人に囲まれ、見られ、拝まれるのは勘弁して欲しかったので、人々が滅多に来る事が出来ない天空に住み家を設置し、地上の聖域的なところには、聖樹とお告げと称して地上の人たちと連絡を取る為の湖を設置する事にした。


本当は霊山とか設置しようかとも考えたんだけど、どうせなら最終的に宗教国家みたいなものが生まれ、そこが栄える事で私への信仰も高まってくれないかなぁっという打算的な思いから、山ではなく平らな土地に木と湖を配置する事を選択した。


後、湖と私の住み家とは私の許可さえあれば直通で行き来できるようにしてあるから、周囲が栄えてくれれば私も下界に降りて観光を楽しめるかなぁとかいう思いもあったりなんかして。


……まぁ、この辺はあくまで希望的観測だ。


いずれ誕生させる事になるであろう人間とかその他の生き物達が、私の思惑通りに動いてくれるという確証はないから、あまり期待し過ぎないようにしようと思う。


「よし、それじゃあ、やりますか」


地図の上に浮かぶように表示されていた『実行しますか?』の表示。


ゴクリッと唾を飲んで、伸ばした人差し指で『YES』に触れる。


パッパラパッパッパ~♪


ゴォォォォォ!!


「な、何!?」


軽快な音楽の後、建物の外から物凄く強い風が通り抜けて行くような、そんな音が聞こえた。


音は外から聞こえてくるもので、この建物内には何の変化も起こっていないのに、思わず身を竦ませてしまう。


寝転がっていたフォビナも上体を起こし、耳を澄ませて周囲の様子を窺っているようだ。


音が止んだところで、目の前の画面に視線を落とすと『無事、実行されました。新規の設定実行に伴う被害は……』と表示され、山とか川等の言葉がその下に箇条書きされていた。


『被害』という言葉に、一瞬ドキッとしてしまったけれども、どうやからこの被害というのは数刻前の私が生み出した無駄な努力の産物達らしい。


まぁ、既に設定されていたものを全て元に戻して設定し直したのは自分だから、特にショックを受ける事もない。


……あの無駄な時間を返して欲しいという程度の重いならあるけれど。



「無事、設定が終わったようですね。お疲れ様です。後は……」


フォビナの視線が私がいる方向とは逆の方向、この無駄に広い部屋に設置された1番大きいドアの方に向けられる。


フォビナのその動作の意味がわからず、首を傾げて質問しようと口を開いた瞬間……。


ザワザワザワザワ。


遠くの方から凄い勢いで近付いてくる何かの声。


その声が丁度私の部屋の前に着た瞬間。


バンッ!!


「わぁぁぁ!!」

「こっちだこっちだぁぁ」

「ご主人さま……いた……」

「建物おっきぃ!悪戯し放題♪」

「ふふふ~これから楽しみね!」


大きな音を立てて扉が開いたかと思うと、その向こうから大量の掌サイズの……妖精?が姿を現した。


「は!?え!?何、この子達!?」


最早、掌サイズの妖精が存在しているという事には驚かない。


自分が転職して神になるなんて滅茶苦茶な事が起こっているこの状況下では、妖精の1匹や2匹現れたっておかしくないと思えるから。


でも、それはあくまで少数ならって事で、こんなに大量の妖精(仮)が突然押し寄せて来たとなると、やっぱり驚く。


「ご主人さま……好き」


真っ黒い髪に柔らかい色合いの金の瞳の男の子の妖精(仮)がフワフワと飛んで来て、ポフッと私の胸に抱きつく。


サイズが小さいから、何だが小動物に懐かれたような気分なんだけど……私の長年鍛え上げて来たヤバい男センサーが微妙に反応している気がする。


「ちょっと!月の!!まずは挨拶からでしょう!!」


私の胸に黒髪の男の子の妖精(仮)がくっ付いたのを見て、慌てて金色の髪に空色の目の女の子の妖精(仮)が飛んで来て、引き離そうと男の子の腕を引っ張り始める。


この子は何だかしっかり者っぽい雰囲気がするな。


引き離そうする女の子と意地でも離れない男の子。


2人のやり取りを見つつ茫然としていると、不意に髪の毛をツンッと軽く引っ張られるような感覚とほんの僅かな重みを肩に感じた。


「え?何?」


「ここ、落ち着くなぁ。今日から俺の住み家はここにしようかな?」


気付くとそこには、背中までの長い黒髪に黒い瞳の男の子の妖精(仮)がちょこんと座っていた。


まるで私の髪をカーテンのように扱いながら寛いでいるけれど……こうされるまで、全く気配を感じなかった事が、ちょっと怖い。


「闇のも駄目でしょ!ご主人は皆のものなのよ!!」


「光の眩しい。近づくな」


ゆるやかなウェーブを描く金髪に、金色の瞳のちょっと綺麗めな女の子が私の目の前……正確には黒髪長髪の男の子の前に来て、少し発光しながらキッと目を吊り上げて説教を始める。


「闇のは相変わらずマイペースだなぁ」


黄緑の髪に金の瞳の男の子がケラケラと笑う。


「お前にだけは言われたくないと思うぞ、風の」


赤い髪の男の子が苦笑いを浮かべた。


「もう、男共は煩くて嫌だわ」


青い髪の女の子がフンッと顔を逸らして不機嫌そうな顔をする。


「皆、平和で良いね!」


「何処をどう見たらそんな風に思えるのかわからん」


緑の髪の女の子がおっとりとした笑顔を受けべて「うんうん」と頷いている隣で、茶色い髪の男の子が眉間に皺を寄せた。


ちょっと離れた所では、何処か顔立ちが似ているのに纏う雰囲気が異なる4人の女の子の妖精(仮)達が部屋の中をキョロキョロと見ながら話している。


「ここ何だか暑い気がするわ。涼しくしましょう」


「え?!ちょっと、寒いんだけど!もっと暑い方が良いって!!」


「ちょっと、冬と夏、勝手に室内の季節弄らないでよ!!あ、でも何だか適温かも……」


「秋もそう思う?私もこの位がいいわ~」


彼女達の会話に合わせて、室内の温度が急激に下がったり上がったりしているのは気のせいだろうか?


ちなみに、最後は適温で収まってくれた。


また別のところでは、オレンジの髪の男の子が暗めの青い髪の女の子とグレーの髪の男の子と、顔を寄せ合って仲良さそうに話している。


「わぁ~、季節がくるくるが変わってる!俺達も天気を変えてみようか!!」


「雨……降らせても良い?」


「室内で雨はさすがにご主人様が困るんじゃない?曇りならいいだろうけど」


「晴れも大丈夫~」


「雨……」


最終的に、暗めの青髪の女の子が瞳に涙を浮かべ俯いてしまい、残りの2人が慌てて慰めていた。


他にも、あちらこちらでいろんな容姿の妖精(仮)が楽しそうに話したり、喧嘩したり……悪戯したりしている。


はっきり言おう。


カオス状態だ。


正直、困惑し過ぎて泣きそうだ。


もうどうして良いかわからない。


「フォ、フォビナァ……」


この意味不明な状況下で唯一私が頼れるのは、もうフォビナしかいない。


ちょっと頼りにならなかったり、自分本位だったり、意地が悪かったりするけれど、フォビナしかいないのだ。


「はぁぁぁ……。仕方ありませんね。私も煩いのは嫌いなんで、さっさと紹介を済ませて解散してもらう事にしましょう」


深い深い溜息を吐いた後、フォビナは周囲を見回して心底うんざりした表情を浮かべるとゆっくりとした動作で立ち上がり、パンパンッ!!と手を打ち鳴らした。


「静粛に。創造神様の前ですよ~。皆ちゃきちゃきと並んで下さい」


フォビナの声に反応して、煩かった妖精(仮)達が一斉に静まり、私の前に整列……という程並べてはいないが、皆が1ヶ所に固まってくれた。


……まぁ、私にくっ付いている2人だけ私から離れようとしなかったけど。


「主様、紹介します。彼等が先程主様が設定された自動管理システム『Yo!sey!!』の担当妖精達です」


「自動管理システム『Yo!sey!!』……」


言われてみれば確かに設定した気がする。


基本的な構造が日本にある程度近くて、尚且つ折角だから魔法とか有りの世界にしたいなぁと思って、いくつかある創造神基本セットのうち創造神基本セットHを選択した。


その創造神基本セットに組み込まれていた自動管理システム『Yo!sey!!』。


ローマ字で綴られていたから、「そういう名前なんだ~」程度で音に出して読む事もなく見流していたそれは、『ヨゥ!セイ!!』――『妖精』というシステムだったらしい。


何故、そんな無駄にノリの良い感じにしたんだ先神様。


ネタ優先にしたせいで、言葉の意味すら変わっているじゃないですか!それで本当に良いんですか、先神様!!


とにかく、その自動管理システムとやらは、そこのページに載っていた説明文によると、天気とか四季とかそういう自然現象的なもの――本来なら創造神が自ら管理して調整していかないといけない諸々を、自動的に管理してくれるというとても便利な機能のようだ。


「時間はどれ位のペースで進む?」とか「季節の有無」とか「夜と昼がいつ変わるのか」とか、色々な設定を行っていく中で、正直「これ全部管理出来るのか?無理だろう?」と思っていた私は、このシステム

の存在を知った瞬間、迷わず設定に組み込んでいた。


いや、だって、その日毎に「ここの国の今日の天気は~」とか「ここは寒い国だから早めに冬にした方が……」とか全部をチェックして決めていくなんて私には無理だ。


そんな事をしていたら、時間がいくらあっても足りない上に、絶対何処かでミスをする自信がある。


それなら、日本で生活してた時みたいに、基本的な自然現象は自動的に管理してもらえるようにした方が良いと思った。


その方が、誰の意図も入らず『自然に』色々なものが決まり、公平に出来るだろうから。


でも、まさか管理してくれるのが妖精達だったとは……。


「何かファンタジーって感じだね」


ひと塊りになって、私をキラキラした目で見ている妖精さん達に思わず苦笑が浮かぶ。


「創造神基本セットHには、魔法が使えたりとファンタジー要素が含まれているので、その世界観に合わせた結果じゃないでしょうか?魔法があるので属性の設定等を行うの時にも妖精がいると便利ですから」


肩を竦めるフォビナに、「確かに魔法が使える世界に妖精ってしっくりくるな」と頷く。


「……まぁ、妖精は気まぐれな者も多く管理者として不人気なんで、創造神基本セット作成時の経費削減に丁度良かったという可能性もありますけど」


「え?それってどういう?」


「妖精に管理を任せても、その妖精自体の管理が意外と大変なんですよね。……主様頑張って下さい」


妖精は気まぐれ。そして、管理が大変。


チラッと私にくっ付いたままになっている2匹の妖精と、正面でキラキラした目で私を見つめてくる妖精達を交互に見る。


今はフォビナの御蔭で大人しくしてくれているけど、本質はきっとさっきまでの賑やかな感じなんだろう。


……。


「自動管理システムのチェンジとか……」


私の発言に、正面の妖精さん達のクリクリとした大きな瞳が潤み、私にくっ付いていた妖精さん達のしがみ付く力が増す。


「しない!しないよ!!ちゃんとやれるもんね!!頑張ってくれるもんね!?」


掌サイズで羽根が生えている子とかもいるけど、見た目は子供。


大勢の子どもに「見捨てるの?」とでも言いたげな視線を向けられた私に、それ以外言える言葉があっただろうか?いや、ない。


「ご主人様よろしくお願いします!!」


「「「「「します!!」」」」」


私の言葉で泣きそうな顔から一変、満面の笑みを浮かべた妖精さん達がいっせいに私に頭を下げる。


「こちらこそよろしくね。くれぐれもお仕事は真面目に一生懸命頑張ってね」


引き攣りそうになる顔に頑張って笑みを貼り付け、少し釘を刺しつつ挨拶を返した。



社員が大幅に増えました。……しかし、前途多難な予感です。

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