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9話

時は過ぎ、放課後になった。

部活動に励む生徒達の声が微かに聞こえ、教室には夕陽が差し込む。

朝のHRが終わってからは変な事が起きることもなく小豆に絡まれることもなかった。

強いて言うなら前の席の佐和田透から視線を感じたくらいだ。怖くて目を合わせることができなかった京は、音楽を聴いて自分の世界に入った。

小豆はというと、今まで教室にで見てきた普段通りのリア充小豆に戻っていた。

いつも行動を共にするグループで集まり、楽しそうに話していた。

小豆のリア充グループには他に、金髪ツインテールに着崩した制服の上からピンク色のカーディガンを羽織る楠木花凛。二人よりも身長は高く、暗い青髪をした神無月春。

男子は、ワックスで固められた短髪の佐和田透に、高身長で顔の整ったイケメン鷺ノ宮新。

5人共に顔の偏差値が高く、他クラスからも人気が集まる存在だ。羨ましい。


その一角を担う小豆に目をつけられた京は、小豆に言われた通り教室で待っていた。


「なかなか来ないな、七瀬さん」


教室で待ち続けて結構時間が経つが小豆が姿を現さない。

すると、後ろの扉がガラガラと開いて小豆が入ってきた。扉を閉じる前に顔だけを廊下に出し、誰もいない事を確認した。


「遅くなってごめん、透達がうるさくて」


京と会う時はお馴染みのスタイルなのか、マントを羽織り三角帽子を被っている。

いつの間に着たのだろうか。


「それで、今日私に黙っておこうとした事を教えてもらおうかな」


「え、いや、あれは」


「言っとくけど、隠し事したって天才故に扱う事ができる察知魔法が私にはあるのよ?すぐバレるのがオチ、わかった?」


「わかった、わかったから。…朝の事なんだけど」


察知魔法とは一体なんなのか気になる京だが、小豆の手を握った時に聞こえてきた声のことについ説明した。


「全部話したけど、それで、使い魔ってなんのこと?」


「ふむふむ、それよりも次はテレパシーみたいなものか…。くっ、羨ましい」


質問を流されてしまった京。後半は声が小さく聞き取る事ができなかった。


「とりあえず手握って?私が何を考えたか当ててみて」


何のためらいもなく小豆は言った。

リア充はこういう事に慣れているのだろうか。すこし戸惑いながら京は手を握る。

すると、京の頭に直接何かが聞こえてきた。


(木崎くんの手って意外と大きいのね)


「聞こえた」


「ほんと?何が聞こえた?」


「木崎くんの手って意外と大きいのねって」


「ばばばばばかじゃないの!?そんな事思ってないから!忘れて!早く!」


顔を赤くして全力で否定する。

照れを隠す為か小豆は自分の考えを説明し始めた。


「た、多分だけど、木崎くんに聞こえてくる何かって言うのは本音なんだとおもう」


「本音?」


「うん。今木崎くんは私が頭で考えた事を当てることができなかったけど、私が確かに感じた思い所謂本音を聞き取ったってことになる」


「なるほど。っていう事はさっきのは七瀬さんの本音ってこと?」


「ううぅ…」


よっぽど恥ずかしかったのか小豆は俯く。

京はそれを見て何故か自分も少し恥ずかしくなった。


「ご、ごめん。別に嫌じゃないから!」


「もう、記憶ごと消してやる!」


瞬時にポケットから長い棒を取り出した小豆は、それを左手で持ち構える。


「くらえ!記憶喪…」


「おい、まだ誰かいるのか?」


「!?」


突然扉が開き、先生が入ってきた。

いきなり起こった事に身体がビクッと反応する京。


「なんだ木崎だけか」


「え?」


そういわれ周りを見渡すがさっきまで変な構えで立っていた小豆の姿がない事に気づく。


「も、もうすぐ帰ります!」


「ったく、早く帰れよー」


特になんの用事もなかったのか、教室からすぐに出て行った。


「七瀬さん?もう居なくなったよ」


声を掛けると教卓の下から小豆が出てきた。

あの一瞬の出来事で即座に身を隠した反射速度は凄いとしか言いようがない。


「は、ははっ、別の魔法を唱えていたにも関わらず、転移魔法を発動。こ、これこそ私が天才魔法使いと呼ばれし所以なのだ」


決めポーズなのか手を左眼に軽く当て、小豆は言った。しかしその顔は引き攣っており、笑い方がぎこちない。


ブレないなこの人。

京はそう思った。

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