7話
「ふむ、わかったわ。あなたは魔王ではない。しかし!木崎くん、あなたは突如自分の封印されていた力が目覚めてしまったけれどうまく制御できないってことね!」
「ってことね!と言われても…。俺としてはこんな意味わかんないの無くなって欲しいだけど…」
「どうして?天才魔法使いの私がお墨付きであなたの力はかなり強力よ?ま、この私には足元にも及ばないけどね」
身体を覆っているマントを意味なく広げ自慢気に言った。とてつもなくドヤ顔。
「私にはってさっき何も出なかったし、七瀬さんのはただの中二…」
「何言ってるの、そんなものこの世に存在しないのよ?だから私は本物、私を超える魔法使いなどこの世にいないわ」
何も言わせまいと小豆が割って入ってくる。
しかし、と前置きして小豆は続ける。
「木崎くんのことは誰にも言わない方がいいわね。あなたのような存在が世の中に知れ渡ったら何をされるかわからないわよ、制御もできないし」
「た、確かに。それに俺も今の生活がくずれるのはいやだ」
「でも、私が言いふらさないとは限らないよ?」
「え…?」
「だから契約しなさい。私が木崎くんのことを言いふらさない代わりに、今見た私の事は誰にも言わない事。それに木崎くんに何か変化があったときにはすぐに私に伝えること」
「別にいいけど、私の事って七瀬さんが中二…」
「喰らえ!聖なる七つの剣!!!」
「い、痛い痛い!普通の打撃だからそれ!」
「はぁはぁはぁ…。わかった?誰にも言わないでね?
「わ、わかった」
「じゃあ手だして」
「手?」
「本当はレベルの高い私との契約にはかなりの負担が相手にかかってしまうけれど、今回は仮契約としましょう。仮契約に必要なのは両者同士の肉体的接触のみ、だから握手よ」
「な、なるほど…」
握手するだけでどうやって契約が成り立つのかは気になっても触れずに京は右手を差し出した。
握られた手には、女の子特有の柔らかさが感じられ緊張してか身体が火照る。手汗が出てないか気になる。
そんな思春期思考の京の頭にいきなり何かが流れ込んできた。
(これでようやく天才魔法使いの私に使い魔ができたわ!)
「え?」
「ん?…よしこれで仮契約完了。契約違反したらどうなるかわかるわね?契約内容通り何かあったら直ぐ私に知らせるのよ、木崎くん」
そう言って手を離した小豆は屋上を後にした。
小豆の背中を追う目線が行き場を失う。
仮契約として手を握った時に聞こえてきた何か、あれは何だったのか。
しかし、京は既に大体予想できていた。
「聞こえてきたのは七瀬さんの声だった。でも七瀬さんは握っている時一回も口が動いていなかった。ということは、直接俺の頭に流れてきた?」
謎の現象。
日常ではあり得ないことがまたしても京に降りかかってきたのではないかと、京の頭をよぎる。
「はぁ…。本当に勘弁してくれ」
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