5話
京のクラスーー1年E組は、東棟の三階に位置する。正門からはなかなか距離があり、階段も上がらないといけない為、運動部でもなんでもない京はそれだけで少し疲れてしまう。
軽く呼吸を乱す京は、自分のクラスに辿り着き席に座った瞬間、
「木崎くん、ちょっといいかな?」
恐れていたことが起こった。
話しかけてきたのは予想していた通り、七瀬小豆だ。
クラスの反応を見る限り小豆がクラス中に言いふらした可能性は低いが、京に話しかけてきたということは昨日の件で何か言いたい事があるのだろう。
「おい、小豆。なんでそんな奴に話しかけんだよ」
京が小豆に返事する前に小豆の後ろにいた彼が言ってきた。彼は佐和田透。よく小豆と一緒にいるリア充グループの一人だ。普段話さない男子に声をかけたのが気に食わないのかやたらと口調が悪い。
「なによ透、別にいいじゃない。クラスメイトなんだし。それより木崎くんちょっと来て」
「え!ちょっと」
強引に小豆は京の腕をとる。座っていたのに無理矢理立たされた京はバランスを崩すが御構い無しにそのまま連行された。
後ろの方からチッと舌打ちが聞こえた。恐ろしい。
小豆は腕を離すことなく廊下を歩き階段を登った。着いた先は屋上。
屋上は誰もおらず、二人だけしかいない。
朝の風が二人の間を吹き抜ける。
「な、七瀬さん?」
昨日の事で呼ばれたのだろうと大体予想はついている。
「………」
京の呼びかけになにも答えない小豆。
おかしい…。
長い沈黙が続く。
ごそごそと何をしているのか分からないがやっと動きを見せた小豆。
その手に持たれた何かが小豆の身体を覆った。マントだ。黒い膝下まである長いマント。それにいつの間にか頭の上には先端が途中で折れていてつかの広い帽子が被られていた。
まるで魔女のような服装だ。
「な、な、七瀬さん?」
小豆のマントが風で靡く。
「……けた」
「ん?」
「やっと見つけた!」
「え??」