4話
「全然寝れなかった」
次の日の朝、京は一睡もできなかった。あの氷の件もだが、それを同じクラスの七瀬さんに見つかってしまったのがかなりのダメージで、正直学校なんて行きたくないのだ。
あのリア充&美少女でクラスでもなかなか人気のある女の子にバレてしまったのだから、もう次の日にはクラスのみんなにバレているのがぼっち常識だ。
もうすぐ家を出ないと遅刻する時間だがそんなの知らない。
今日は布団に包まって安らかに寝よう。布団あったかい。
「お兄ちゃん!!!」
バタンッ!と勢いよく開いた扉から可愛らしい声が聞こえた。
「何してんの!遅刻するよ!」
ノックもなしで勝手に入って来たにも関わらずズカズカ部屋の中に進む。
「ほらっ!」
「ちょっ、やめろって!」
布団を奪おうとしてくる妹に全力で抵抗する京。
しかし、軽々しく奪われてしまった。力強すぎ。
「おい、憂!返せ!今日はもう学校行かないんだよ!」
「え?学校行かないの?サボり?お母さんに言いつけよー」
「はっ、勝手にしろ。母親に告げ口しようが俺はダンプカーで押されたって一歩たりとも動きやしないぜ。」
と、朝は意気込んでいた京だがいまは登校していた。
あの後母親に告げ口した妹からは、「サボってもいいけど一週間飯抜き」と伝言を預かったらしく、流石に飯抜きは嫌なのでサボるのはやめた。
足が重い。
昨日、自分の身体から発したものの正体はどれだけ考えたって分からなかった。
それもそのはずだ。普通に生活していようがなかろうが、一般的に考えて起こり得ないことが起こったのだ。今までにそういう事はなかったし、自分以外にも聞いた事がない。
幸いなことに家にいる時にはおかしなことは起きなかったが、今日学校に行って同じような事が起こってしまったらどうしようもできない。
それに、
「やっぱり、七瀬さんに見られたのがな」
自分の身に起こったことの解決も早急に考えなければいけないが、京にとっては問題はそれだけではない。
昨日の姿を同じクラスでリア充な七瀬小豆に見られてしまったのだ。
「リア充」という部分が特に重要で、リア充という事は友達が多いという事。
その友達に言いふらされ、自分の平穏な生活がなくなってしまうのが嫌なのだ。
京の頭はネガティブモードで最悪な状況ばかり思いついてしまう。
そんな時こそ何故か時間が経つのが早く感じてしまい、あっという間に学校に到着してしまった。