2話
その日、教室で一人残って掃除をしていた京は愚痴っていた。
「誰か知らないけどサボりやがったなくそ」
入学早々、担任の先生が決めた放課後の掃除ルール。クラスメイトでローテーションし、2名ずつ掃除を行うのだがもう一人が見当たらない。
「こうなったらそいつの机の下だけに集めたゴミを置いといてやろう、プレゼントだ」
アホなことを考える京。
そんなことを言ってるうちに外は夕日で紅く染まっていた。
「何やってんだろ俺、さっさと帰ろっと」
小学生みたいなイタズラをしてる自分がなんだが恥ずかしくなり、鞄を持ってドアを開けようとした。
その瞬間、手をかけた取っ手から扉全体が透明なものに覆われた。
「何だよこれ、って冷た!…氷か?どうなってるんだこれ」
両サイドから開くタイプの引き戸に、氷の壁が一瞬で張り付いたような感じだ。
もう一度、ドアを開けようとするが全く動く気配がない。
「出れないじゃん俺…。意味わかんないんだけど、誰がやったんだよ」
教室一帯を見渡したものの、自分以外にここにいるのは居ない事なんてわかっている。
今のこの現象が理解できず、どこか恐怖と焦りを感じ、京はその凍っているドアから一歩下がった。
パキッ
その甲高い音は京の足元から聞こえてきた。
「ん?パキッて聞こえたけど…って、え!!」
反射的に自分の足元に目線を向けると、教室の床も凍り始めていることに気づいた。
しかもそれが自分の足元から広がっていくのを。
「え、なんだよこれ!?」
日常ではありえない現象がまさか自分が発生させているなんて思いもしなかった。
無意識的に床が徐々に凍っていく。
頭では止めないと、と思っているがこんな異常事態に陥った京は凍っていくのを止めることができず、ただ眺めているだけだ。
まさに、パニック状態。
自分の足元から床が白く染まっていく。
「なんだよこれ、どうなってんだよ…」
目の前の意味不明な現象が京を動揺させ、足が動かない。
しかし、立っているだけでは現状は何も変わらない。むしろどんどん状況は悪くなる一方だ。