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間話「2人の世界」

睦月 煉花です、というわけでオマケの解説回です。

精剣祭について少しばかりアリアが解説?します。

「それでさ、『男でも構わない付き合ってくれー』って言われた時はもう爆笑したよ」

「あはは!なにそれ、女の格好する貴方も可笑しいけどその男の方もなかなか変人ね!」

「女装を笑うなよ、生きていく方法を考えた結果行き着いたのが女装で、しかもちゃんとやっていけたんだし!」

「ごめんごめん!いやでも、うん、神様?もいいものを作ったね、どっからどう見ても女の子だもん」

「わかってない、男の娘と言うものをわかってない!」

どれくらい時間が経っただろうか、ベットに横になってから2人はずっと話し続けている。

始めに皐月から話す、自分の世界の事、自分のしてきた事、神様に転生させられてその時にいろんな物をもらった事を話した。



「はぁー楽しい、貴方の世界はこことは違って本当に平和で羨ましいなぁ」

「そうかな?魔法もないし剣なんて持ってたら職質されてそのまま御用になるだろうし、すごく退屈な世界だと思うよ。それより次はアリアがこの世界の事を話してよ」

「よーしわかった、さて何から話そう…何か聞きたいことある?」

皐月の頭には色々と知りたい事が思い浮かんでくる、それらを一つ一つ消化していく事にする。



「じゃあまず、『精剣祭』について、魔王を倒すって事しか聞いてないから」

「なるほど精剣祭ね、じゃあなぜ精剣祭が始まったのか…それから話しましょうか」

アリアは静かに語り出した。

「その昔、この世界がとても平和で人と神が共に暮らしていた頃の話。その平和な世界になんの前触れもなくすごく強い魔神が現れた、その魔神は存在は災いその物だった」

「災い?何があったの?」

「奴が現れてから世界は大きく変わったの、動物は凶暴になり、人の間では疫病が流行り死者が増え、植物が育たなくなり食べ物が減る、生きていく事が困難な世界に生まれ変わったの」

(まるで昔のRPGみたいな世界だ…)

「その状況をなんとかするべく、魔神を倒すために人と神が結託し戦いを挑んだ…しかし魔神の力は圧倒的で瞬く間にそれらを捻り潰し、その強さを世界に示した。もうなす術もなし、そう思われた時に神々は最後の手段としてある儀式を完成させたの」

「その儀式が精剣祭?」



「そう、神々は持てる力の全てを使い精剣祭という特殊な術式を組み上げた、それは魔神の力の影響を受けた動物…魔物を魔神の力の根源と強制的に繋げ、それを魔物ごと断ち切る事で間接的に魔神を弱体化させるというものだった。そしてその力を断つことが出来るのが精剣というわけ」


「なんで精剣祭ができたのかは分かったけど、じゃあどうして今も精剣祭が行われてるの?まさかまだ魔神が生きていて世界を支配しているとか?」

「ちがうちがう、精剣祭は大成功、魔神を大幅に弱体化させ封印する事ができたの。でも魔神は封印されても(なお)その力を蓄えて封印を破ろうとしている、だから五年毎に精剣祭を行い封印を施し続けることにしたの」



「封印って倒すことはできなかったのか?」

「弱体化したとはいえ魔神は魔神、あのまま戦えば逃げられてもう二度とあんなチャンスは来ない、そう思ったから倒すのを諦め封印する事にしたの」


「そんな事だろうと思った、そういえばこっちの神様が精剣祭で魔王を倒したら願いを叶えてもらえるって言ってたけど本当?」

「何それ、今の精剣祭ってそんな事になってるの?」

「え?」

「え?」

なぜかアリアも聞き返す。

「えーとアリア、何年ぐらいあそこに封印されてたの?」

「封印されてたとは人聞きの悪い、魔神と相討ちになって、気がついたら精剣になってるし、動けないから目を瞑って何も考えないようにして、時間の流れを忘れてたら貴方が空から落ちてきたのよ!」



「ちょっと待って、さっきから少しずつ気になってたんだけどさ…アリアって人間だったの?」

「そう!わたし人間だったの!初の精剣祭で見事に魔神を封印した『アリア・ジースト』その人です!今の私はある意味では貴方と同じで生まれ変わったようなものね!」

興奮しているのか怒っているのかアリアの声が大きくなる。

「落ち着いてアリア、よく知らず物扱いしたりしてごめん…」


「落ち着いてる!それに物扱いされてもしょうがない姿だから、そのことで別に怒ったりしない!何が悲しいってようやく外の世界に出れた、なのにそこは私の知る世界と大きくかけ離れている事、この国は防衛拠点のはずで魔物との争いは絶えず、辺りは負傷者や身寄りの無い子供たちで溢れていた。あの時からいったい何年、何十年経っているのかわからない!正直な話ずっと隠してたけど不安で仕方ない…!私はどうして今ここにいるの…?」



「アリア…」

今にも泣き出しそうな震えた声が皐月の心に突き刺さる。ここまで明るくて頼れると思っていたアリアが、まさかこんなに悩んでいたなんて思いもしなかった。

「ごめん、自分の事を話してたら…なんだか心の中が無茶苦茶になって、情緒不安定よね私…」


「アリア、不安な気持ちなら俺も嫌ってほどわかる。俺だって家族に見捨てられて…生まれ変わったけど異世界だから俺を知る奴なんか誰一人いない。でもこの世界でアリアと出会えて頼れる…パートナーが出来て少しは安心できた、だからアリアも孤独なんだとか思わないでさ、俺を頼れるパートナーにしてくれよ」


「サツキ…」

「もしかしたらさ、アリアの事を知ってる人がまだ生きてるかもしれないじゃん、その人を探しながらでも旅をしよ?」

「…ぐすっ…そうね、サツキの言う通りよ、こんな事でくよくよしてどーすんのよ私!こうなったらもう一回、魔神を倒す勢いで精剣祭を終わらせてやる!」

皐月の言葉で一気にやる気に満ちたアリアに胸を撫で下ろす。

「その勢いだ。…じゃあそろそろ寝ようか、明日は試練もあるしこの世界のことも色々知りたいし」

「うっ、あんまり教えられなくて…ごめん…」

余計な一言でまた落ち込んでしまうアリア、皐月はそれを慰めながら眠りにつくのだった。


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