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第2話 晴天の霹靂

 サラが精剣祭の旅に出て三日、朝稽古を終えたカナエは道場の縁側でガドーとお茶を飲んでいた。

 ガドーの故郷で作られているお茶は綺麗な緑色で味わい深く、一緒に出された甘味がよく合う。


「はぁ、これは落ち着きますね」

「そうだろ。サラがいたらこんなに静かじゃなかったろうな」

「ですね。サラは今頃どこにいるんでしょうか?」

「そうだな…そろそろヴァルカに着いた頃かもな」


 中央火山都市ヴァルカとは巨大な火山の麓に作られた街であり、鉄鋼業が盛んで世界の鉄製品の八割はそこで作られているのだ。


「所でカナエ、少し手伝って欲しい事があるのだが頼めるか?」

「何です?」


 苺と餡子をもちもちの皮で包んだ『苺大福』なる物を頬張りながら話を伺う。


「最近農作物が荒らされるという事件が相次ぎな、もしかしたら森に住む獣が犯人かもしれないんだ。何故作物を荒らすのか原因の調査に行くんだが着いてきてくれるか?」

「獣が?変ですね」

「普段は人を恐れて村には近づかない筈なんだが…どうだ?」

「こんなに美味しいお茶とお菓子をいただいた手前、断れないですよ」


 お茶菓子を堪能したカナエは手を合わせてご馳走様し、「ふっ」と笑ったガドーがお茶を啜る。

 昼過ぎに村の外で落ち合う約束をしてカナエは道場を後にし、村を分断するように流れる川を渡って自分の家へと帰る。


 村の端っこにある家に着くと外で遊んでいた弟妹が出迎えてくれ、中に入ると父と母が分担して昼ごはんを作ってる最中だった。


「おかえり、今日は稽古長かったのね」

「ううん、ガドーさんにお茶とお菓子をご馳走になりながら話してて、それでお昼を食べたら一緒に森へ向かう予定なんだ」

「そうか、ならしっかり腹ごしらえしないとな!もう少ししたらご飯ができるから、それまでに色々と準備してきなさい」


 僕は自室に戻り、厳重に保管してある剣を取り出して車椅子の肘掛けの横に取り付ける。

 それから皆で昼食を取り、僕は予定より少し早めに出て待ち合わせ場所へ向かった。

 村の出入り口にある林檎の木の下で待っていると、程なくしてガドーが腰に二本の剣を携え「待たせたな」と言いながらやって来た。


 僕たちは村を出て川に沿って進むと、目的地である小さな森に辿り着く。


「ん?」

「どうした?」

「なんか…妙に肌がピリピリするというか」

 

 森は木漏れ日のおかげでそこまで暗くなく、奥に進むと小さな湖がある。昔から夏にはこの湖周辺で特訓をしたり遊んだりしてたので、この森は庭みたいなものだった。


「この辺りでいいだろう。さて、カナエの出番だ」


 ガドーに言われて僕は深く息を吸い集中する。段々と感覚が研ぎ澄まされていき、肌に鋭い視線を感じてガドーにその事を告げる。


「何だこれ…草食獣のものなんかじゃない」

「それは何処からだ?」

「あっちから……待って!?すごい速さでこっちに来てる!」


 鳥たちが押し寄せる波のように飛び立ち、何かが木々を薙ぎ倒しながらやって来る。

 次の瞬間、勢いよく飛び出して湖を軽々と越えてきたのは、目を真っ赤に光らせた30メートル程もある大蛇だった。


 あっという間に距離を詰められ、その大きな口で僕を丸呑みにしようとする大蛇。睨みつけられた僕は身動きをとる事ができず、只々喰われるのを待つだけの獲物だった。


「『十字衝』!!」


 咄嗟に僕の前に現れて大蛇の突撃を防いだガドー。


「何ボサッとしてる!





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