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華星に捧ぐ  作者: 潜水艦7号
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宗教

「『God bless you』?ああ・・そいつぁアレだ。『サダ教』の信徒だな・・・」

その日の夜、シバはベッドにゴロリと横たわりながらクラウドと量子通信をしていた。


「そう・・・『サダ』という名前の宗教だ。お前は聞いたこたぁ無いかも知れん。元々は『運命(サダメ)』から来ている名前だって聞いた事があるな。特に崇拝対象とかはなくって・・・宇宙の真理とか物理法則そのものを『神』として崇めるんだとさ。そのGod・・・どうとかって言うのは、その信徒が使う別れの挨拶だよ」


そう言えば、とクラウドは思い返していた。ダックスさんは自由についての話の中で『宗教も自由』と語っていたな・・・と。


「それで?その通信班の人間とやらが『それ』を使っていたのか?通信班にサダは珍しいな。とりあえず、オレは聞いた事がねぇ・・・って、うん?もしかして『そいつ』・・・アクアマリンか!」

シバが思い出したように言う。


「えっ!叔父・・・じゃなくてシバさんは知っているの?アクアマリンさんを」


「あー・・・まぁ・・・名前は、な。そいつぁ、アレだ。チョイと特殊な『通信班』担当なんだ」


「特殊?」

クラウドが聞き返す。


「ああ。イヤな話だが、宇宙航海の途中ってのは色々とあンだよ。これが火星や月だったら少々どころか、かなりの怪我や病気ですら医療体制が整ってっけど『船の中』となると、そうは行かねぇ・・・それとか、金星やエンケラドスの基地とかもな。

ぶっちゃけ、そういう処で事故とか・・そういう『何か』があったら、それこそ『運の尽き』なんだ」


アルバトロスが言っていた『荒くれ者の吹き溜まり』の意味というか『闇』がクラウドには垣間見えた気がした。


「そういう時にさ、入るんだよ。『助けを求める最後の通信』ってのが。と言っても、相手は光速ですら数分掛かるような遠距離だし、どうしてやる事も出来ねぇ。で・・・宗教の出番なのさ・・・」


クラウドと出会った時にアクアマリンが言っていた『心が晴れる』というのは、それだけ精神的ストレスが半端無い事を指していたのだろう。

余命幾ばくも無い人間の助けを求める悲痛な叫びを『見殺し』にしなくてはならない。言い方は悪いが『言葉で誤魔化す』のだ。しかも、それらをAIやブレインに任せることは出来ない。せめて心だけでも救おうとするのなら、こちらも人の心でなければ救われる事は無いのだから。


「・・・それはそうとして、だ」

シバが湿っぽい話題を変える。


「さっき、何て言ってた?『アルバトロス部隊長が36番ドックに居た』って?」


「え?ああ、そうだよ。何かあるの?」

不思議そうにクラウドが答える。


「オレの記憶に間違いが無けりゃぁ、36番ドックってなぁ・・・SB12が係留されてなかったか?」


確かに。36番ドックに居た『エスカルゴ型』の船体には『SB12』の文字が大書されていたと思う。


「うん。確か、SB12って書いてあったと思うけど」


「ステファン=ブォルツマン級の12番艦か・・・そいつぁなぁ、相当な骨董品だぜ?恐らく、船歴は150年近くあるはずだ」


「ひゃ、150年っ!」

ビックリしてクラウドが大声を出す。


「ええっ!そんな古いのって・・あの・・・動くの?って言うか、使っているの?そんな古いのを」


「動く・・・と言えば動くんだろうな。廃却してないところを見ると。第Ⅰ世代機ってヤツは今や単機では運用してねぇんだ。4機とか6機とかで・・・ほらアレだ、担架で怪我人を運ぶ時みてーに、デケー貨物を四方から抱えるようにして運ぶのに使うんだよ。だから『使う』となると数が居るんでな・・・それで『捨てられん』のだろう」


「ふー・・・ん?」


クラウドは話の意味がいまひとつ理解出来ていないらしい。シバも、それ以上は細かく説明しようともしなかった。


シバが知る限り、SB12は少なくとも30年は稼働させた話を聞いていない。

てっきりこのまま記念艦扱いで退役させるものと思っていたが・・・アルバトロスが直々に近くに居たところを見ると、近いうちに本格的に『使う』気なのだろう。

何を運ぶ気なんだろうか?余程、巨大な物なのだろうが、資源調達本部でもそれに該当するような巨大構造物を建造しているという話は聞えて来ていない。


何か、ヤな予感がする。


シバは通信を切ってからも、暫く寝れずにいた。


マリー・アントワネットには「一晩で白髪になった」という逸話があります。

ヴェルサイユ宮殿からの脱出に失敗し、古城へ幽閉された際にその恐怖とストレスによって「白髪化した」とされるのです。

無論、現実的には人間の髪の毛が一晩で全て生え変わるワケはないので、「恐怖とストレスで」という事はないでしょう。

仮に何かあったとすれば、ですが。

彼女はスデに素で白髪だったのかも知れません。それを何らかの染料で「染めていた」と。もしも当時の染料が現代の染料ほど長持ちするものではなく、すぐに取れてしまうものだったとすれば「一晩で白髪化」したとしても変ではありません。


マリー・アントワネットと言えば「パンが無ければお菓子を食べれば良い」と語ったとされますが、それば事実ではありません。

ルソーの本の一節に「とある王女が(ワインの当てに)パンが無ければブリオッシュを食べるとよいと語っていた」と書かれていたものを彼女の発言と誤解されたのだとか。しかしながら結果的に、これが「民衆を馬鹿にしている」として革命に拍車を掛けたという説もあり・・・

このように「一言の重み」というのは馬鹿にならないものです。

「華星に捧ぐ」も・・・・?

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